認知症の親の介護に疲れ、限界を感じています。親の介護との向き合い方について教えてください。

認知症の親の介護をどのようにとらえていけば良いのでしょうか。
質問

質問者親が認知症と診断されてから3年目になります。

最初は介護も大丈夫だと思っていたのですが、最近はかなり認知症が進行したようで目を離すことができなくなりました。家族はそれぞれ仕事があるため、結局は自分ひとりが面倒を見るより他ありません。先のことを考えてしまい、眠れない日もあります。

 

大切な親だけに、見放すなどしたくはないのですが、負担が重すぎて辛いです。日に日に不安が募っていき、自分の体調もすぐれません。親の介護をするのは当たり前と思ってきたのですが、心が弱くなったのでしょうか。アドバイスをお願いいたします。

 

専門家認知症は年月が経つにつれて症状が進行していくため、終始目が離せなくなるなど徐々に介護が大変になってきます。そのため、将来に対する不安や介護疲れを強く感じる人も多いです。 そのままにしておくと、介護している方もされている方も共倒れになってしまう危険があります。

介護疲れを蓄積しないためには、早期に対処をしていくことが必要です。 この記事では介護疲れに早期に気付き、対処できるようにするためのポイントをお伝えしていきます。

認知症介護への考え方

認知症介護への考え方


認知症介護は先が見えず、また日々思いがけない出来事が起こるため、介護する人の心が休まる暇がありません。疲れてしまわないようにするためには、どのような考え方をすれば良いのでしょうか。

症状は変わる

腫瘍など明確な原因がある場合をのぞき、認知症の症状を根本的に解決することは難しいとされています。

ただ、認知症の症状の多くは「長くは続かない」のが普通で、一般的には半年〜1年ほどで「別の症状に変わっていく」という特徴があります。

また認知症の人は老化の速度が進む傾向があり、体力的にも低下していきます。

いつまでも同じ状態が続くのでないことを知り、その時期を乗り切ることを考えていきましょう。

認知症の症状は理解ができる

認知症の言動には一定の特徴があります。

人によって多少のバリエーションはありますが、認知症の症状に関する書籍や他の人の例などを学べば、目の前で起きていることについても納得できるようになるかもしれません。

認知症の症状を理解し「思い当たる」ことで気が楽になり、家族の言動についても受け止めやすくなります。

冷静な目で見られれば、気が立ったままで対応するようなことがなくなります。対応の仕方を覚えれば、相手を上手に落ち着かせるのに役立ちます。

必ず終わりはある

今まさに介護のただ中にいれば、永遠にこの状態が続くような気持ちにとらわれます。

しかし、時間はとどまることはありません。わずかずつでも、前進しています。

先が見えないようでも、必ず終わりはやってきます。

将来を見すえれば、「今はこの役割がやるべきこと」というように考えられるようになるでしょう。

認知症介護疲れの兆候に注意

認知症介護疲れの兆候に注意


どのような強靭な精神力の持ち主であっても、日々の生活の中で知らず知らずのうちに心や身体が疲れていることがあります。自分の中からのSOSを聞き逃さないために、介護疲れの兆候について見ておきましょう。

眠れない・食べられない

食べることと眠ることは、生き物として活力を保つための最低条件です。

毎晩疲れているはずなのに、ベッドに入っても眠れない。眠りが浅く、何度も目が覚める。

そうしたことが続くようならば、一度医師に相談してみる必要があります。

寝不足のまま介護をするのは、介護される人にとっても危険です。

同じく、食欲不振が続いたり何を食べても味がしなかったりといった状態に気付いたときにも、心身が悲鳴を上げていると考えられます。

悲観的になりやすい・落ち込みやすい

自分ではそのようなつもりでなくても、誰かに「最近笑顔が出ないね」と言われたら要注意です。

物事を前向きに考えられなくなり、何でも物事を悪いように受け取ってしまう。人と会いたくなくなり、会話が億劫に感じられる。わずかなことで自分を責めて、落ち込んでしまう。

そうした傾向も介護疲れからくる、精神的な症状の表れです。

不安感・焦燥感にとらわれる

介護の疲れがひどくなってくると、さらに心が不安定になっていきます。

何でもないことがきっかけとなり、不安でどうしようもなく混乱したり、休む時間が取れたのに何かしなければと焦燥感に襲われたりするケースもあります。

悲しいわけでもないのに急に涙が出て、感情がコントロールできなくなるというのは、心身の疲れが限界に達しているというサインかもしれません。

認知症介護で疲れ果ててしまう前に

認知症介護で疲れ果ててしまう前に


介護で疲れ果てた家族の悲しいニュースを、最近良く耳にします。しかしそれは特別な人の話ではありません。介護をしている人ならば、誰にでも起こり得ることなのです。そのような結果を引き起こさないためにも、あらゆる方法で認知症介護の疲れを回避していかなければなりません。

体験談を聞く

孤独感や孤立感は、心の疲れを増大させます。

同じ介護をしている仲間の話を聞けば、辛いのが自分だけではないと思えるようになります。

誰もが同じ立場で、弱音を吐きたいのだということを知れば、きっと落ち着けます。

孤独な気持ちがなくなると同時に、認知症の人を介護する上でのアイデアやヒントがもらえる場となるでしょう。

相談者を確保する

介護を一人で背負ってしまうと、心身ともに疲労するのは当然です。

相談者を確保して辛さを打ち明け、状況を改善していくためのアドバイスをもらいましょう。

気持ちを聞いてくれる家族や友人がいれば、何らかの手助けも得られます。

またケアマネジャーを始めとする専門家や介護相談窓口も、遠慮せずに活用していくことが大切です。

例えば経済的な負担について悩んでいるのであれば、市町村の助成が受けられないかといった相談をしてみると良いでしょう。

自治体にもよりますが、一定の収入の枠の家庭に対して紙おむつ代の助成を実施しているなどがあります。

自分の悩みを具体的に口に出すことで、解決方法が導かれる可能性があります。

サービスの利用の見直し・検討をする

介護サービスは一度決めたらそれで終わりというものではありません。

こまめにサービス内容を見直してもらい、少しでも楽になる方法を模索していきましょう。

サービスを利用して介護者が楽になることに、罪悪感をもつ必要はありません。疲れているのであれば、介護から少し離れる時間はとても大切です。

困っている言動を改善できる解決策として使えるサービスがあれば、どんどんそれに頼ってください。

介護でもっとも不幸なのは、介護する人とされる人の共倒れです。

無理をせず、ショートステイの利用や施設への入所を、検討する必要があります。

疲れを自覚することが重要

疲れを自覚することが重要


介護する人は知らず知らずのうちに我慢しています。出かけたいのに出かけられない、休みたいのに目を離せない。思いがけない力で抵抗されることにも耐えなければなりません。

介護の疲れは毎日蓄積していきます。自分の内なる声に耳を傾け、疲れが限度を超えないように先回りして対処していくことが大切です。


「自分は疲れているのだ」というのを自覚できるのは、自分だけです。取り返しがつかない状態になる前に、周囲に助けを求め、疲れを軽減させる方法を探していきましょう。

 

監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。