排泄行為は人間が生きていくうえで必要不可欠なものであると同時に、とてもデリケートなことでもあります。 本来ならばトイレへ行って用を足せるのが一番良いですが、自力では動けなくなった場合など、大人用おむつの使用が避けられません。ただし、自分から喜んでおむつをつける人はいません。このことをしっかり理解したうえで、まずは 大人用おむつの使い方 や注意すべき点を確認していきます。
大人用おむつの使い方と注意点
気力の維持と心遣い
おむつをつけることでこんな変化が起こる場合があります。
・気持ちが弱くなったり、気落ちしたりする
・すぐに人に頼るようになる
・認知症の症状が一気に進行する
・起き上がる気力がなくなってしまい、次第に寝たきりの生活になる
そのため、介護をする人は自分の都合だけではなく、相手にとって「本当におむつが必要なのかどうか」を見極めなくてはなりません。
おむつをつけた後も、積極的に声を掛けるなどのコミュニケーションをとりましょう。気持ちが沈まないようにすることが大切です。
そして、要介護者を傷つけるような「くさい」「汚い」などの言葉は避けてください。本人を傷つけるだけではなく、迷惑をかけているという心の負担になるので、決して口にしてはいけません。
状態に合ったおむつを選ぶ
おむつには、布おむつと紙おむつがあります。布おむつは肌触りがよく、吸水性や経済性の面で優れています。しかし、洗濯の手間がかかることから現在はあまり使う人がおらず、介護現場では紙おむつが主流です。
紙おむつには、テープで留めるタイプとパンツタイプ、パッドタイプがあり、それぞれ状態に最も合うものを選ぶことが大切です。
>>大人用おむつとは 種類と選び方
《テープ留めタイプ》
寝たままでも交換しやすいので、寝たきりの場合に使います
《パンツタイプ》
上げ下げがしやすく、介助があれば自力で用を足せる場合におすすめです。下着のような感覚で着用できるので、抵抗感も少ないでしょう。
《パッドタイプ》
単独で使用することは少なく、基本的に他のタイプと併用します。
定期的に交換する
漏れる心配がないからといって、ずっと同じおむつをしているのは衛生上よくありません。
本人が変えてほしいと言った場合はもちろんですが、時間を見て定期的に交換するようにしましょう。
汚れたおむつは本人が気持ち悪いだけでなく、ニオイも気になります。
また、かぶれを招くことにもなりますので、時間を決めて交換してください。
おむつかぶれや床ずれの予防
紙おむつを長時間つけていると、皮膚がかぶれやすくなって炎症を起こしたり、床ずれを招いたりすることがあります。
おむつはお肌に優しいかぶれにくいものを選び、時々体位を変えてあげましょう。
交換の際には健康チェックを
おむつの交換時にこんな変化に気づいたら要注意です。
・尿や便の量
・下痢をしていないか
・血液が混ざっていないか
・陰部がただれていないか
・床ずれがないか など
異常が見つかった時には、すぐに主治医に相談してください。
おむつのつけ方
おむつは製品の役割を理解して、適切にタイプを選び、使う必要があります。
基本的には外側のおむつと尿取りパッドを併用することで、取替え時の負担からも解放され、経済的な面から見ても負担が軽くなるでしょう。
外側のおむつは、足回りの立体ギャザーで尿をせき止める役割を持っています。
そして尿取りパッドは、尿を吸収する役割を担っているのです。
おむつの重ね使いをしている人の多くはモレを経験していて、これが介護をする人の負担となっています。
おむつは使い方を間違えると尿モレの原因となり、本人が不快な思いをするだけでなく、介護者の負担を重くしてしまうでしょう。そのため、きちんとおむつのつけ方をマスターすることはとても重要です。
正しいおむつのつけ方
おむつのつけ方については、検索するといくつかの動画が出てきます。ここでは一例としてスタンダードなテープタイプのつけ方を紹介します。
あらかじめおむつを丁寧に広げて、全体を縦に引っ張り、しわを伸ばしておくのがおすすめです。床ずれの原因となる段差を減らすことができます。
声掛けからオムツを外して洗浄するまで
介護技術#33 オムツ交換 ①【介助方法】【日本福祉アカデミー】
おむつの交換の時間になったら、被介護者に声をかけておむつ交換の準備をします。動画では、体勢を変える際に巻き込まれないように腕の位置を変えたり、本人に残っている力(残存能力)を活かした交換をしたりといったコツが解説されています。
洗浄後から新しいおむつの交換まで
介護技術#34 オムツ交換 ②【介助方法】【日本福祉アカデミー】
洗浄の詳しい方法は割愛されていますが、羞恥心に配慮した方法や、体勢の変える時の注意ポイント、具体的な新しいおむつの交換方法などが説明されています。
パッドと併用する場合
パッドと併用する場合には、以下のことに注意して行いましょう。
・広げたおむつの上にていねいに広げて重ねましょう。パッドのギャザーとおむつのギャザーが合うようにしておきます。
・パッドをあてる場合には、両側についているギャザーを、しっかりと立たせてあてがってください。あてがったら、左右に引っ張ってパッと広げるようにします。このとき、上に引っ張らないように注意しましょう。
パッドの位置は、上部がお尻の割れ目の始まりあたりに来るといいかと思います。
その他のおむつの使い方
●フラットタイプのおむつ
おむつカバーと一緒に使います。フラットタイプはギャザーがないので、自分でギャザーを作って横モレを防ぐようにしましょう
●パンツタイプのおむつ
普段の下着と同じ要領で、両側を両手で広げて足を通して引き上げます。おへその辺りまで引き上げて、お腹周りがよじれていないかをチェックしてください。
適切なおむつのつけ方を覚え、介護を受ける人、する人の双方が快適な介護生活を送れるようにしましょう。
また、漏れてしまった場合を考え、防水シーツの利用もおすすめです。