年を取ってくると、 食事は大切な栄養補給を果たすだけではなく、 1日の大切な楽しみになります。
でも認知症が原因で、 食べ物を食べものと理解できなくなったり、 うまく食器が使えなくなったりして、 食事を楽しめなくなってしまうことがあります。
「ご飯の残ったお皿と、 お腹が空いたままのおばあちゃんを見るのはもうイヤ!」
そう考えた一人の女性が考えたのが、 “認知症の人でも食べやすい食器”です。
この食器にはどんな工夫が施されているのでしょうか?
工夫1:明るいブルー
このボウルには明るいブルーが使われています。
これは「“色”によって認知症患者の視覚障害が軽減し、 食事の摂取量は24%、水分摂取量は84%も増えた」という、 米ボストン大学が行った研究結果に基づいたものです。
色の中でもブルーを選んだ理由は、 食べ物にはない色なので、 食べ物とボウルとの区別がつきやすいからだそうです。
工夫2:傾斜した底
底は傾斜しており、食べ物を集めやすくなっています。
工夫3:ボウルにフィットするスプーン
スプーンはボウルのカーブにフィットする形で、 最後まで食べ物がすくいやすくなっています。
工夫4:簡単に“握れる”設計
スプーンの持ち手部分は丸くカーブしており、 関節炎などが原因で、スプーンを握りにくい人にも使いやすい設計です。
コップの取っ手も、“握る”という動作が難しくなった人に 使いやすいように考えられています。
工夫5:滑りにくくて抑えやすい食器
全ての食器の底に施されているのが、滑り止め加工。
さらにコップには、 ゴム製のコースターが付いて倒れにくくなっています。
また、ボウルにはでっぱりがついていて、 中の食べ物に触れることなく、 食器を抑えながら食事をすることができます。
きっかけはおばあちゃんの認知症
この食器をデザインしたYaoさんは、 おばあちゃんのアルツハイマー発症をきっかけに、 「何かをしてあげたい」と介護施設で ボランティア活動をするようになりました。
そして家族の大切な時間であるべき食事が、 アルツハイマー病患者にとっても、介護をする人にとっても、 最も大変な時間になっていると感じたそうです。
さらに食べ物をこぼしてしまう認知症の人は、 健康的な量の食事をとることができず、どんどん体が弱ってしまいます。
そこでアカデミー・オブ・アートに在籍していたYaoさんは、 アルツハイマー病患者が食べやすい食器、 「イートウェル(Eatwell)」の開発に乗り出したのです。
研究や試行錯誤を重ね、開発には年月がかかりました。
そのかいあり、2014年には認知症患者のための製品コンテストである、 「スタンフォード長寿デザイン・チャレンジ」で1位の座に輝いたのです。
残念ながらすでにおばあちゃんは亡くなってしまいましたが、 Yaoさんはこの快挙を「おばあちゃんへの最後のプレゼント」とコメントしています。
4点セットで60ドル
この食器セットは、コップ、スプーン、ボウル、トレイ の4点セットで、60ドル(約7400円)で販売されています。
参考(外部サイト)>>INDIEGOGO※掲載終了
ただし、アメリカ国外からの注文には 送料35ドル(約4315円)が必要です。
日本でも手軽に手に入るようになるといいですね。
(全ての画像出典元:INDIEGOGO)
食事に関する安心介護の基礎知識
安心介護では、食事に関して以下の記事を公開しています。