要介護1,2の福祉用具貸与も介護保険適用外へ?日本福祉用具供給協会が反対

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2018年度の介護保険改正に向けて財務省で検討されているのが、福祉用具貸与の給付を要介護3以上にすることです。

これが実現すると、要介護1,2の人は原則自己負担(一部補助)となります。

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過去2006年にも、介護ベッドと車いすの利用が、原則要介護2以上の認定を持つ高齢者へと制限されたことがあり、今回の法改正はそれに続くものです。しかし2006年の法改正後、原則要介護2以上と定められた車いすと介護ベッドに利用に関して、一定の条件を満たした場合に限り、特例として利用を認めている市区町村の自治体もあります。今回の法改正では、要介護3以下の高齢者に対してどのような措置を取っていくのかは、まだわかりません。 今回の法改正の一番の目的は、介護保険給付を抑えることが目的ですが、これに対して「逆効果だ」と声を上げているのが、一般社団法人日本福祉用具供給協会です。

なぜ、福祉用具貸与の給付を要介護3以上にすることが、逆効果になるのでしょうか? 同協会による、要介護2以下の高齢者500人を対象とした調査の報告書から、その理由を探ってみましょう。

介護費が増える2つの理由

日本福祉用具供給協会があげている理由は、主に2つあります。

代わりに訪問サービスが利用されるようになるから

車いすや歩行器、つえが使えなくなると、代わりに人の手を頼るようになります。

調査報告書によると、福祉用具貸与が自己負担になった場合、下記の項目で「介助を依頼する」と答えた人が多くなりました。

・掃除 ・洗濯 ・食事 ・入浴や洗面 ・通院 ・買い物

月3,000円の歩行器の代わりに1日20分の訪問介護を毎日受けると、介護費は月5万円近くになります。同協会は、最低でも年間1,370億円程度の介護費増加となると試算しています。

不活発な状態に陥り、要介護度が上がるから

同じ質問で「あきらめる」と答えた人が多かったのが、「散歩」、「飲食店」、「文化・娯楽施設」です。

また、福祉用具を利用することで「転倒の不安や困難さが軽減した」と答えた人は、9割以上となりました。

福祉用具貸与が無くなると、実際に転倒するリスクが高まるだけではなく、不安や不便さから引きこもりがちになり、結果として要介護度が上がるのではないかと同協会は訴えています。

また、「楽しい」と思う行動をあきらめてしまうことで、うつ状態に陥ったり、認知症の症状が進んだりすることも考えられます。

新たな問題を生む可能性も

福祉用具貸与が要介護3以上になると、介護費が増加するだけではなく、「介護人材不足が深刻化する」と日本福祉用具供給協会は訴えています。

現在、掃除や洗濯、買い物といった生活援助サービスを要介護3以上にすることも、厚生労働省にて議論されています。もしどちらも要介護3以上になってしまうと、介護家族の負担が増え、介護離職が増えてしまうかもしれません。

日本福祉用具供給協会では、財務省や厚生労働省に対して、事業の報告とともに、ケアマネジャー5万4,000人の署名を提出する予定だそうです。

2018年度の介護保険改正に向けて、さまざまな事柄が検討されていますが、要介護者本人だけではなく、介護家族にとっても不安のない改正になるといいですね。

※こちらの記事は2016年6月時点の情報です。2018年4月の介護保険改定では、軽度者への福祉用具貸与見直しは見送られています