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口から食べ物を食べられなくなった時に作る「胃ろう」って?

 胃ろうは、お腹に造った“第2の口”。病気によって口から食べ物を食べられなくなったり、嚥下機能が落ちた人に、お腹の皮膚と胃壁の間にカテーテル(管)を通し、直接胃に栄養剤を注入する栄養摂取法です。栄養摂取の方法として医師にすすめられた場合、患者や家族、介護職は、どう考えたらいいのでしょうか。メリット・デメリット、生活の変化など、胃ろうの造設を検討する時に、ぜひ知っておきたいことを解説します。

目次

  1. 胃ろうとは?
  2. 胃ろうを勧められるケース例
  3. 胃ろうのメリット・デメリット
  4. 胃ろうの生活
  5. 胃ろう設置後の余命
  6. 胃ろう設置後の介護施設入所
  7. 胃ろう手術をした人の事例
  8. まとめ

胃ろうとは?

胃ろうとは

 「胃ろう」とは胃にあいた孔のことで、口から食事が摂れない人が、お腹の皮膚に小さな穴をあけて胃へとカテーテルを通し、胃から直接栄養を摂取する経管栄養法を意味します。胃ろうは、通常、比較的安全で簡単なペグ(PEG:Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)という手術で造設されます。ペグは、胃カメラ(内視鏡)を使って胃の中からガイドし、お腹の皮膚から(経皮的)胃に小さな孔(ろう孔)をあける手術(経皮内視鏡的胃ろう造設術)で、ほとんどの胃ろうがペグで造設されるため、ペグは胃ろうと同じ意味でも使われます。胃が使えない場合は、同様に皮膚を通じて小腸に栄養を送る「腸ろう」を造ります。

 胃ろう用の栄養剤には、必要な栄養素がバランスよく含まれていて、効率よく栄養を摂ることができます。

 衰弱した人が栄養をしっかり摂れていないと、他の治療やリハビリを受けても十分に効果が現れません。そのため胃ろうのような医療的な栄養摂取法が必要とされるのです。 また、腸閉塞や胃拡張等の状態の時、中に溜まったガスや液などを胃ろうの孔から体外に排出して腸管の中を減圧し、口からの栄養摂取を可能にする目的で作る場合もあります。

胃ろうを勧められるケース例

 以下のような場合に胃ろうの造設を提案されることが多いでしょう。

  • 脳卒中(急性期)で麻痺があるため、自分で食べることができない
  • 認知症や老衰のため、自分で食べることができない
  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経難病で、自分で食べることができない
  • 自分で食べることはできるが、誤嚥性肺炎を繰り返す
  • 腸閉塞などで中にたまった物を排液する減圧治療が必要
  • 現在行っている栄養摂取法(経鼻経管など)が病状の変化で適さなくなった

胃ろうのメリット・デメリット

メリット

栄養を安定的に摂取できる

 栄養状態が良くなれば、体力が回復し、元気に長く生きられる可能性が高まります。また、胃ろうと、口からの食事を併用できると、口からの食事に戻れるケースもあります。

栄養摂取法として優れている

 口から食べられなくなった時の栄養摂取には、大きく分けると、点滴などで栄養を直接血液に入れる血管ルートと胃腸を使うルートがあります。血管から栄養分を入れる経静脈栄養は、胃や腸の機能に問題があっても補給ができるものの、輸液管理や介護負担が大きかったり、腸の機能が落ちて再び口から食べることが難しくなる可能性があるなどの面があります。一方、胃腸を使う経腸栄養は、身体の自然な栄養摂取に近いため、栄養の吸収に関する体の負担も少なく、血糖値の変動なども起きにくく、腸の免疫も保たれます。

手術の負担が少ない

 PEGは内視鏡を使って行う造設手術で、約20分弱で終わります。入院日数も短く、体への負担が少なくてすみます。

生活しやすく不快感や苦痛が少ない

 腸で吸収する経腸栄養法には、胃ろう・腸ろうと、鼻からカテーテルを通して胃や腸に入れる経鼻栄養があります。常にチューブの違和感のある経鼻胃管などの経鼻栄養と比べ、胃ろうは不快感や苦痛が少ないといわれています。胃ろうの入口は衣服の下にあるので外からは見えず、移動に制限もありません。入浴時に湯船にも浸かれます。

並行して食事や嚥下訓練ができる

 のどにカテーテルが通っていないので、胃ろうをしながら口からも食べることができ、同時に嚥下訓練ができます。リハビリによって再び口から食べられるまで回復するケースもありますし、胃ろうは不要になれば閉鎖することができます。

デメリット

手術が必要

 安全性が高く比較的容易とはいえ手術が必要で、頻度は少ないですが合併症もあります。

皮膚トラブル等が起こることがある

 孔の周りに皮膚トラブルが起きたり、胃ろうを使わなくなり閉じた場合に、皮膚に違和感が残ることがあります。また、誤った部位にカテーテルを入れるなどで腹膜炎を起こす恐れがあります。

誤嚥性肺炎のリスクがある

 胃からの逆流が起こるため、誤嚥性肺炎を起こすこともあります。

 経腸栄養(胃ろう等)と経静脈栄養との比較

  経腸栄養 軽静脈栄養
注入時間 比較的短時間 12~24時間と長時間
入浴 可能 テープを貼れば可能
口からの食事 可能 可能
消化管機能 保たれる 低下する
栄養の吸収 消化管の機能により変化 すぐに吸収
経済性 比較的安価 多少高額
管理 比較的容易 複雑
感染のリスク 軽静脈栄養より低い 敗血症の可能性がある

胃ろうと経鼻栄養との比較

  胃ろう 経鼻経管
手術 必要 不要
異物感 ほとんどない ある
外観 普段と同じ(衣服で見えない) 普段と異なる
口から食事の併用 可能 難しい
自分で抜去の恐れ 低い ある
誤嚥 比較的少ない ある
交換 3~6か月ごとに交換 1~2週間ごとに交換

胃ろうの生活

入浴

胃ろうの手術後、2週間経つとろう孔が完成するので入浴は可能です。キャップを閉めていれば、そのまま湯船に浸かっても問題ありません。胃ろうの周りは石鹸やボディソープで洗って常に清潔にし、風呂から出たらタオル等で水分をしっかり取って、自然乾燥させます。

栄養摂取

患者さんの状態によって違いますが、ふだんの食事のように3回程度が基本です。

交換

胃ろう部分のカテーテル交換は2~6か月に一度、定期的に行います。

経口摂取のリハビリと口腔ケア

 胃ろうでの栄養摂取と並行して、口から食べる咀嚼や嚥下のリハビリもできます。口の機能を衰えさせなければ、やがて口からの食事のみに戻れる可能性もあります。また、口から食事をしなくても、口の中は細菌が増えやすく、誤嚥性肺炎の原因になることもあるため、口腔ケアも大切です。

胃ろう設置後の余命

 日本では、病院に入院していた高齢患者で胃ろうを造設した人の半数以上が、その後2年以上生存しているという調査結果があります。胃ろうは、胃腸を通じて栄養を取るので、自然な栄養摂取と近く、腸の持つ免疫の機能も保たれます。そのため、胃腸の吸収機能が保たれている限り、胃ろうで安定した栄養が取れ、長く生きることも可能です。また、体力が残っている時に造設して適切なケアを行えば、栄養状態が改善し体力がついて全身状態も良くなってくるほか、再び口からの食事に切り替えるようになる可能性もあります。

 しかし、認知症や老衰などで食べたり飲んだりできなくなり、かつ回復可能性もない終末期に胃ろうを造設するケースもあります。米国では、認知症終末期には胃ろうを造設しても余命は伸びないとの報告も出されています。 終末期に胃ろうを入れることは、仮に延命できても、十分な消化吸収ができなかったり、栄養が取れても体の機能が落ちているため代謝できなかったりして苦痛を増すことも考えられます。一方、安定して栄養がとれるため、床ずれができにくい、感染症にかかりにくいなどより楽に生きられるという利点もあります。そもそも、その状態で長生きすることがその人の人生にとって良いことなのかという疑問もあります。終末期の場合、胃ろうは益・不益をじっくり考えて慎重に選択しなくてはなりません。

胃ろう設置後の介護施設入所

 胃ろうを造った人への栄養剤注入は基本的に医療行為にあたります。そのため、胃ろうという医療的ケアを行えるのは、医療者である医師、看護師、そして家族のみに制限されています。しかし、2012年に「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が施行され、介護福祉士やヘルパーも、研修を受けて認定されることで、痰の吸引と経管栄養のケアを行えるようになりました。

 このような処置が行える人員を確保している高齢者施設ももちろんありますが、施設により体制が大きく異なるのが現状です。

 将来、ご本人に胃ろうなどの医療的ケアが発生する可能性のある場合は、入居施設を決める前に、こうした受け入れ体制がしっかり整っているか十分に確認しておきましょう。

胃ろう手術をした人の事例

胃ろうにより、体力を回復して口から常食も摂れるようになったAさん

 妻(75歳)と夫婦二人暮らしのAさん(78歳)は、脳卒中で倒れて入院。リハビリは行ったものの、障害が残りました。退院1年後、脳卒中を再発してしまい、再入院。口からの食事ができなくなったため、医師より経腸栄養法を勧められました。Aさんも妻も、はじめは手術をしなくてよい経鼻栄養を望みましたが、説明を聞いて、より苦痛が少なく生活しやすい栄養摂取方法である胃ろうを選択しました。

 造設後、自宅で生活するための胃ろう管理の方法や協力体制について、担当医師、看護師、ソーシャルワーカー、管理栄養士、ケアマネジャー等で話合いをしました。

 自宅での胃ろうの栄養剤補給は、朝、昼、番の3回、約2時間かけて行います。バランスよい栄養がきちんと摂れるので、Aさんの体力は回復していきました。

 並行して、言語聴覚士による嚥下の訪問リハビリを実施。水を飲むテストをしたところ嚥下の反応がよかったため、胃ろうと経口摂取を併用してみることにしました。ゼリーのおやつから始めて、ムース状の嚥下食を食べられるようになり、やがて昼食のみ常食に変更することができました。

 Aさんは、食べる楽しみを取り戻し、昼間起きて夜はぐっすり眠るという生活リズムもついてきました。会話も増え表情も豊かになりました。いずれ、経口摂取のみに戻る希望を持っています。

まとめ

  • 胃ろうは、安全で負担の少ない栄養摂取法として普及している。
  • 生活しやすく、十分な栄養確保ができる。
  • 並行して経口摂取のリハビリテーションもできる。
  • 孔の周囲に皮膚トラブルが起こることがある。
  • 本人の状態や生活スタイル、目標を考えて、他の栄養摂取法と比較しながら、医療スタッフや介護スタッフ、ご家族等と十分話し合って選ぶ。

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(編集:編集工房まる株式会社)


監修者 野溝明子

監修者:野溝朋子

医学博士。鍼灸師。介護支援専門員。

東京大学理科一類より同理学部、同大学院修士課程修了(理学修士)、東京大学医学部(養老孟司教室)で解剖学を学んだ後、東京大学総合研究博物館(医学部門)客員研究員。医療系の大学で非常勤講師を務めるほか、鍼灸師として個人宅や施設などへ出向き施術を行っている。

著書に『看護師・介護士が知っておきたい 高齢者の解剖生理学』『セラピストなら知っておきたい解剖生理学』『介護スタッフのための 安心! 痛み緩和ケア』など。