イライラ・感情を爆発させてしまうのは、わたしたちが未熟だからじゃない!
「怒鳴っちゃうんです」 「優しくできません」 「わたしがダメだから」
わたしの元に悩みを届けて下さる方の多くが、心身ともに疲れきっているはずなのに、「もっとがんばらなければいけいない!」とご自身を責めていらっしゃいます。
でも、ご自身を責める必要はありません。
イライラ・感情を爆発させてしまうのはわたしたちがダメだからでも、未熟だからでもありません。
イライラ・感情を爆発させる原因は、わたしたちの性格や性質が原因なのではありません。
介護を取り巻く過酷な環境が、原因なのです。
怒りは自分を守ってくれる味方?
わたしたちの体は、不安や恐怖を感じると「ストレスホルモン」や「怒りのホルモン」と呼ばれるノルアドレナリンが分泌されます。
「ストレスホルモン」、「怒りのホルモン」と聞くと悪いもののように思えますが、けしてそうではありません。
ノルアドレナリンが分泌されると、血圧や心拍数が上がって集中力、意欲が高まります。そして現状の把握、ストレス回避のための情報収集などの働きが高まるのです。
つまり、ノルアドレナリンはわたしたちが生きるために必要な活動と意欲を支えるための重要な働きをしてくれているのです。
そして、ノルアドレナリンの作用により、「危険だ!」と判断した場合、アドレナリンが分泌され、心身を守るための反応がおこります。これを「闘争・逃走反応 fight-or-flight response」といいます。
闘争・逃走反応が起こるとどうなるの?
闘争・逃走反応が起こると
① 攻撃する(闘う) ② 逃げる(逃走する) ③ 固まる(フリーズする) ④ 大きく見せる(威嚇する)
これらの行動をとって心身を守ろうとします。
怒りにまかせて「早く死んで!」と叫んでしまったとき、わたしたちの意思や本音とは関係なく、ストレスに対しての防衛反応が起こっているのです。
闘争・逃走反応は自分の身を守るための反応です。この反応自身は悪者ではありません。
しかし睡眠不足や長期的なストレス、過剰なストレスにさらされると、ノルアドレナリンの分泌が減ります。これにより、ストレスへの適切な対応ができなくなり、意欲が低下し、無気力傾向になるなど“うつ状態”に陥りやすくなります。
そしてストレスに過剰に反応し、ちょっとしたことで闘争・逃走反応が出やすくなるのです。
介護殺人、心中事件の多くが“普通の生活の中”で起こっている
この闘争・闘争反応は介護殺人、心中事件においても大きく影響しています。
事件の多くが「ごはんを食べこぼした」、「トイレを失敗した」など、 “いつものできごと”がきっかけとなって起きています。
そして、ようやくほっと一息ついた夜、将来への不安が増大して“突発的”、“衝動的”に事件は起こっているのです。
介護をしている人の4人に1人がうつ状態!
実際に、家族を介護されている方の4人に1人がうつ状態にあり、介護殺人、心中事件の加害者となった方の5割が不眠状態にあったとの報告があります。 >>介護で限界を感じたことが「ある」(73%)-限界への対策4つ
このデータからも、介護殺人、心中事件は、家族介護者が心身ともに追い詰められて起こっていることがわかります。
家族の介護に向き合うとき、介護を必要な人を優先することが多くなります。
しかし、自分を犠牲にした状態で続けることは、家族を守るどころか命を奪う結果へとつながっていきます。
過酷な現状にあるからこそ、自分をケアすることに意識する!
怒鳴ってしまうとき、家族に優しくできないときは自分で自分を大切にする、自分をケアすることを優先する時期です。
あなた自身のために、そしてあなたが守りたい家族のためにも、あなたがしあわせになることを優先し、選択していきませんか?
《執筆者:橋中今日子》 理学療法士・リハビリの専門家/心理カウンセラー
認知症の祖母、重度身体障害の母、知的障害の弟の3人を介護。シングル介護歴は21年になる。
家族関係や人間関係に悩んだことから、心理学、コーチング、コミュニケーションスキルを学ぶ。
「介護者メンタルケア協会」を設立し、家族を介護している方、医療・介護の現場で働く方が「心が軽くなる」よう、心身両面からサポートする活動をしている。
【イライラ怒鳴ってしまうときの対策(全4回)】
第3回では自分に必要なケアがわかる5つの質問を、第4回では、イライラ・感情爆発したときの感情のコントロール方法、具体的な対策についてお伝えします。