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【グリーフケア事例・前編】10年以上続いた悲嘆状態から回復した会社員

公開日: : 最終更新日:2017/01/26 介護疲れ・介護負担

安心介護では、介護が終わった後に残された方が感じる喪失感や落ち込みのケアである、グリーフケアについての記事を公開しています。
>>大切な人を失った後の喪失感によって起こる変化
>>大切な人を失った後の喪失感、痛みから心を回復する方法:グリーフケア

今回から2回にわたり、上記の記事を執筆いただいた介護者メンタルケア協会の橋中今日子さんに、実際に悲嘆状態(グリーフ状態)から回復した事例を解説してもらいます。

会社勤めをするAさんは、10年前に亡くなられた父親のことで心を痛めていたそうです。その痛みに気づくのにも、時間が必要でした。

50代の父が若年性認知症と診断

Aさんは30歳。同期の中でも早くに管理職につき、仕事のやりがいを感じている時に、お父様が若年性認知症と診断を受けました。

最初は物忘れをよくするなと言う程度。自転車で買い物や散歩に出かけて行く生活を、お母さまと会社員の妹さんとの4人で見守る生活をしていました。

仕事と介護の両立で心も体もヘトヘトに

しかし、次第にお父様が自転車で出かけたまま行方不明になることが増え、月に何度も警察に保護されることが増えていきました。

Aさんは残業でクタクタになって帰宅し、他府県の警察署からお父様が見つかったと連絡が入れば、タクシーを飛ばして迎えに行くことが頻繁に起こるようになったのです。

父を責めてしまう毎日

「これ以上迷惑をかけないで!」
お父様が行方不明になるたび、時間を問わずに探し回り、お父様が無事に戻られた時も安心の気持ちよりも、疲れとイライラする気持ちが爆発したそうです。

「もう死んで!」
言ってはダメと思っている言葉がどんどん出てくる毎日。優しくしたい。でもできない。そしてお父様の状態もどんどん変化していき、眠る時間もほとんどとれないまま、心身ともに疲れ果てていきました。

このままでは共倒れをしてしまう!と悩み、Aさんご家族はお父様の特別養護老人ホームへの入居を決めました。

突然の別れと、「誰にも話せない」苦しい気持ち

お父様が施設入居後、思いもしない出来事が来ました。

自転車で他府県まで出かけられるほど体力があったお父様が、施設入居して1ヵ月足らずで、心不全でお亡くなりになったのです。

あまりに突然の別れに、家族の誰もが大きな心の痛みを抱えました。家ではお父様のことを言えない空気があったそうです。

Aさんは、
「施設入居は本当に正しい判断だったのか?」
「私がもっと頑張れば、父は元気でいたかもしれない」
「私が父を殺したんだ」
と、自分を責める気持ちでいっぱいになりました。

そしてお父様への思い、苦しい気持ちが溢れそうになる時、「友達にこんなことを話したら、暗い気持ちにさせてしまう」、「イヤな思いをさせてしまう」と思い、誰にも話せませんでした。

そして苦しい気持ちを抱えながらも「父よりも仕事を取ったのだから、ちゃんと結果出さなければ!」と仕事に熱中し、いつの間にか10年の月日が経っていました。

「話してもいいんだ!」と思えた時、心が救われた!

Aさんの苦しい気持ちが開放されたのは、同僚との会話がきっかけでした。

同僚のBさんは「先日、5年間、施設で暮らしていた母が亡くなってね。もうちょっと会いに行けばよかった、家で看取ってあげたかったって後悔の気持ちっていっぱい出てくる」と語ったのです。

Aさんはこの時初めて、同僚のBさんが10年近く、ご両親を遠距離介護していたことを知りました。

「介護しているとか、家族が死んだとか、誰にでも言えることじゃないから。まして、会社で話すのは躊躇するしね」

Bさんの言葉は、Aさんがずっと感じている気持ちそのものでした。Bさんの言葉にAさんは、「実は私も…」と初めてお父様のことをBさんに話しました。

するとBさんはこう言ったそうです。
「身近で介護経験がある人っていないと思ってた! みんな話さないだけで、いろいろ経験しているのね。話ができて嬉しい!」

AさんはBさんに「話しができて嬉しい!」と言ってもらえたことで、「話していいんだ!」と、長年胸にあった重い石が溶けていくような、軽やかさと安心感が生まれました。

そして、Bさんの体験を聞くことで「私だけじゃなかった!」と思い、こんな心境の変化が訪れたそうです。

「どれだけ一生懸命したとしても、後悔の気持ちは残るものかもしれないな。十分にできなかったかもしれないけれど、あの時はあの時で精一杯頑張った自分にもう少し優しくしてみようかな?」

「自分を許してもいいかも?」と感じ、心が軽くなり、少し心の重荷がおりたような気がしました。そして自分でもびっくりするほど、涙が溢れてきました。

Aさんは泣きながら、自分の中に悲しい気持ちがまだあったことに驚き、「自分を責める気持ちが強すぎて、父が亡くなったことを悲しんでいなかったな」と気づくことができました。

そして初めて「この心の痛みを解決したい!」と思い、筆者のカウンセリングを受けに来られたのです。

次回は11月21日に公開予定です。悲しみから回復するまでに、Aさんが行ったプロセスについてご紹介します。

《執筆者:橋中今日子》
理学療法士・リハビリの専門家/心理カウンセラー

認知症の祖母、重度身体障害の母、知的障害の弟の3人を介護。シングル介護歴は21年になる。家族関係や人間関係に悩んだことから、心理学、コーチング、コミュニケーションスキルを学ぶ。

「介護者メンタルケア協会」を設立し、家族を介護している方、医療・介護の現場で働く方が「心が軽くなる」よう、心身両面からサポートする活動をしている。

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