体位変換機とはどんな福祉用具ですか?種類や選び方、導入時の注意点を教えてください

質問

質問者脳梗塞により左半身が麻痺した父親を介護していますが、最近、力が弱くなり寝返りが上手にできなくなってきたため、床ずれが心配です。まだわずかに力が残っているので、自身での寝返りをサポートするような用具を探しています。また、今後体位変換をしてあげるために、体位変換器の種類も知っておきたいと考えています。体位変換器の利用には介護保険が適用となるのでしょうか。併せてご回答いただければ嬉しいです。よろしくお願いいたします。

専門家褥瘡(床ずれ)は心配ですよね。 体位交換機とは、褥瘡予防のため体位交換を補助してくれる器具のことです。 自身の寝返りのサポートとしては、ベッド用手すりの使用が適当かと思います。 体位交換機については、 自動で行うものや持ち手を引っ張るもの、ベッド上でサイドレールに固定するものなど、さまざまな種類があります。 要介護2~5の方がレンタルの対象となっていますが、対象に合致していない軽度者でも、医師の判断や市区町村が必要と認めた場合にはレンタル可能になる場合があります。 介護に関してはさまざまなお悩みや疑問などがあるかと思います。そのような時はひとりで抱えず、ケアマネージャーに聞いていただくことをおすすめいたします。

体位変換器とは

体位変換

実際に介護する身にならなければ、人の身体を動かす難しさはわからないものです。体位変換器はその名称通り、体位を変える際の補助をしてくれます。体位変換器の基本知識を確認していきましょう。

体位変換器の基本

体位変換器とは、褥瘡予防のため体位交換を補助してくれる器具を指します。ベッドの上の利用者の身体を移動させたり、適正な位置に安定させたりする働きをします。

ひとりで寝返りが打てず、同じ姿勢で長時間寝ていると、体重がかかっている部位が圧迫され、褥瘡(床ずれ)の原因となります。適度に体位を変えることにより、圧迫を軽減し、血液の循環を促します。

また体位変換器を使うことで、身体の姿勢を安全で快適な状態に保持できます。

体位変換器と呼ばれる器具類の形状はさまざまです。板状のものや棒状のもの、くさび型、クッションなどがあります。 テコの原理や回転力を利用し、小さな力で体位の変換を可能とします。また、すべりやすさなど材質を活用しているタイプもあります。

形状・材質

体位変換器の形状や材質には、用途別・部位別での違いがあります。

くさび型のものは、テコの原理で体位を変えたり、足の間に置いて身体を支えて固定したりします。

ほかの形状のパッドと組み合わせて、より体位変換をスムーズにするという方法もあります。

主にウレタン製のクッションやパッドが一般的ですが、起き上がりや身体の位置替えを自動で支援するエアや電動機能によるタイプもあります。

また身体の下に差し入れて、スライドさせるシートも体位変換用器具のひとつです。

体位変換器を選ぶポイント

体位変換器を選ぶポイント

多彩な体位変換器の種類の中から、正しく選んでいくためのポイントを確認していきましょう。

使用する場所によって選ぶ

体位には、立位、座位、臥位がありますが、体位変換器を必要とするのは主に臥位の姿勢の時です。同じく横たわる姿勢でも、仰向けや横向き、うつぶせ、横向きの傾斜など、適当とされる体勢があります。

利用者の状態ではどの部分を支える必要があるのかにより、首や背中、腰、足などの部位に適した器具を選択します。

人によって固さや感触などへの感じ方もそれぞれです。あたる部位に痛みがない材質か、不快感がないかという点にも配慮しなければなりません。

目的によって選ぶ

姿勢の保持の目的によっても、求められる形状が変わります。

体位変換器を利用する代表的な目的は褥瘡予防ですが、そのほかにもおむつ交換や食事、口内のケアなど、日常生活で必要な作業を行うため姿勢を安定させる目的も考えられます。

例えば腰を浮かせる必要があるのであれば三角形のタイプ、身体を傾けたい場合にはクッションタイプといったように状況に応じた選択が大切です。

扱う人によってはおむつ交換をする際に、足が載せられるタイプがケアしやすと感じる場合もあります。

機能と利用のしやすさ

体位変換器は介護中、使う頻度が高いため、機能性とともに使いやすさや管理のしやすさもポイントになります。

介助する人がマットの持ち手を引っ張って体位変換をするタイプの場合には、持ち手の形状や材質が扱う人にとって力の入れやすいものであることが重要です。

おむつ交換に使うものであれば、表面に防水加工が施されており、手入れがしやすくて清潔が保てるものでなければなりません。

体位変換器と介護保険制度

体位変換器のイメージ

体位変換器を利用する場合の、介護保険との関連を確認していきます。

レンタル利用の範囲

介護保険を利用すると、費用の1割(所得に応じて2割または3割)でレンタルが可能です。要介護2~5の方が対象となります。床ずれ防止用具や体位変換器については、要介護認定の基本調査において、寝返りができないと判断された人であることが要件です。

ただし医師の判断や管轄する市区町村が必要と認めた場合には、介護保険適用内でのレンタル可能となる場合もあります。

介護保険の対象となる器具は?

介護保険の対象となる体位変換器は、“利用者の体位を容易に変換できる機能を有するものに限る”とされています。

体位の保持のみを目的とするものは対象外となっているため、単に支えとなるものではなく、人力か動力で体位を変えるための補助ができる機能をもつものでなければなりません。

介護保険が適用できる体位変換器の種類

介護保険が利用できる体位変換器の主な種類をご紹介します。

まくら型、スネーク型

 

持ち手を引くことで体位変換の補助ができます。姿勢の保持にも使えるので便利です。

スライディングシート

引き出しながら身体の姿勢を変え、ベッドサイドに固定して体勢を維持します。

バナナ型クッション

 

取っ手を引いて姿勢を変え、その後支えとして保定できます。

和布団専用の体位変換器

電動で背上げをして体位変換や移動の補助ができます。

体位変換器を導入する際の費用負担と注意点

体位変換器を導入する際の費用負担と注意点

体位変換器を導入する時の料金負担や注意点について見ていきましょう。

手動と自動で負担の差

体位変換に使う器具でも動力や材質によって、レンタル料金に大きな差があります。

シートやクッションタイプの手動による変換を行うものであれば、もともとの価格も数千円程度なのでレンタル料金は1割負担の場合で、月額100円~200円代にとどまります。

一方、自動で空気圧を変えるタイプは、レンタル料金が1万円前後となるため、自己負担額は1割の方で月額900円~1,000円ほどになります。

介護用品は継続的に使用するものだけに、年間の費用負担から見るとかなりの違いになることに注意が必要です。

利用者の状況と介護体制からの選択

費用面では人力による体位変換器の方が安価ですませられますが、その分人手が必要となります。力をあまり使わないとはいっても、それなりに労力が必要です。

レンタル料金は高くなりますが、動力によって動力によって自動で体位変換できるものは夜間などでも安心です。長時間ケアができない場合でも、介護する人の精神的な負担も軽減されます。

ただ利用者によっては、機械的な体位変換を不快に感じる場合もあります。利用者の意向も含め、介護体制を考慮しながら器具を選択していくことが大切です。

体位変換器は頻度まではカバーできない

体位変換器は、自動で稼働するタイプ以外は介助者が必要となります。導入をしたからといって、介護ケアの頻度が低下できるわけではありません。

また人力による体位変換器の使用では、ポジショニングや変換の頻度などについて専門家のアドバイスを受けることが求められます。

利用者の状態によっては避けるべき危険姿勢もあります。 体位変換器を正しく活用するためにも、介護計画に沿い、適切な使用をしていかなければなりません。

褥瘡予防と快適な姿勢維持に役立つ体位変換器

介護度が高い高齢者は、皮膚が薄く、健常者よりも褥瘡が発生しやすくなります。体位変換器を使うことで、長時間同じ場所に体圧がかかるのを回避でき、褥瘡の防止に役立ちます。また快適な姿勢を保持するのにも便利です。体位変換器を選ぶ際には、その使用目的に合わせ、利用者に適しているかを十分に検討します。正しく選べば、介護する人にとってはケアがしやすくなり、介護される人も安全快適に過ごすことができるでしょう。

監修者:山岸駿介
監修者:山岸駿介

理学療法士。臨床経験は7年。
急性期から慢性期、スポーツ分野など幅広い分野を経験。医療・介護・スポーツなど幅広い分野のリハビリに携わり、老若男女に正しい運動で、健康的な生活を送るサポートしている。