実行機能障害とは

実行機能障害とは

認知症の症状には、脳の変化によって必ず起こる「中核症状」と、環境や性格によって起こる「周辺症状(BPSD)」の二種類があります。
認知症にいち早く気付き、早期診断と早期治療を行うためにも、周囲の人が認知症の中核症状を知っていることは大切です。
>>認知症の中核症状・周辺症状(BPSD) 

今回はそんな知っておきたい認知症の中核症状のひとつ、「実行機能障害」について解説します。

 

実行機能障害とは

実行機能障害の定義は、「目的をもった一連の行動を自立して有効に成し遂げるために必要な機能である」です。

つまり、目的を果たすために、
① 計画を立てる
② 計画を実行して目的を達成する
③ 効率よく行う
といったことが難しくなる障害です。遂行機能障害とも呼ばれることもあります。

実行機能障害の症状と進行

症状の例

・献立を決めて必要な買い物ができなくなり、同じ食材ばかりを買ってしまう
・なじみの料理が作れなくなり、焦げ付かせたり味付けが変わったりする
・ご飯を炊きながら、並行しておかずを作れない
・洗い物をしても洗剤を使わないので汚れが落ちない
・カレーの材料を買ってきたのにカレーを作らずに肉じゃがを作る
・リモコンや家電が使えずに「壊れた」と言う
……など

計画や順序だった行動は困難になりますが、1つ1つの作業はこなせることが多いです。

同じ認知症の中核症状である失行や記憶障害など、認知機能の低下が組み合わさって上記のような症状が出ていると考えられます。

進行

認知症の症状が進行するのとともに、実行機能障害も進行します。

料理で例えると、初めのうちはゆっくりと作れていたものの、進行するにつれて最後まで作れなくなったり、作れる料理が減って惣菜ばかりが並ぶようになったりします。

実行機能障害の予防方法

認知症の実行機能障害は、脳の変化によって必ず起こる中核症状です。

そのため認知症の発症予防・進行予防が実行機能障害の予防方法となります。生活習慣を整えたり、運動や脳トレを日常生活に取り入れて、認知症を予防しましょう。
>>「 認知症の予防と治療 」に関する解説・記事

また、「もしかしたら?」と思ったら、すぐに病院を受診して早期診断を目指すのも大切な進行予防です。
>>家庭で認知症かどうかをチェックするポイント

実行機能障害の対処方法

実行機能障害が出たからといって、料理や家事の全てができなくなるわけではありません。サポートしてくれる人がいれば、作業をやり遂げることが可能です。

そのためのポイントは次の3つです。

声をかけてきっかけを作る

大変かもしれませんが、「そろそろ火をつけた方がいいかな」と声をかけて、次の行動を促したり、きっかけをつくったりするだけで、その先の作業は自分で終わらせられることがあります。

ひとつずつ指示を出す

例えば汚れた衣服を渡しても、それを「きれいにする」という目的を作って実行してやり遂げることができません。「洗濯物を洗濯機に入れて」、「洗剤を入れて」、「スイッチを押して」、「干して」と、必要に応じてひとつずつ指示を出す必要があります。

最初のうちは洗濯機を使って干すところまでできているのに、洗剤を使っていないので汚れが落ちていないなど、できることとできないことがわかりにくく、介護者の方も混乱してしまうかもしれません。

使うものや場所を限定する

いつも同じものを使ってわかりやすくしたり、置き場所を固定してしまうなど、環境をシンプルに整えるといいでしょう。

また、実行機能障害があるとみられる母親を介護している方に対して、介護専門家からこんなアドバイスも投稿されています。

一般の人では簡単でも本人にとって一連の動作となると難しくなりますので注意が必要です。
味噌汁を作るなどの一連の流れを持った動作は、今のお母様には複雑で人が傍にいてサポートをしないと危険を伴うと思います。
手伝いが、生き甲斐やリハビリの為に必要だとしても、もっとシンプルな洗濯物たたみ等にすることや、訪問介護などの介護サービスを利用した方が、ちえさま自身の物理的・精神的負担も減ると思います。
拒否が無ければデイサービスやショートステイを利用されると、介護から一旦離れることができますので介護疲れの軽減をして欲しいと思います。
(専門家papiさんの回答)
引用元:介護のQ&A