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当事者でなくても知っておきたい【LGBT×介護】について~NPO法人代表佐藤悠祐さんインタビュー

公開日: : 最終更新日:2017/01/26 その他

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お金持ちでもそうでなくても、大家族でもシングルでも、誰でも直面しうるのが“介護”です。

在宅医療や介護が推進されている中、住み慣れた地域で安心して介護を続けるためには、地域の連携は欠かせません。そんな地域の中には、公表できないために介護で苦労を重ねているセクシャルマイノリティ、LGBTの方々がいるかもしれません。

今回は多様性のある福祉社会の実現を目指した活動を続けるNPO法人、Startline.netの代表であり、介護福祉士でもある佐藤悠祐さんにセクシャルマイノリティの方が直面する介護の問題についてや、必要な支援などについてお話しいただきました。

LGBTとは何か

―セクシャルマイノリティやLGBTについて説明していただけますか

今の社会では、男性が女性を好きになったり、女性が男性を好きになったりとか、自分の生まれ持った性別のまま生きていく人が大多数です。

セクシャルマイノリティは、男性が男性を好きになったり、女性が女性を好きになったり、生まれてきたときの性別とは違う性別で歩みたいというアイデンティティを持っている少数派の人たちです。

性別は10人10色なので、女性らしくありたいときもあれば、男性らしくありたいこともあり、性に関して「自分は自分」という感性を持っている人たちを指します。

LGBTとはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字ですが、セクシャルマイノリティは必ずしもいずれかに当てはまるわけではないと考えている人もいます。

沖縄での講演会での出来事

―佐藤さんの活動内容を教えてください

NPO法人Startline.netを立ち上げて1年。LGBTに対して介護業界でどんな基本知識が必要かなどについて、介護系の会社や専門学校などに呼ばれて講演会を行っているほか、自主的な勉強会を月に1,2回開いています。あとはブログやHPでの情報発信です。また、オフ会と言う形で当事者や理解のある方、そして家族が集まれる場所を月に1度作っています。

TwitterのDMや団体専用のアドレス、HPから相談が寄せられてくることがあるので、その対応もしています。現在はNPOのメンバーが13人いるので、介護や社会福祉、リハビリなど、それぞれで得意な分野の相談を割り振っています。また、名古屋、福岡、大阪にもメンバーがいるので、住んでいる地域によって割り振ることもあります。

メンバーのおかげで年齢やセクシャリティ、得意分野など幅広い問い合わせにも対応できているのがStartline.netの強みです。

―講演会で全国を回られていますが、印象に残っていることはありますか

最初にした大きな講演は沖縄大学で、福祉や教育の道に進む学生向けのものでした。その時に、人生で初めてのカミングアウトをしてくれた学生がいたんです。140人ぐらいいる前で。

セクシャルマイノリティについてのグループワークなどをしてもらう中で、周囲とコミュニケーションを取りながら、「ここならカミングアウトしてもいい」と感じてくれたのかなと思います。

カミングアウトしやすい社会を作るというのが目標なので、そのことは印象に残っています。

セクシャルマイノリティが直面する介護の問題

―セクシャルマイノリティの方が直面する介護の問題には、どんなものがあるのでしょうか

セクシャルマイノリティで独身の方だと、身動きがとりやすいからと主介護者になるケースが多いです。カミングアウトを受け入れて関係がうまくいっていた親でも、認知症によってその記憶が失われてしまい、困ることがあります。

例えば認知症の親が施設の人に「娘を呼んで」と言っても、その“娘”がすでに男性として生きている場合には、施設の人は誰を呼んだらいいのかわかりません。

また、男性として生まれたものの女性として生きている方から、認知症の親について相談を受けたことがあります。以前は良好な関係を築いていたものの、アルツハイマー病を発症後に「あんたは男なんだから」と言うようになり、親子関係が破たんしそうだという内容です。

当事者として直面する問題は、セクシャリティによって変わってきます。

同性愛者の方は、現状の法制度では結婚できないので、パートナー関係についての壁が問題になります。よく受けるのは、パートナーの方が延命治療、看取りの同意書が書けないという相談です。

また、パートナーの存在を知らずに、家族から事故や入院のことを知らされないという問題もあります。

あとはサービス付高齢者住宅に、夫婦での入居はできるけれど、同性パートナーでは入居できなかったりなどです。

生まれてきた体の性と心の性が一致しないことを、以前は同一性障害と呼んでいましたが、最近では性別違和と呼びます。その場合でも、戸籍変更を望んでいたり、できる人ならいいのですが、病気などの理由で手術ができないと戸籍変更ができず、生まれ持った性別のまま、介護を受ける状態になることがあります。

例えば男性として生活したいのにできないと、その人らしさが失われてしまうのかなと。また、入浴介助や排せつ介助は、身体の性別がわかってしまうので、介護者側に混乱を招いてしまうかもしれません。

介護の相談について

―相談への対応を教えてください

担当のケアマネジャーに連絡を取り、ショートステイや施設入居の手続きをお願いするなど、具体的な解決策を提案しています。同性愛者の方の場合、パートナーではなく「仲の良い友人」として話を進めている方も多いので、秘密を守ってもらうようにも話をしています。

また、介護している方は介護にはどんな仕組みがあって、どうやったら使えるのかを理解されていないことが多いので、その部分のサポートが多いです。

受けた相談には「ありがとうございました」となるまで、つきあいたいと思っています。定期的に「最近どうですか?」とメールを送るのも、必要なケアです。

―セクシャルマイノリティの方が介護について相談したいときには、どこに相談すればいいのでしょうか?

最近はセクシャルマイノリティ関連の団体が多いので、地域や自分の属性に近い相談先を探して、問い合わせをしてみてください。

行政への相談は、自治体に理解があったとしても、理解度は職員によって様々だったりするので、まずは当事者団体に相談をしてつないでもらった方がいいと思います。

必要な支援とは

―セクシャルマイノリティの方にとって、どんな支援が必要でしょうか

まずは親との関係性が良好に保てるような社会を作るのが、僕たちの役割です。

介護専門家や事業所については、セクシャルマイノリティについての理解をしてもらいたいと思っています。

介護専門家などはいろんな人を見ているので、セクシャルマイノリティが必要なケアについてについて話をすると、すんなりと理解してもらえます。
ただ、「オネエ」とか「おかま」とか、人によっては傷つく可能性のある言葉をテレビの影響で使いがちの方がいて、人によっては直せない方もいます。

行政からの支援についてですが、いくつかの自治体では同性パートナーシップ制度が施行されています。賛否両論がある制度ですが、それがある自治体では区役所や区営の病院などの職員に、「セクシャルマイノリティが当たり前にいて、必要なサービスがあるのだ」という情報が一気に浸透したと感じています。

知っていてもらったことで、セクシャルマイノリティに必要なサービスについての議論が進むようにと期待しています。

▼同性パートナーシップ制度とは
同性カップルに対して、「結婚に相当するパートナー関係」と認める書類を自治体が発行する制度です。法的拘束力はないため、税金の配偶者控除などは受けられませんが、病院の面会や住居の契約時などにその書類を見せることで、事業者側に配慮を求めることができます。

―地域の方々に望む支援はありますか?

カミングアウトをしやすい環境です。地域の方がその人の事情を知っていれば、1人で倒れてしまったときなど、本人に代わって救援者に必要な情報を説明してもらえますし。

これはセクシャルマイノリティに限ったことではなく、様々なマイノリティに当てはまることだと思います。

―カミングアウトしやすい環境に、地域差はあると思いますか

東京などの主要都市なら、セクシャルマイノリティの当事者が近くにいたり、理解者がいたりします。地方に行くと当事者に会ったことがない方が多かったり、入ってくる情報が少なかったり、噂がすぐに広まってしまうためにカミングアウトしにくいといった現状があります。

「理解している」と発信してほしい

―安心介護の読者に伝えたいことはありますか?

セクシャルマイノリティの家族や身近な人に伝えたいことは、当事者にとって「理解されている」ということが一番の心の支えになるということです。「理解している」ということを、広く社会に伝えてもらえればいいなと思います。

もしセクシャルマイノリティの方が身近にいないと感じている人でも、周りにもカミングアウトをしていないだけの方がいるかもしれません。どこかで困っている人がいて、あなたが手を差し伸べてくれるのを待っている人がいることを知ってほしいです。

介護の現場では「尊厳」や「その人らしさ」をよく口にするのですが、自分だけの物差しで見てしまいがちです。女性の身体で生まれて男性として生きたいと考えている人が、必ずしも「男らしくなりたい」と考えているとは限りません。多様性というものについて、柔軟に考えるアンテナを持っていてもらえればなと思います。

セクシャルマイノリティの当事者に対しては、介護を身近に感じていない人が多いので、介護の基礎知識や自分の住んでいる地域のサービスを知っておいたほうがいいということです。親が急に倒れてすぐに制度を使いたくても、それがどんなものかわかっていないと大変なので。

介護は「命の幅を広げる仕事」

―佐藤さんにとって介護とはどんな仕事ですか?

入浴や排せつの介助は、主な仕事ではなくひとつの手段です。本人や家族の願いややりたいことを叶えるために、リハビリをがんばるといったことが介護の仕事。余命がわずかになった時に、やりたいことをかなえてあげる、生きがいや尊厳を守ってあげられる仕事は介護しかありません。

以前、胃ろうをつけているけれど、お寿司が大好きだったという方がいました。そこで「お寿司を食べる」という目標に向けて、リハビリや体調管理をしたことがあります。

リハビリの成果も出て誤嚥の兆候もなくなり、ネギトロやウニといった食べやすいお寿司を食べてもらいました。その4日後、その方は息を引き取ったんです。最期にお寿司を食べるのは、本人だけではなく家族の希望でした。両方の希望を最後に叶えてあげられたんです。

介護は残りの命の幅を広げてあげられる、人生をデザインしてあげられる仕事だと感じています。

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セクシャルマイノリティの当事者として、そして介護の仕事に誇りを持っている専門家として、お話をしてくれた佐藤さん。なかなか身近に感じることのない話題かもしれませんが、だからといって避けて通ってはいけないことなのだと、地域の一員として感じられました。