子育て・介護・仕事の両立を望むダブルケアラー 内閣府の調査で実情が明らかに

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子育てをしながら介護をする「ダブルケア」。

いずれも精神的、体力的に負担が大きなものであるにもかかわらず、どこに相談したらいいのかわからなかったり、公的な介護・保育サービスが十分ではなかったりといった問題を抱えています。

ダブルケアはどれぐらいの人が直面しているのでしょうか。

4月28日に内閣府男女共同参画局が発表した報告書で、具体的な数字が明らかになりました。

少なくとも25万人が直面

2012年の就業構造基本調査で「ふだん介護をしている」と「ふだん育児をしている」の両方に回答した人の割合および及び国民生活基礎調査から推計すると、全国で少なくとも25万人がダブルケアに直面していることがわかりました。

「介護」の対象

要介護者との同居別居は問わない ・高齢者の介護以外の介護者も含まれている

「育児」の対象

・未就学児を育児している人

小学校に上がったら育児が終了するわけではありません。内閣府でも実際の人数はさらに多いものと考えているそうです。

インターネット調査も

内閣府が2月に行った、小学生以下の育児と介護の両方に直面している人1,004名を対象にしたインターネット調査の結果も、併せて発表されています。

この調査では、「孫の育児」(全体の約2割)、「祖父母の介護」(男性12.9%、女性21.7%)も含まれましたが、高齢者以外の介護は対象から外されました。

1,004 名のうち「自分の子(養子等を含む)の子育てをし、かつ親(義理の親)の介護を行っている」人は、666人(66.3%)でした。

ダブルケアの主な担い手

インターネット調査では「ダブルケアラー」と呼ばれる、ダブルケアの担い手の実態を探っています。

育児と介護の両方を「主に」担っているかどうかを聞いたところ、女性の2人に1人が「子育て・介護ともに主」と答えました。

男性も3人に1人が「子育て・介護ともに主」と答えていますが、4人に1人が「子育て・介護ともに主ではない」と答えています。

また、「子育てのみ主」、「介護のみ主」と答えた人も多く、家庭内で分担がされているケースもあるようです。

ダブルケア:画像1 - コピー (画像出典元:内閣府男女共同参画局 「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」(ポイント)p8

ダブルケアラーの8割が30・40代

ダブルケアラー(ダブルケアをしている人)の年齢構成を見ると、最も多かったのが40~44歳(27.1%)、続いて35~39歳(25.8%)、30~34歳(16.4%)という結果となっています。

男女別の年齢構成比

ダブルケア:画像2 - コピー (画像出典元:内閣府男女共同参画局 「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」(ポイント)p8

女性に偏る負担

ダブルケアラーを支援している人別に、支援の頻度を調べたところ、女性は男性ほど周囲からの手助けを得られていないこともわかりました。

「週に3、4日以上」配偶者から支援を受けていると答えた人の割合は、男性が70.7%だったのに対し、女性は37.4%にとどまっています。

ダブルケア:画像3 - コピー (画像出典元:内閣府男女共同参画局 「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」(ダブルケアを行う者の実態に関するインターネット・モニターによる調査の結果)p81

周囲の支援には「相談」も

支援の内容には「相談」も含まれています。配偶者の支援内容については、最も多かったのは「相談相手」で、男性63.2%、女性57.5%となっています。

続いて多かったのは、女性は「金銭的な援助」(40.9%)、男性は「自分の病気や怪我、休養など突発的な事態での支援」が34.3%でした。

介護・子育て・仕事の両立が求められるダブルケアラー

就業している人へ、ダブルケアに直面して業務量や労働時間はどう変わったかを聞いたところ、下記のような結果となりました。

男性

「増やした」または「変えずに済んだ」:59.9% 「減らしたが無職ではない」:16.1% 「無職になった」:2.6%

女性

「増やした」または「変えずに済んだ」:39.8% 「減らしたが無職ではない」:21.2% 「無職になった」:17.5%

ダブルケア:画像4 - コピー (画像出典元:内閣府男女共同参画局 「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」(ポイント)p11

業務量や労働時間を減らさずに済んだ理由

ダブルケアと仕事の両立ができた人の理由には、どんなものがあるのでしょうか。

男性

「家族(配偶者や親等)の支援が十分に得られたから」(47.3%) 「被介護者を病院や老人福祉施設等に入所・通所させることができたから」(31.6%) 「子どもを育児サービス(保育所・学童保育等)に預けることができたから」(23.8%)

女性

「子どもを育児サービス(保育所・学童保育等)に預けることができたから」(38.2%) 「被介護者を病院や老人福祉施設等に入所・通所させることができたから」(29.2%) 「子育てや介護との両立が可能な勤務条件(労働時間等)で働くことができたから」(28.1%)

「家族(配偶者や親等)の支援が十分に得られたから」と答えた女性は27.0%に留まっており、男性と比べて家族の支援を得られない女性が多いことが分かりました。

「子育てや介護との両立が可能な勤務条件(労働時間等)で働くことができたから」と答えた男性は18.8%に留まっています。

女性が家族の支援を十分に得られないのには、男性が介護や育児をサポートすることについて、「職場の理解が得にくい」、「相談しにくい職場環境」という背景があるのかもしれません。

業務量や労働時間を減らした理由

それでは業務量や労働時間を「減らした」、もしくは「増やしたかったが変えられなかった」と人の理由にはどんなものがあるのでしょうか。

男性

「被介護者を病院や老人福祉施設等に入所・通所させることができなかったから」(31.4%) 「勤め先の勤務条件(労働時間等)では、子育てや介護との両立が難しかったから」(26.3%) 「子育てや介護は自分自身が担当しなければならないと考えているから」(23.7%)

女性

「家族(配偶者や親等)の支援が十分に得られない(自分以外に子育て・介護を担う人がいない)から」(27.9%) 「子育てや介護は自分自身が担当しなければならないと考えているから」(25.7%) 「勤め先の勤務条件(労働時間等)では、子育てや介護との両立が難しかったから」(22.1%)

ダブルケアに直面しても「働き続けたい」

ダブルケアラーとなってからも仕事を続けている人に、今後の働き方について聞くと、「今後も同じ仕事(職種・職場)で働き続けたい」が65.0%で最も多く、続いて「より労働時間が短いなど、負担の軽い仕事(職種・職場)に変えたい」が21.5%、「より給与が高いなど経済的条件の良い仕事(職種・職場)に変えたい」が9.8%、「仕事を辞めたい」は3.7%で最も少ない結果となりました。

また、現在無職のダブルケアラーでも「機会があれば働きたい」と思っている人が、女性46.8%、男性15.4%、「労働時間が短いなど、負担の軽い仕事(職種・職場)であれば働きたい」が、女性40.9%、男性30.8%という結果となりました。

特に女性に、「働きたいのに働けない」という人が多いようです。

拡充してほしい支援策

ダブルケアと仕事の両立のため、どんな支援が望まれているのでしょうか(単数回答)。

男性

「保育施設の量的充実」(22.8%) 「育児・介護の費用負担の軽減」(19.2%) 「介護保険が利用できる介護サービスの量的拡充」(16.7%)

女性

「育児・介護の費用負担の軽減」(26.4%) 「保育施設の量的充実」(22.6%) 「介護保険が利用できる介護サービスの量的拡充」(12.3%)

勤務先に求める支援

「子育てのために一定期間休める仕組み」を求める声が最も多く、男性18.3%、女性18.4%という結果となりました(単数回答)。続いて多かったのは「特にない」となり、勤務先よりも行政の支援を望んでいることがわかります。

今回の調査でダブルケアラーの実態や、望んでいること、課題がある程度明らかになりました。この結果が、施策につながるといいですね。

(参考・画像出典元) >>(外部サイト)内閣府「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書」