脳卒中後の片麻痺による歩行困難。ロボットスーツを使用した治験を開始

脳卒中後の片麻痺による歩行困難。ロボットスーツを使用した治験を開始

筑波大学は9月30日、脳卒中後の片麻痺により歩行機能が十分に回復できない患者を対象に、ロボットを使用した治験を開始したと発表しました。

ロボットスーツ「HAL」単脚モデルを使用

治験の内容は、通常の治療では十分な歩行能力(歩行速度)の回復が十分に得られない片麻痺患者に、CYBERDYNE株式会社のロボットスーツ「HAL」の単脚モデルを使用したサイバニック治療を5週間施行。従来の治療を受けたグループと治療効果やその継続を比較します。

治験は筑波大学附属病院など7施設で実施される予定です。

すでにHALの両脚モデルは、萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィーなどの難病患者への効果が確認されたことから、2015年11月に医療機器として認められ、中央社会保険医療協議会(中医協)により、保険適用が承認されています。

筑波大学はHALを使用した今までの研究結果を「従来の歩行能力回復の限界を超えて、更なる回復を期待させる結果を得ています」と、十分な手ごたえを示しています。

介護が必要になる疾患、第1位は脳卒中

脳卒中は介護が必要になる原因として最も多い疾患です。

2013年の国民生活基礎調査によると、介護が必要になった主な原因は「脳血管疾患」(17.2%)、「認知症」(16.4%)、「高齢による衰弱」(13.9%)、「骨折・転倒」(12.2%)となっています。男性だけで見ると、「脳血管疾患」が26.3%と特に高いようです。

筑波大学は脳卒中後の患者に、HALによるサイバニック治療が実現し、ロボット治療機器が医療現場で普及すれば、社会課題の解決にもなると期待しています。

ロボットを使用した治療研究はほかにも

被介護者の歩行をアシストするロボットの研究は、信州大学でも進められています。 

 

トヨタ自動車でも、高齢者の移動を支援するロボットの開発を進めており、「歩行練習」や「バランス練習」をアシストするロボットを来年度にも実用化する方針を明らかにしています。

また、2014年10月に佐賀大学医学部附属病院が全国初の「ロボットリハビリテーション外来」をスタート。HALだけではなくHondaアシスト、NESS200、ウォークエイドなどを活用したリハビリを行っています。磁気刺激療法やボツリヌス療法なども併用されているそうです。

佐賀大学医学部附属病院以降、ロボットを使用したリハビリテーション施設は、国内各地で開設されています。

こういったロボットは、無理矢理歩かせるのではなく、被介護者の「歩きたい」、「立ちたい」をアシストするものです。研究が進み、リハビリの効果を多くの人が実感できるようになるといいですね。

(アイキャッチ画像出典元:サイバーダイン株式会社)

※この記事は2016年10月時点の情報で作成しています。