3年に1度見直される介護保険制度ですが、2018年の改正に向けた議論が、20日の介護保険部会から本格的にはじまりました。
議論の中心にあるのは、消費税増税が見送られた中で、膨らみ続ける社会保障費用をいかに抑えるか。介護だけではなく、高齢者の医療費についても見直しが検討されていることもあり、高齢者や家族を介護している人々から大きな注目を集めています。
見直しが検討されている項目
見直しが検討されているのは主に以下の項目です。
介護保険
・軽度者(要介護1,2)のサービス縮小:「生活援助」、「福祉用具貸与」、段差の解消や手すりの設置などの「住宅改修費」を対象外へ ・自己負担2割の対象を拡大する
・保険料の支払い開始年齢の引き下げ ・高額介護サービス費(利用金額の負担が一定以上になった場合、上限を超えた分が払い戻される制度)の自己負担額引き上げ
医療保険
・75歳以上の窓口負担を1割→2割へ
サービスの縮小について話し合われた
20日の部会では検討項目のうち、「軽度者(要介護1,2)のサービス縮小」について話し合いがされました。
日本経済団体連合会や健康保険組合連合会などは、要介護3以上の人へサービス重点化は制度の持続のためにも必要だという点から見直しを支持しています。
見直しは慎重にすべきとの意見も多数
一方でサービス縮小に対して、慎重にすべきとの意見も多く上がっています。
慎重にすべき理由は、主に以下のことがあげられます。
介護の重度化が進む恐れ
訪問介護員が生活支援サービスを提供することについて、20日の部会内でも「自立支援や重度化予防の視点から、専門性が必要」という意見や、ゴミ屋敷では適切な身体介護が提供できないことから生活援助の必要性を訴える声が上がりました。
これに対しては、「軽度者への生活援助が重度化予防に役立っているというのであれば、そのエビデンスを示す必要があるのではないか」との意見も上がっています。
また、軽度者への福祉用具貸与が縮小されることについて、全国の福祉用具レンタル事業者がつくる「日本福祉用具供給協会」は、福祉用具が貸与されないことで ・転倒のリスクが上がる ・不活発な状態に陥って介護度が進む ・代わりに訪問介護が利用されるようになる といったことが懸念されるため、サービス縮小に反対しています。
7月19日には、ケアマネジャー約5万4000人分の署名とともに報告書を提出したそうです。
介護離職が増える
サービスが縮小されることで家族の負担が増えれば、介護離職が増える可能性があることから、労働組合も見直しに慎重な姿勢を示しています。
認知症の人の切り捨てにつながる
認知症関連団体からは、認知症は比較的要介護度が低く判定されることが多いことから、切り捨てにつながるという意見が出ています。
これらの検討項目については、年末に結論を出し、来年の通常国会での法改正が予定されています。
※こちらの記事は2016年7月時点の情報です。2018年4月の介護保険改定については、最新の情報をご確認ください。
(参考) >>(外部サイト)第60回社会保障審議会介護保険部会資料 >>(外部サイト)NHK「介護サービス見直し 厚生労働省の部会で慎重意見も」(7/20) >>(外部サイト)朝日新聞「介護保険の生活支援、サービス縮小へ議論本格化」(7/21) >>(外部サイト)東京新聞「厚労省、介護サービス縮小検討 要介護1、2の人向け生活援助など対象」(7/21) >>(外部サイト)メディ・ウォッチ「軽度者への生活援助、保険給付のあり方などめぐり激論続く―介護保険部会(1)」(7/20)