【認知症の備えと避難】在宅介護中に災害にあったら?

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熊本を襲った大地震には、現地の安全と少しでも早い復興を祈らずにはいられません。

同時に「災害が起こったら避難時やその後の生活はどうなるのだろうか」と考えた、在宅介護者も多いのではないでしょうか。

今回は認知症などの人の熊本での避難状況と、備えと非難の心得をまとめたいと思います。

【熊本地震】足りない福祉避難所

災害時に自力での避難や情報収集が難しい人を「災害弱者」と呼びます。認知症の人や、寝たきりの人、自力での歩行が困難な人なども、災害弱者です。

こういった災害弱者のために、国では「福祉避難所」を指定するように自治体に呼び掛けています。こういった福祉避難所では、ポータブルトイレや手すりの設置などが設置されているほか、車いすでの移動にも配慮がされています。

被災地である熊本市では、開設されている指定福祉避難所は17ヵ所にとどまっています。福祉系私大の熊本学園大学が独自に福祉避難所を設置していますが、十分足りているとは言えません。

未開設の指定福祉避難所も

2012年に厚生労働省が行った調査によると、1ヵ所以上福祉避難所をしている市区町村は1,742市区町村のうち、981市区町村(56.3%)。半数以上が高齢者施設で、15%程度が障碍者施設という結果でした。

熊本市でも事前に176施設と福祉避難所を設ける協定を結んでいましたが、指定施設自体が被災していることやスタッフの人員が足りないことなどから、20日夜までに開設されたのは17施設にとどまっています。

>>参考:(外部サイト)産経新聞「認知症患者らどう守る 専用避難所設置進まず 福祉系大学が独自ケア」(4/22)

専門家や経験者からのアドバイス

安心介護内にも災害時の避難についての質問が投稿されています。その中から、専門家や経験者によるアドバイスをまとめてみました。

大事なものを持ち出せるようにする

何にも一番大事なのは、健康保険証類や薬情といった本人自身の重要な情報をすぐに持ち出せるようにしておくことではないでしょうか。 既往歴や現状の病気、服薬の情報は被介護者には一番大事と思います。助けが必要になったときにこれをすぐに出せるようにしておくことをまずやっておかれたらと思います。 (専門家事務員さんの回答) 介護のQ&A「地震対策」

また、「保険証の番号がわかるようにスマホで保存しておく」という声もありました。

地域に頼る

まずは、自分の身の安全確保します 次に家族です。 地域の情報を聞き、避難します。 1人で避難できない状態なら 消防団 地域の協力ですね (専門家野菜ジュースさんの回答) 介護のQ&A「地震対策」

ただし、これについては経験者の方からこんな声があがっています。

災害が起きて、避難する施設もネットワークができていないらしく、私の母は施設他の連携が普段よりお願いしていたので、即座にショートにいれてくださいましたが、お隣の方は施設がいっぱいで入れない、夜間のため連絡が取れないなどなどで、大変な苦労されておりました。(中略) 地方自治体にお願いしても即座に連絡もきません。 介護のQ&A「阪神大震災経験した者です。避難所での認知症患者はどうなるのでしょう。」

避難時には消防団などの地域の指示に従うのはもちろん大切です。それに加え、もしもに備えて普段からお世話になっている施設や近隣の人と話をして、連携を取っておくことが大切なようです。

経験者によるアドバイス

また、東日本大震災で被災され、その後認知症の親と同居するようになったという方からは、注意事項としてこんなことが書かれています。

あれから注意していることをメモしてみます。 1.6人家族なので、コメは常時20キロ買い置きして、順番に使ってます。 2.家の中の片付け。ライフラインはどこがダメになるかわからないので、水がでるなら、キッチンは大事な戦いの場。片付けないと動けないでは困るから、ものが落ちてこない、倒れないようにして動線確保できるように片付けてます。 3.ビニール袋はストックたっぷり。 浦安では上下水道がとまり、トイレの排水もできずに困ったとのこと。(介護中の義姉が苦労した)ビニール袋をトイレにいれて排泄できるようにストック準備です。 4.湯たんぽ。ガスコンロでお湯をわかせば、いざの暖房に。 5.保険証、介護認定などの書類をタブレット端末に画像で保存。 お薬手帳もなにも、大事なものを保存して、ネット上にも保管してます。 避難したとき、すぐに薬を出してもらえました。 6.下着類にフルネーム。 最後の確認で、身元がわかるように上下の下着にフルネームを書きます。 パンツ類は脱げやすいので、上に着る下着にも書いておきます。 7.薬のストックを1~2週間分。薬剤師からもすすめられました。 8.カセットコンロ ボンベをストック 煮炊きできて、暖をとれるし、明るいです。 避難所はホコリが多く、床も堅いから、高齢者は寝られません。 また、ひざが痛む姑は椅子がないと座れないです。和室の避難所では無理だと思いますので、風呂イスを複数買っておいて、ふだんは物を置く台にしておいてます。 マスクはいつも買い置きたっぷりです。 介護のQ&A「阪神大震災経験した者です。避難所での認知症患者はどうなるのでしょう。」

被災地から呼び寄せるには また、被災地から介護者の住む自治体に一時的に呼び寄せる場合、住民票の住所と違っていてもデイサービスなどの介護サービスが受けられます。

役所の介護保険課に行き、お住まいの地域包括や居宅のケアマネがいるところを教えてもらってください。住民票の住所が違っても介護サービスを利用することは可能です。私も実際雪の多いときのみ避寒に半年娘のところに来る利用者さんを半年ごと担当しています。 いくつか電話して親切に話を聞いてくれる方に事情を説明して良いアドバイスをもらってください。どこで介護を受けるにもケアマネジャーが必要になります。 (専門家春うららさんの回答) 介護のQ&A「今回の震災で両親が被災しました」

認知症の人や家族などへの避難支援ガイド

全国老人福祉施設協議会では、認知症の人や家族などへ向け、避難生活の支援ガイドを配布しています。

>>(外部サイト)「避難所でがんばっている 認知症の人・家族等への支援ガイド」

・避難スペースは隅や壁に向けて確保し、ざわつきや雑音のストレスから守る ・なじみの人と認知症の人が離れないようにする ・短時間でも見守りの交代をする ・ゆっくりと落ち着いた声で一つ一つ伝える ・認知症の人なりに理解できるように今の情報を話す ・飲食、排せつ、睡眠の確保やリズムの管理をする ・運動や体操を一緒にする

上記は書かれている内容のごく一部です。どんなことに備え、どんなことを心がけたらいいのかが具体的に書かれていますので、ぜひ一度目を通してみてください。

アイキャッチ画像出展元:全国老人福祉施設協議会