介護者メンタルケア協会の橋中今日子さんが解説!「改正育児介護休業法」について

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2017年1月1日に、育児・介護休業法(以下、介護休業法に略)が改正されることをご存知でしょうか? >>(外部)厚労省:育児・介護休業法が改正されます(リーフレット)

介護休業法は、仕事と介護の両立をするために要となる制度です。

しかし、総務省の就業構造基本調査(2012年)によると、介護休業法の利用率は3.2%。ほとんどの人が利用していません。

▼利用率が伸び悩んでいる理由

「いつ利用したらいいかわからない」 「休むと収入が減るのが心配」 「休んだら出世に影響するかもしれない!」

わたくしども、介護者メンタルケア協会にも、介護休業を利用することをためらうお声がたくさん届いています。 特に収入が減ってしまうのが怖い!と制度を利用すること迷われている方が多いです。

雇用保険から支給される“給付金”について

確かに介護を理由に仕事を休むことで、収入は一時期減ってしまいます。 しかし、介護休業(休んでいる間)、雇用保険から給付金が支給されますので収入がゼロになるわけではありません。

以前は、給料の約40%に値する金額でしたが、2016年8月より67%に引き上げられています。

給付金が67%に上がったとはいえ、安心できる金額とはいえないのも現状です。 一時的に、収入が減ることはとても不安に感じて当然です。

しかし、介護は長期化する可能性が高いからこそ、介護休業を利用して仕事を休み、「仕事と介護の両立できる環境を整える時間を取ること」は、とても大切なことです。

介護休業は“投資の時期”

ですから、仕事を休むことで起こる収入が減ると言うデメリットを見るだけでなく、長期的な眼差しで見てみましょう。 介護休業は“投資の時期”と考えて、積極的に利用することも選択肢の一つと言えます。

介護休業の変更点

介護休業法は、2017年1月1日からの改正によって、よりわかりやすく、使いやすくなります。

介護休暇

改正後:介護が必要な家族一人につき年5日、半日単位で利用可能 ※介護が必要な家族が二人以上の場合は、年10日間。

改正前:年5日間(介護が必要な家族が二人以上の場合は10日間)、1日単位で利用可能

介護保険の手続き、病院のつき添いなど、平日に用事が重なることが多いもの。今回、半日単位で利用可能になったことで、午前中は病院のつき添いで休み、午後から出勤するなど効率よく利用できる形に改正されています。

 

※2021年1月1日付で、時間単位での取得が可能になっています。詳細は以下の記事をご覧ください。

介護休暇を取りたい!取り方や給与はどうなる? - 介護の専門家に無料で相談「安心介護」介護の基礎知識

介護休業

改正後:家族が介護を必要とする状態(要介護状態)に2週間以上継続してなった場合に、93日間を3回まで分割利用が可能 介護対象:配偶者(事実婚を含む)、父母、配偶者の父母、子、同居している祖父母、兄弟、孫

改正前:93日間の分割利用は不可。時短勤務希望者は、介護休業(休む)日と通算して、93日の範囲内で利用可能

<新設>介護のための所定労働時間の短縮措置(選択的措置義務)

介護休業とは別に、利用開始から3年間、2回以上の利用が可能です。

事業主は、働く人に対して、以下のいずれかの選択ができるように対策をとる必要があります。

1)労働時間の短縮措置
2)フレックスタイム制度
3)始業、終業時刻の繰り下げ、繰上げ
4)労働者が利用する介護サービ費用の助成そのほかこれに準じる制度

時短勤務の活用を!

仕事と介護の両立が難しくなる原因の一つが、介護サービスの利用できる時間帯と、仕事の始業や終業時間の時間差です。始業時間が8時半なのに、デイサービスのお迎えは9時以降になるために始業時間に間に合わない、などの理由で正社員をあきらめる人は少なくありません。

骨折で介護度が上がった、認知症の症状がひどくなってきて一人で留守番が難しくなったなど、「朝夕の時間帯の対応をどうするか?」「仕事を辞めなければならないか?」と悩んでいる方は、時短勤務ができる制度を活用していきましょう。

しかし、会社や事業主がこれからどのような対策をとったらいいのか、迷っているところも多いのが現状です。

次回は、会社に休業を申し出て「迷惑だ!」と言われてしまった場合、どう考えたらいいのかについて、具体的な事例を交えて紹介します。

 

参考(外部サイト): 平成24年度厚生労働省委託調査 仕事と介護の両立に関する実態把握の調査研究事業報告書 平成27年度厚生労働省委託事業 「地域における医療・介護の連携強化に関する調査研究事業報告書」 厚生労働省 「仕事と介護の両立のための制度の概要」

《執筆者:橋中今日子》 理学療法士・リハビリの専門家/心理カウンセラー

認知症の祖母、重度身体障害の母、知的障害の弟の3人を介護。シングル介護歴は21年になる。家族関係や人間関係に悩んだことから、心理学、コーチング、コミュニケーションスキルを学ぶ。

「介護者メンタルケア協会」を設立し、家族を介護している方、医療・介護の現場で働く方が「心が軽くなる」よう、心身両面からサポートする活動をしている。 ▼無料メルマガ『介護に疲れた時、心が軽くなるヒント』

 

※この記事は2016年12月時点の情報で作成しています。