脳血管性認知症とは?

3大認知症の1つである脳血管性認知症。そのため、聞いたことのある方も多いかと思います。脳血管障害になった家族が、脳血管性認知症にもなってしまったら、家族はどうすればよいのでしょうか。また、家族としてできることは何があるのでしょうか。ここでは、脳血管性認知症について詳しくご紹介します。

目次

脳血管性認知症とは?

脳血管性認知症

脳血管性認知症とは脳梗塞や脳出血といった脳血管障害に起因して起こる認知症のことです。4大認知症(アルツハイマー型認知症、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症)の1つです。平成 25年の調査では 65 歳以上の要介護者等について、介護が必要になった主な原因についてみると,脳血管疾患が17.2%と最も多く、次いで認知症が16.4%となっています。つまり、脳血管性認知症は介護度が高い認知症になりうるということがこのデータから推測されます。 脳血管性認知症の原因としては、

  • 脳卒中を起こしたことがある
  • 高血圧がある
  • 糖尿病がある
  • 動脈硬化がある
  • 心房細動(不整脈の一種)がある
  • コレステロールなどの脂肪(脂質)濃度が高い
  • 喫煙(現在または過去)

などがあげられます。 これらの原因によって脳血管の梗塞や出血がおこり、脳血管性認知症につながっていきます。大きな脳梗塞や脳出血を起こすと、急激に認知症が悪化します。程度の小さな脳血管障害を繰り返す場合は、段階的に認知症が進む場合もあります。

脳血管性認知症の症状と進行

脳血管性認知症の症状は他に認知症と同じように、最近の記憶や出来事、行動を忘れてしまう記憶障害、現在の日付、時間、場所、人物などがわからなくなる見当識障害、物の名前が分からなくなるなどの失認、物や人の名前が出てこなくなる失語、服の着方や道具の使い方が分からなくなる失行、段取りや計画を立てることができなくなる実行機能障害がみられます。

脳血管障害の場合には記憶障害は軽度である傾向にあり、実行機能障害が顕著にみられる傾向にあります。進行すると歩行障害、手足の麻痺、呂律が回りにくいなどの症状も出てきます。

脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違いとは?

他にも、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症は症状が似ており、専門家でないと診断はむずかしくなります。アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の違いをいくつかまとめました。

まず、大きな違いは本人が認知症を自覚するかどうかです。脳血管性認知症の場合は初期から認知症であるという自覚があるのに対してアルツハイマー型認知症は自分が認知症であるという自覚がないことが多いです。

特長的な傾向として脳血管性認知症の場合はささいなことで泣いたり怒ったりなど精神的に不安定になることが多いのですが、アルツハイマー型認知症の場合は落ちつきがなかったり深刻味がないことが多いです。認知症の傾向として脳血管性認知症は部分的に能力が低下するまだら認知症であるのに対してアルツハイマー型認知症は全般的に能力が低下する全般性認知症です。また、脳血管性認知症は人柄はある程度保たれるもののアルツハイマー型認知症では人柄が変わってしまうことが多くなります。

また、脳血管性認知症は神経障害として手足が部分的に麻痺したりしびれたりすることが多いのですが、アルツハイマー型認知症は初期には少ない傾向にあります。 脳血管性認知症では立ちくらみや便秘、尿失禁がアルツハイマー型認知症よりも出現する可能性が高いのですが、この症状が予後に大きく影響していると考えられています。

脳血管性認知症の人への対応方法

脳血管性認知症の中にはアルツハイマー型認知症を併発している混合型認知症というものもあります。そのため、本当に脳血管性認知症だけなのか、あるいはほかの病気も併発しているのかなどの検査を行い、診断をしてもらいましょう。診断をしてもらうことでどの部位が障害されているのかが分かり、どういった症状が出てくる可能性があるのかが分かるため今後の対応の参考にもなります。

脳血管性認知症は急に進行することもありますし、段階的に進行することもあります。いつかは家族だけで介護をするということに限界がやってきます。その際には、介護保険を有効活用しましょう。介護保険の申請し、要支援あるいは要介護の結果が出たら、担当のケアマネジャーと相談して本人の心身状況に合わせた介護サービス計画を立案しましょう。

他の認知症よりも抑うつになりやすい傾向があります。また、機能遂行障害が出てくるため、今までできていたことができないという事実に本人や家族がストレスとなることも。利用者の精神面に着目し、思いに寄り添った対応ができれば余裕をもってお互いに生活していけることが考えられます。

まとめ

脳血管障害を契機として発症する脳血管性認知症。3大認知症の1つであるアルツハイマー型認知症と症状の程度や発症する症状が異なる事が特徴です。「もしかしたら認知症かも!?」と思ったら、まずかかりつけ医を受診します。そして、そちらで紹介状を書いてもらい、専門医によって明確な診断をしてもらい、それに合わせて治療をしましょう。

認知症の中で2番目に多い認知症である脳血管性認知症。障害される部位によって出てくる症状が違うので症状の出方は人それぞれ。個別性が非常に重要視される認知症です。少しでも子の認知症について知りたいという方が周囲にいらっしゃいましたら是非シェアをしていただき、拡散することで多くの方に脳血管性認知症という病気を理解していただければ嬉しいです。

陽田 裕也
陽田 裕也 (ひだ ゆうや)

2001年、介護福祉士養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得し特別養護老人ホームにて介護職員として勤務する。
その後、介護支援専門員や社会福祉士も取得し、介護以外でも高齢者支援に携わる。現在はソーシャルワーカーとして、特別養護老人ホームで勤務しており、高齢者虐待や身体拘束、成年後見制度などの権利擁護について力を入れて取り組んでいる。