レビー小体型認知症とは?

認知症という病名は聞いたことのある方が多いかと思います。ですが、その1つ1つの種類についてまで詳しく知っているという方は少ないかもしれません。今回は認知症の一種であるレビー小体型認知症について解説します。どのような病気なのか、どのような経過をたどっていくのか、介護をする家族としての心得などを詳しく紹介します。

レビー小体型認知症とは?

レビー小体型認知症のイメージ

4大認知症(アルツハイマー型認知症、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症)の1つです。認知症のうち10~20%はこのレビー小体型認知症であるといわれています。

発症年齢は60歳以上が典型的とされていますが、40歳代~50歳代でも見られる認知症です。男女比は2:1で、男性に多い傾向があります。

レビー小体型認知症は1976年に日本の医師が最初に発見した病気です。近年では世界中でも注目を集めるようになった認知症です。

レビー小体型認知症の原因

レビー小体型認知症を引き起こす原因となるのがレビー小体と呼ばれるたんぱく質の一種です。このレビー小体が脳の神経細胞を傷つけ破壊してしまうことによってレビー小体型認知症が引き起こされます。

また、レビー小体が大量に増えていく病気にはレビー小体型認知症以外にもパーキンソン病があります。この両者は症状が非常に似ており、後述する診断基準をもってしても区別ができないということもあります。

病理学的所見では、レビー小体型認知症はレビー小体というたんぱく質が大脳皮質に多くできるもので、パーキンソン病は脳幹に多くできるものです。これらの特徴を画像検査で区別することがレビー小体型認知症かどうかの診断に役立つこともあります。

レビー小体型認知症の症状と経過

レビー小体型認知症の症状は他の認知症と同様に記憶力、注意力、遂行機能および行動症状の悪化がみられる事です。 レビー小体型認知症の症状を項目ごとに分けて紹介していきます。

認知機能障害

健忘(いわゆる物忘れ)は早い時期から自覚することが多いのですが、その段階では簡易的なテストを行っても年相応と評価されることがあります。記憶障害は初期には目立たないことが多いですが、症状が進行するごとにどんどん悪化していき、自覚的にも他覚的にもわかるようになります。

また、見えている景色を正しく判断できなくなる視空間認知障害とともに注意力が保てない注意障害、立体的な位置関係がわからなくなる構成障害などの症状が初期から強く出現するのも特徴で、他の認知機能と比較して物事を遂行する能力や問題解決能力の低下が目立ちます。

例えば、積み木がうまく積めない、時計の絵が正しく書けない、図形がうまく書けないという場合には視空間認知機能が障害されているということになります。

パーキンソニズム

寡動(動きが少なくなること)、筋強剛(筋肉が滑らかに動かないこと)、振戦(ふるえ)がみられ、小刻み歩行(歩幅が小さくなる)、前傾姿勢(少しお辞儀をしたような姿勢)、姿勢反射障害(身体が傾いたときに倒れないための反射がにぶること)、構音障害(ろれつがまわらない)、仮面様顔貌(顔の筋肉の動きが減少し、表情が乏しくなること)などパーキンソン病と同様の症状が見られます。

ですが、通常認知機能の症状とこれらのパーキンソニズムは互いにいずれかの発生後1年以内に始まる傾向にあります。

また、レビー小体型認知症では早期に振戦はみられませんが、歩行不安定を伴う体軸性筋強剛が早期から見られます。また機能障害は左右対称性となる傾向にあり、転倒を繰り返すという特徴があります。

幻視

レビー小体型認知症の初期、認知機能が保持されている頃から見られる症状です。幻視の内容は人物や小動物が家の中に入ってくるというものですが、はっきりとした人物像はなく色や形程度と非常にあいまいであることが特徴です。

初期のころには比較的頻繁に幻視が起こり、内容を説明することもできますが、認知機能が低下していくとだんだん幻視は起こらなくなります。

睡眠、覚醒の障害

レビー小体型認知症において非常に重要な症状であり後述する診断基準においても中核症状として位置付けられています。レビー小体型認知症の約75%に起こる症状です。

レム睡眠行動異常とよばれ、寝ている間に起こることが特徴で、悪夢に伴い大声で寝言を発したり、夢を見ながら暴れたりします。時に本人もしくは家族を傷つけてしまうこともあります。 レビー小体型認知症は比較的緩やかに進行していく認知症ですが、人によっては進行スピードが速いこともあります。

個人差がありますが、ほかの認知症と比較するとレビー小体型認知症は生命予後が悪い認知症です。とある研究ではレビー小体型認知症と診断された患者の10年生存率は2.2%という結果も出ています。しかしながら,病型と生命予後は絶対的な関係ではありません。

レビー小体型認知症の診断基準

レビー小体型認知症は、2017年のレビー小体型認知症診療ガイドラインにおいて以下のような診断基準が設けられています。

まずレビー小体型認知症の診断には、「社会的あるいは職業的機能や、通常の日常活動に支障を来す程度の進行性の認知機能低下」が存在することが必須となります。初期には持続的で著明な記憶障害は認めなくてもいいのですが、通常は進行とともに記憶障害は明らかになっていきます。また注意、遂行機能、視空間認知のテストによって著明な障害がしばしばみられる事が特徴です。 そのうえで、以下に記載する症状がいくつ認められるかで診断していきます。

1. 中核的特徴

 パーキンソニズム以外は典型的には早期から出現し、臨床経過を通して持続して見られる症状です。中核的特徴となるのは以下の4つです。

  • 注意や明晰さの著明な変化を伴う認知の変動
  • 繰り返し出現する構築された具体的な幻視
  • 認知機能の低下に先行することもあるレム期睡眠行動異常症
  • 特発性のパーキンソニズムの以下の症状のうち 1つ以上(動作緩慢、寡動、静止時振戦、筋強剛)が見られること

2. 支持的特徴

  • 抗精神病薬に対する重篤な過敏性がある
  • 姿勢の不安定性がみられる
  • 転倒を繰り返す
  • 失神または一過性の無反応状態のエピソードがある
  • 高度の自律機能障害(便秘、起立性低血圧、尿失禁など)がある
  • 過眠、嗅覚鈍麻、幻視以外の幻覚がある
  • 体系化された妄想を表出したことがある
  • アパシー(無気力・無関心)、不安、うつがある

3. 指標的バイオマーカー

  • SPECTまたはPETで示される基底核におけるドパミントランスポーターの取り込み低下
  • MIBG 心筋シンチグラフィでの取り込み低下
  • 睡眠ポリグラフ検査による筋緊張低下を伴わないレム睡眠の確認

4. 支持的バイオマーカー

  • CT や MRI で側頭葉内側部が比較的保たれる
  • SPECT、PETによる後頭葉の活性低下を伴う全般性の取り込み低下(FDG-PETによcingulate island sign を認めることがある)
  • 脳波上における後頭部の著明な徐波活動

上記に挙げたもののうち、2つ以上の中核的特徴が存在する、または1つの中核的特徴が存在し、1つ以上の指標的バイオマーカーが存在するという場合にはProbable DLB(レビー小体型認知症であることがほぼ確定)と診断されます。

一方、1つの中核的特徴が存在するが、指標的バイオマーカーの証拠を伴わない、または1つ以上の指標的バイオマーカーが存在するが、中核的特徴が存在しない場合にはPossible DLB(レビー小体型認知症疑い)と診断されます。

また、臨床像の一部または全体を説明しうる他の身体疾患や脳血管疾患を含む脳障害が存在している場合、重篤な認知症の時期になって初めてパーキンソニズムが出現した場合はレビー小体型認知症である可能性が低いと判断されます。

※バイオマーカーとは:血液や尿などの体液や組織に含まれる、タンパク質や遺伝子などの生体内の物質で、病気の変化や治療に対する反応に相関し、指標となるものをバイオマーカーといいます。バイオマーカーの量を測定することで、病気の存在や進行度、治療の効果を判断する指標の1つとすることができます。

レビー小体型認知症の方への対応方法

レビー小体型認知症に対する治療方法ですが、現在の医療では完治させるための治療法は確立されておりません。そのため、薬剤を使用して症状を和らげたり抑制したりすることが治療となります。

前述した診断基準も然り、レビー小体型認知症は専門家であってもほかの病気との鑑別が非常に難しいという特徴があります。そのため、気になる症状が見られたらなるべく早く医療機関を受診し、レビー小体型認知症かどうかの鑑別をしてもらうことが重要になります。

そのうえで、レビー小体型認知症と診断された場合そのご家族はどのように対応すればよいでしょうか。

症状への対応

まずは、レビー小体型認知症における症状に対する対処法です。

レビー小体型認知症の初期において多く見られる幻視。これは見えている本人にとっては紛れもなく事実なのです。そのため、本当は何も見えていないからと発言そのものを否定しないことが重要です。周囲の人が患者には見えているという事実を受け入れることで幻視が見えている方は安心します。まずは受け入れるような声かけをするように心がけましょう。

レビー小体型認知症において最も注意したいのが転倒です。転倒により骨折などになり寝たきりとなるとその後の生命予後に影響を及ぼします。転倒しないよう住居の環境を改善する、外出時に介助をするなどの対応をするとよいです。

睡眠障害においては、本人の自覚がない場合がほとんどです。そのためどのような症状が出ているか家族が記録を残し、受診時に医師に説明することで本人や家族のけがの防止へとつながります。

介護保険を利用する

症状が進行して家族での介護が手一杯、症状の進行を少しでも遅らせるためにできることを探しているという方は介護保険を利用してみてはいかがでしょうか。

介護保険は前述した診断基準においてProbable DLBと診断されており、介護が必要な状況であれば申請することができます。無事に介護保険認定がされたら次は担当ケアマネージャーと相談しつつ介護保険の利用方法を考えましょう。

レビー小体型認知症を患っている方が一番ストレスとなるのが環境の変化です。そのため、環境に大きな変化を与えずに症状を食い止めたいという方には通所型のサービスや訪問型のサービスを受けて、リハビリ等を行うという方法があります。

介護そのものが負担となっている方においては宿泊型の介護サービスを選択するという方法もあります。自身のニーズやレビー小体型認知症である方の状態に合わせて介護サービスが選択できるとよいでしょう。

まとめ

認知症の中でも2番目に罹患者が多いレビー小体型認知症。初期には症状が軽いことや、パーキンソン病と病態や症状が類似していることから、ほかの病気との鑑別が難しいことが特徴です。

ですが、正しい治療をすることによって症状をやわらげ、本人に適切な対応ができるため、疑わしい症状が見られたら、まずは医療機関を受診することをお勧めします。

認知症の中でも割合としては多いもののあまり聞きなれない言葉であり、どのような病気であるのか知らないという方も少なくありません。この記事を読んでレビー小体型認知症についてご理解いただけたという方はぜひ、シェアをしていただき情報を拡散していただけると幸いです。

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監修者:春田 萌

日本内科学会 総合内科専門医、日本老年医学会所属
15年目の内科医師です。大学病院、総合病院、クリニックでの勤務歴があります。訪問診療も経験しており、自宅や施設での介護についての様々な問題や解決策の知識もあります。