障害者の“65歳の壁”対策へ 改正障害者総合支援法が成立

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5月25日、改正障害者総合支援法などが参議院本会議で可決され、成立しました。

今回の改正は高齢となった障害者本人やその家族に、深く影響を与えることになりそうです。介護にかかわる2つのポイントについてまとめたいと思います。

問題視されていた「高齢障害者の壁」

現在、9割の人が障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスを、負担ゼロで利用しています。しかし、65歳を過ぎると同等のサービスがある場合には介護保険サービスを優先利用するように決められていました。

介護保険サービスは原則1割負担ですので、利用者の金銭的負担が大きくなってしまいます。

昨年夏に厚生労働省が行った調査では、介護保険利用に移った人の平均負担額は7,183円/月。障害福祉サービス利用時の9倍という結果となりました。

金銭的負担が増えるだけではなく、福祉サービスの時間や受けられるリハビリの回数が減ることもあり、高齢障害者にとって介護保険サービスに切り替わる“65歳の壁”は大きな問題でした。

また、障害者の作業所などによる「きょうされん」の調査によると、介護保険サービスへ切り替わった人の21%が「サービスを打ち切られた」と答えたそうです。

地域による格差も

2007年、厚生労働省は全国の自治体に対し、「65歳以上の障害者が介護保険だけでは福祉サービスが十分に受けられない場合、障害福祉サービスも併せて受けられる」という通知を出しました。

しかし、具体的な対応は自治体に任されていたため、地域によってサービスに格差が生まれています。

ポイント1:切り替えで生じる金銭的な負担を軽減

今回の改正によって高齢になった低所得の障害者に対し、市町村は「高額障害福祉サービス費等給付費」を支給することで、金銭的な負担を和らげることとなりました。

低所得の障害者が金銭的負担を理由に、介護保険サービスの利用を控えないようにするのが目的です。

一見すると市区町村の負担が増えてしまうように思えますが、高齢の障害者が介護保険サービスを利用することで、自然と障害福祉サービスにかかる費用が減ることが見込まれています。

厚生労働省は、こういった理由から「この改正によって財政は膨らまない」と説明しています。

ポイント2:同じ事業者を利用できるように後押し

障害福祉サービスを利用してグループホームで長年暮らしている人や、同じヘルパーなどから支援を受けていた人が、介護保険サービスへの切り替えにより、住み慣れたグループホームを退所したり、ヘルパーなどを変えなくてはいけなかったりというケースがありました。

改正法では、障害福祉サービス事業所が介護保険事業所も兼ねられるよう、指定を後押しする仕組み作りも含まれています。

改正障害者総合支援法は、2018年4月から施行されます。

※こちらの記事は2016年5月時点の情報です

(参考) >>時事通信「改正障害者支援法が成立」(5/25) >>福祉新聞「障害者総合支援法改正案を国会に提出 ポイントを一覧で紹介」(3/7) >>毎日新聞「障害者総合支援法 厚労省が改正案 「65歳問題」救済策 介護の自己負担分支給」(2/20) NHK『ハートネット』(4/6放送分) >>NHKブログ「障害者に"65歳の壁" 実態明らかに」(2014/9/24)