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前頭側頭型認知症(FTD)とは?

さまざまな種類のある認知症ですが、この前頭側頭型認知症(FTD)は聞きなれない方も多いのではないでしょうか。認知症の中でも最も人格が変わるといわれる前頭側頭型認知症。ピック病も含まれます。もしも家族が個の認知症にかかってしまったら周りはどう対処すればよいのか、ここでは前頭側頭型認知症について詳しくご紹介します。

目次

前頭側頭型認知症(FTD)とは?

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症(fronto-temporal dementia;FTD、以後は省略)とは、脳の前頭葉と側頭葉前方に病変が出る認知症で、アルツハイマーではないということが条件になります。

前頭側頭型認知症は別名ピック病ともいわれており、これは1892年から1906年にかけて、アーノルド・ピックという医師が最初にこの病気を報告したことに由来します。前頭側頭型認知症は認知症全体の最大10%を占めています。

発症における男女差はほとんどありません。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は神経病理学的に前頭葉変性型、ピック型、運動ニューロン疾患型の3群に分類することができます。前頭葉変性型は前頭葉と側頭葉前方部皮質浅層優位に軽度から中度の病変が見られます。

ピック型とは前頭葉変性型と障害の分布は類似しているものの病変が強くなります。運動ニューロン疾患型は日本人に多く、脊髄や大脳に障害が見られます。また、前頭側頭型認知症は日本のみならず世界的に一定数の患者さんがおり、スウェーデン、イギリスでは初老期に発症する一次変性性認知症の約20%を占めています。ロンドンでは認知症患者の12%が前頭側頭型認知症としています。

前頭側頭型認知症(FTD)の原因

前頭側頭型認知症の原因は現在のところ解明されていません。ですが、いくつかの説が提唱されています。その中の1つが、ピック球という異常構造物質が脳内にたまっていくというものです。このピックが脳内にたまっていくことで、たまった部分の神経細胞が壊れて脳が委縮していくことで前頭側頭型認知症を発症します。

現在ではこのタイプの前頭側頭型認知症のことをピック病と呼びます。そして、このタイプをピック病と呼ぶようになった理由としてはもう1つ、前頭側頭型認知症の原因と考えられるものが見つかったからです。それは、ある特定の蛋白がたまるタイプです。 こちらも上記同様にTDP-43というタンパクが脳にたまっていくことで脳細胞が破壊されて脳が委縮していき、発症します。

また、他にも、欧米では、遺伝によるものも考えられており、実際に欧米で前頭側頭型認知症に罹患されている方の30から50%は家族歴があります。ですが、日本の場合、ほとんどが孤発性とされており、アジア5か国を対象にして行った調査では家族歴は5.5%ほどでした。

前頭側頭型認知症(FTD)の症状と、進行

前頭側頭型認知症の症状は脳の後方が障害されないということもありADL(日常生活動作)は比較的保たれ続けるものの、前頭葉は「人格・社会性・言語」を、側頭葉は「記憶・聴覚・言語」をつかさどる部分のため、前頭側頭型認知症では、それらに異常が生じます。

具体的な症状を見ていきましょう。

短絡的で 反射的,無反省な行動

情動のコントロールや、論理的な判断、将来の予測、判断、行動計画に必要な情報を受け取り、複雑な行動計画を組み立て、その実行の判断を行う前頭連合野に異常が起こると短絡的で 反射的,無反省な行動を取ってしまいます。

日常生活場面でどのような症状が起こるかを例に挙げると

  • 介護者が首をかしげるのをみて同じように首をかしげる(反響または模倣行為
  • 相手の言葉をそのままおうむ返しに応える(反響言語)
  • 何かの文句につられて即座に歌を歌い出す
  • 他の人への質問に先んじて応じる
  • 視覚に入った看板の文字を全て読み上げる(強迫的音読)

といった行為がみられます。

反社会的行動

抑制障害による症状では、脱抑制がみられます。反社会的とも揶揄され、本能のおもむくままの行動をしてしまう症状のことです。

例えば、

  • 店頭にならんだ駄菓子を堂々と万引きする
  • 病院での診察中、質問に対して自分の気のままに答える、鼻歌を歌う、関心がなくなると診察室や検査室から勝手に出ていく
  • 他人になれなれしく接する
  • 公衆の面前で裸になったり放尿したりする

などが見られます。

社会的な関係や周囲への配慮がまったくみられず、葬儀などにおける不適切な笑いや口を開けてものを食べる、車のわき見運転、ありのままもしくはきわどい性的表現など社会的なマナー面でも著しく品位が低下します。過ちを指摘されても悪びれた様子がなくあっけらかんとしています。本人にも悪気はありません。

同じ行動を繰り返す

脳内で抑制が外れた結果として起こる症状で、何かに駆り立てられているように目的のない行動を繰り返す常同行動が見られます。

アルツハイマー型認知症との区別をするためにも重要な症状です。

例えば、

  • 集団行動をする場などであっても常に決まった行動をする
  • 一日中数kmの同じコースを歩き続けたり数10kmのコースを毎日周遊する
  • 決まった少数の食品や料理に固執する常同的食行動異常
  • 何を聞いても自分の名前や生年月日など同じ語句を答える
  • 絶えず膝を手で擦り続けたり、手をパチパチと叩いたりするような反復行動

などがあげられます。

日々食事を作る女性に症状が出た場合では調理が常同的になり、作る副食の種類が減少したり味噌汁の具が変わらなくなる等で病気に気づくことがあります。

さらに常同行動が進行していくと時刻表のような生活になります。しきりに時計を見て時間を気にする、行動が曜日で規定される、などで人によって分単位の行動なのか、秒単位の行動なのかは異なります。

強迫性障害と類似している症状ではありますが、強迫性行動と比べて自分の脅迫症状に対して自分自身で違和感が認められないという点が異なる点になります。

また、常同的周遊においては、周遊中にさい銭泥棒をしたり花や果物を盗ってきたりする軽犯罪がしばしば社会的な問題となっています。 初発症状は行動障害であることが多いのですが、その中でも意欲減退と脱抑制は早期から出現頻度が高くなっていてそれぞれ意欲減退が85%、脱抑制が76%と報告されています。 症状は徐々に進行していきますが非常にゆっくりで、年単位で進行していきます。

自分の家族は前頭側頭型認知症?チェックリストで確認しよう

自分の家族は本当に前頭側頭型認知症なのかどうかを、以下の診断基準でチェックしてみましょう。診断を受けた方でもチェックを付けることで、どのくらい症状が進んでいるのかを知ることができますし、疑わしい症状があるという方では病院を受診する指標となるでしょう。

ここでは診断基準によく用いられるTheLundandManheshtergroupsによるFTDの臨床診断基準よりチェックリストを作成しています。

前頭側頭型認知症(FTD)の臨床診断基準

1)行動障害

    潜行性に発症して緩徐に進行している

  • 早期からの自己に対する関心の消失(例:自己の衛生や身なりの無視)
  • 早期からの社会に対する関心の消失(例:社会性が消失したり万引きなどの軽犯罪をする)
  • 早期からの脱抑制症候(例:抑制の効かない性衝動、暴力行為、場にそぐわないふざけなど)
  • 精神面における柔軟性のなさ 口唇傾向(例:食嗜好の変化、口さみしくなるという理由から過食、喫煙や飲酒の過多など)
  • 常同行動と保続的行動(例:周遊行動、型にはまった行動、収集・化粧・身支度への儀式的没頭)
  • 使用行動(例:周囲にある道具への抑制のきかない探求)
  • 注意散漫、衝動性、維持困難
  • 早期からの病識の消失

2)感情障害

  • 抑うつ、不安、過度の感傷、希死念慮
  • 執着観念、妄想、心気症、奇妙な自己身体への執着(これらは早期にみられ、消えやすいです)
  • 感情面での無頓着さ(無関心、共感欠如など)、無表情(不活発、自発性低下)

3)言語障害

  • 進行性の発語量の減少、常同言語、反響言語と保続
  • 後期になると無言症となる
  • 除外診断的特徴(以下の項目は、前頭側頭型認知症の症状に当てはまらないため除外されます。)
  • 突然の発症、痙攣、早期からの高度の健忘、空間失認や失行など

前頭側頭型認知症(FTD)の人への対応方法

前頭側頭型認知症は、他の認知症と比較して初期から行動障害が目立つため介助者の精神的、肉体的な負担も非常に大きくなります。そのためその方の症状に合わせた個別な対応をとることが最も最善策と言えます。

特に初期には身近な家族などがマンツーマンの対応が望ましいと考えられています。 マンツーマンで関わることで相手の特徴を理解し、そのうえで対応をしていきます。

最も適切な関わる方としては前頭側頭型認知症の特徴を理解した行動療法的アプローチや行動変容技術です。これにより社会的に許容可能な行動や常同行動化への置き換えることがよいとされています。これにより本人も、家族も怒る、怒られるなどの負担が減るため本人の精神状態が穏やかに安定することに寄与し、結果的には家族の介護負担感も軽減されます。

例えば、

万引きをしてしまう場合

前頭側頭型認知症になると社会性の欠如してしまうため、万引きが悪いことと認識できなくなります。

介護サービスを使うなどして、1人で行動する時間をなるべく減らすことが重要です。可能であれば、近隣の店に症状を説明し、何かあれば連絡してもらう、本人が持ち帰ってしまったものを後から請求してもらえないか交渉する家族もいるようです。

暴力・暴言

前頭側頭型認知症になると抑制が効かなくなるため、暴力や暴言もよく見られます。暴力・暴言に対して介護者は感情的な対応せずに、「はじまった」と思ったら、そっとその場を離れて、落ち着くまで待ちましょう。

症状が悪化する前に精神科を早めに受診すれば、投薬などで落ち着く場合があります。 対応の方法が分からないという場合には、認知症ケアの専門家へ相談することが望ましいです。地域包括支援センターなどを利用してみてもよいでしょう。

プロの介護が必要だと感じた際には、要介護認定を行いましょう。介護度が高ければ多くの介護保険サービスを活用することが可能です。

>>暴力・暴言の原因と対応

まとめ

社会的行為などの逸脱が目立ち、介護者も疲弊しがちな前頭側頭型認知症。ですが、この病気についてきちんと理解をし、病気にかかってしまった相手を理解することで、本人も、介護者も負担が少なく生活をしていくことができます。

もしも、介護などのいて悩みがあるときは一人で悩まず社会資源、介護の資源を活用してみましょう。 前述したように、前頭側頭型認知症のケアは、この病気を理解し、病期になった相手を理解することが重要です。

この記事が前頭側頭型認知症という病気を知ることに役立っていただければ幸いです。そのため。この病気について知りたいという人や、知らない人にぜひシェアをして情報を拡散していただけると幸いです。


監修者

陽田 裕也 (ひだ ゆうや)

監修者:陽田 裕也

2001年、介護福祉士養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得し特別養護老人ホームにて介護職員として勤務する。

その後、介護支援専門員や社会福祉士も取得し、介護以外でも高齢者支援に携わる。現在はソーシャルワーカーとして、特別養護老人ホームで勤務しており、高齢者虐待や身体拘束、成年後見制度などの権利擁護について力を入れて取り組んでいる。