特定施設入居者生活介護は、介護付有料老人ホームやケアハウス(軽費老人ホームC型)などの特定の施設に入居した際に提供される介護保険サービスです。聞きなれないサービスだという方も多いのではないでしょうか。本記事では、特定施設入居者生活介護の内容や利用方法を解説します。
目次
- 特定施設入居者生活介護とは?知っておきたい基本ポイント
- 特定施設入居者生活介護を受けられる対象者
- 特定施設入居者生活介護のサービス内容
- 特定施設入居者生活介護でかかる料金
- 特定施設入居者生活介護の利用方法
- 自宅での生活は難しいけれど自立した生活を送りたい方に
特定施設入居者生活介護とは?知っておきたい基本ポイント
最初に、特定施設入居者生活介護の基本ポイントを確認していきましょう。
指定を受けた施設に入居して受けるサービス
介護付有料老人ホームやケアハウス(軽費老人ホームC型)などの施設に入居し、施設の職員から入浴や排泄、食事などの介護や日常生活上の支援、機能訓練、療養上の世話を受けながら、できるだけ自立した日常生活を送るための介護保険サービスです。施設の居室が自宅とみなされるので、訪問介護などと同じ居宅サービスに位置付けられています。
施設では食事の提供、生活相談、安否確認などを行い、介護や看護のサービスについては、訪問介護事業所や訪問看護ステーション、福祉用具貸与、通所介護など外部のサービス事業所を利用する施設もあり、「外部サービス利用型」と呼ばれています。
施設の空き部屋などを短期間だけ利用するショートステイも可能です。1日ごとに「短期利用特定施設入居者生活介護費」が発生します。
特定施設入居者生活介護の職員体制と設備基準
特定施設入居者生活介護の指定がある施設は、看護と介護職員について要支援者10人ごとに看護・介護職員1人。または、要介護者3人ごとに看護・介護職員人1人という基準が定められています。
看護職員については、利用者が30人までは1人、30人を超える場合50人ごとに1人が必要です。ただし、外部の介護保険サービスを利用する「外部サービス利用型」の場合は、利用者10人に対して介護職員1人となります。 その他の職種の人員基準は以下の通りです。
- 管理者:1人、兼務可
- 生活相談員:利用者100人当たりに1人以上
- 機能訓練指導員:1人以上、兼務可
- 計画作成を担当する介護支援専門員:1人以上、兼務可
また、以下のような設備基準も定められています。
- 介護居室:原則個室。介護を行える広さがあり、プライバシーの保護に配慮されていること
- 一時介護室
- 浴室:身体が不自由な利用者も入浴できるものこと
- 便所:居室のある階ごとにあり、非常用設備が備わっていること
- 食堂や機能訓練室
- 施設全体が車椅子で円滑に移動できるような空間と構造になっていること
特定施設入居者生活介護を受けられる対象者
それでは、特定施設入居者生活介護を受けられる対象者を確認しましょう。
特定施設入居者生活介護の対象者
特定施設入居者生活介護が受けられるのは、要介護1~5の認定を受けており、一定の基準を満たした特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設に入居している方。要支援1、2の方は、「介護予防特定施設入居者生活介護」の対象です。
入居している介護付有料老人ホームやケアハウス(軽費老人ホームC型)の定員が29人以下の場合、「地域密着型特定施設入居者生活介護」の対象となります。要介護1~5の方が対象で、要支援1、2の方は利用できません。
特定施設入居者生活介護が受けられる施設
特定施設入居者生活介護が受けられる施設には、介護付有料老人ホーム、養護老人ホーム、ケアハウス(軽費老人ホームC型)、基準を満たしたサービス付き高齢者向け住宅があります。
施設が特定施設入居者生活介護を提供するには、一定の基準を満たして指定を受ける必要があります。特定施設入居者生活介護の指定を受けていない有料老人ホームは、「介護付」「ケア付」とつけることができません。在宅介護と同様に、地域の居宅介護支援事業所と契約して介護保険サービスを受けることになります。
特定施設入居者生活介護のサービス内容
特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設では、利用者ごとに特定施設サービス計画が作成され、その内容に則ったサービスが提供されます。それでは、特定施設入居者生活介護のサービス内容を見ていきましょう。
特定施設入居者生活介護で受けられるサービス
特定施設入居者生活介護では、特定施設サービス計画に基づいて下記のサービスが提供されます。
●介護サービス
特定施設入居者生活介護では、食事、排泄、移動、着替え、入浴などの介助といった介護サービスが受けられます。入浴の介助が必要な方には、週に2回以上の入浴介助か清拭を行う必要があります。
急に排泄や着替えの介助が必要になった場合にも、別料金はかかりません。
●生活支援サービス
居室の清掃や寝具の交換、洗濯、買い物代行などの生活の支援をするサービスです。週に行える回数が決まっていたり、買い物に行けるエリアが決まっていたりする場合があるので、事前に確認をしておきましょう。
その他のサービス
健康相談や栄養指導、服薬支援、排便や睡眠などの生活リズムの記録などの健康管理や機能訓練、入退院時の同行や入院中のお見舞いのサービスなどです。施設によって提供内容が違うため、事前に確認をしておきましょう。
特定施設入居者生活介護でかかる料金
特定施設入居者生活介護を利用すると、どのくらいの費用が掛かるのでしょうか。その金額を見ていきましょう。
特定施設入居者生活介護の1日ごとの基本料金
利用料金は要介護度ごとに、以下の金額となります。短期間の利用の際に発生する、短期利用特定施設入居者生活介護費も同様の金額です。家賃や食費などは料金に含まれていません。
介護予防特定施設入居者生活介護費 | 要支援1 | 182円 |
要支援2 | 311円 | |
特定施設入居者生活介護費 | 要介護1 | 538円 |
要介護2 | 604円 | |
要介護3 | 674円 | |
要介護4 | 738円 | |
要介護5 | 807円 | |
地域密着型特定施設入居者 生活介護費 (入居定員が29人以下の場合) |
要介護1 | 542円 |
要介護2 | 609円 | |
要介護3 | 679円 | |
要介護4 | 744円 | |
要介護5 | 813円 |
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは施設の担当者、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
外部サービス利用型特定施設入居者生活介護の場合
外部サービス利用型特定施設入居者生活介護の1日ごとの利用料金は、要介護度ごとに以下の金額となります。家賃や食費などは料金に含まれていません。 下記の金額の他に、利用した外部サービスの料金がかかります。
要支援1、2の場合 | 56円 |
要介護1~5の場合 | 83円 |
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは施設の担当者、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
特定施設入居者生活介護の利用方法
最後に、特定施設入居者生活介護を利用する基本手順を確認しておきましょう。
特定施設入居者生活介護の利用方法
利用手順は以下のようになります。
- 複数のサービス提供事業者(施設)をピックアップして見学・体験利用をする
- 施設が決まったら利用申込みをする
- サービス提供事業者(施設)の介護支援専門員が利用者に合わせた特定施設サービス計画を作成し、利用者や家族の同意を得る
- サービス提供事業者(施設)と契約を交わす
- 指定日時よりサービス開始
入居する施設を探すのは利用者や家族です。それまで住んでいた地域周辺で探したい場合などには、ケアマネジャーが詳しい場合がありますので、相談してみるといいでしょう。
※上記は基本的な流れです。サービス提供事業者や利用者の状況によって異なります。
自宅での生活は難しいけれど自立した生活を送りたい方に
特定施設入居者生活介護は、介護付有料老人ホームや養護老人ホーム、ケアハウス(軽費老人ホームC型)、一部のサービス付き高齢者住宅に入居した方が利用できる介護保険サービスです。施設で日常生活上の支援や機能訓練、介護を受けながら日常生活を送ることができます。
自宅での生活が難しくなったけれど、できるだけ自立した日常生活を送りたい方などは利用を検討してみてはいかがでしょうか。
訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。