高齢で一人暮らしをする母が心配。緊急通報システムの内容や種類、費用が知りたいです。

緊急通報システムを利用することはできますか?安く利用できる方法があれば教えてください。

質問

質問者実家で80代の母親が一人暮らしをしています。まだしっかりしてはいますが、年齢が年齢だけに、転倒や急病などが心配です。よく見守りサービスや緊急通報システムなどの広告を目にしますが、介護保険などで利用できるものなのでしょうか。長く使うことになるかもしれないため、できれば費用負担を押さえたいと思っています。もちろん母親の安全には変えられないとも考えており、どのような方法があるのか知りたいです。

専門家

高齢者の一人暮らしは不測の事態が起きたときの対応が心配ですね。高齢者が安心して一人暮らしをするための見守りサービスとして、緊急通報システムの活用は有効です。緊急通報システムはセンサーにより日常生活を見守ったり、ボタンを押すだけで登録先などに連絡できたりするなど、システムの種類によっていろいろな機能があります。民間サービスだけではなく、役所が高齢者サービスとして実施しているものもあり、その内容や金額などはさまざまです。利用される方の状態や、それぞれの状況にあったものを選ぶと良いでしょう。

ここでは緊急通報システムについての基本的な知識や、種類、費用になどについてお答えしていきます。ぜひ、緊急通報システムをご検討される際の参考にしてください。

緊急通報システムとは

緊急通報システムとは

若い世代が都会に出て家を構え、故郷には親だけが残されるという家族が多数を占めている今、一人暮らしの高齢者をどう見守るのかが大きな課題となっています。それをテクノロジーの力で解決しようとするのが、緊急通報システムです。緊急通報システムの基礎知識から見ていきましょう。

高齢者の見守りサービス

緊急通報システムとは、各家庭に設置され高齢者や身体の不自由な人が、急病やケガなどで緊急事態に陥ったとき通報できるシステムです。

過去には近隣に緊急を告げるための非常ベルが取り付けられた時代もありますが、人間関係が薄れるなどの社会変化とテクノロジーの進化により、緊急通報システムが登場しました。

現在では多くの市町村が、高齢者への福祉対策として導入しています。

また公的な福祉サービスが使えない人や、よりきめ細かなサービスを受けたい人のために、民間企業も同様のシステムを提供しています。

緊急通報システム専門の事業者だけではなく、警備保障業者、タクシー業者など、さまざまな分野の業界からの参入が見られます。

緊急通報システムは福祉サービスの一環ですが、介護保険適用外です。このため利用料金が発生する場合には、全額利用者負担となります。

緊急通報システムの利用

緊急通報システムの利用については、自治体による公的なサービスの場合、主にエリア内で独居する65歳以上の方が対象となります。

自治体によっては、病弱な高齢者のみの世帯なども対象とされる場合もあるようです。

緊急通報システムは1980年代から各地域で設置が開始され、2000年頃には全国で8割の自治体が導入をしています。 民間業者を利用する場合では、必要があれば誰でも加入が可能です。

ただ現在のところ、民間のサービスの利用はごく一部に限られており、公的サービスを選ぶ人が多くなっています。

利用料金

自治体が提供する公的サービスの緊急通報システムでは、利用料金が原則無料とされています。

ただ自治体によっては、所得に応じた自己負担を適用しているところもあります。非課税世帯のみ無料とし、課税世帯では課税額に応じて負担金を徴収する制度をとるところも見られます。

民間企業の緊急通報システムサービスは、扱っている企業やそのプラン内容によって大きな幅があります。

料金の支払い方法は月定額制となっており、安いプランでは数千円ですが、セキュリティまで含める場合には機器設置料などの初期費用が高額になります。

緊急通報システムの種類

緊急通報システムの種類

実際の緊急通報システムはどのような形状なのでしょうか。しくみや種類を見ていきましょう。

利用者の状態に合わせて選べるタイプ

緊急通報システムを構成する機器は、通報発信ができる無線子機とその信号をキャッチして電話機に送信する親機、さらに緊急発信を自動的に通報する電話機から構成されます。

このタイプではインターネット回線を使うわけではないため、高齢者家庭でも普通回線の固定電話があれば対応が可能です。

無線子機となるものには、いつでも携帯ができるペンダント型や手元ボタン型、設置タイプがあります。

民間企業の緊急通信システムの中には、インターネット回線を利用するサービスもあります。その場合には、室内にセンサーを設置し、一定時間人の動きがない場合にはメール送信をして家族に知らせるといったタイプのプランもあります。

自治体と民間サービス

自治体の提供する緊急通報システムと、民間企業のサービスとの大きな違いは、料金負担です。

公的サービスの場合は無料か、負担があっても月1,000円程度に抑えられています。それに対して、民間のサービスではプランの内容によって、月々の料金が変わってきます。

一方で公的サービスの場合、利用内容は限られており、緊急時に決められた場所に通知されるにとどまります。民間企業の提供するサービス内容は、その家庭に合わせて細かく選べるという利点があります。

また自治体では決められた対象範囲の人しか利用できませんが、民間サービスならば年齢に関係なく、誰もが利用可能です。

緊急通報システムのしくみ

自治体の緊急通報サービスのしくみでは、消防署や民間の事業者に直接つながる形が多く見られます。

また利用者が決めた3名程度の協力者へ通報されるという選択も見られますが、近くに近親者がいない場合には協力を得るのが困難です。

最近では民間事業者や在宅介護支援センターへの委託が増えており、緊急通報があった場合には、まずそうした機関の人間が駆け付けるという方式を採用している自治体もあります。

緊急通報システム利用の留意点

緊急通報システム利用の留意点

高齢の親が一人で暮らす人にとって、緊急通報システムの利用は大きな安心をもたらします。緊急通報システムの利用を検討する上で、留意しておきたい点を見ておきましょう。

自治体では条件に制限がある

自治体が提供する緊急通報システムについては、利用できる条件が決められています。

基本的に公的サービスは、同居家族がいると使えません。朝早くから夜遅くまで家族が出かけている家庭でも、昼間の見守りに利用することはできません。

自治体によっては独居のみと定められており、病弱な高齢者だけの家庭であっても対象外となっている場合があります。

民間サービスは柔軟な対応可能

民間企業の提供する緊急通報システムでは、必要に応じて柔軟な対応をしてもらえます。

プランによっては病気やケガなどの緊急時以外の利用でも可能で、どこに連絡をすれば良いのかわからないといった内容にも対応します。

例えば救急車は呼ぶ必要はないが、身内やヘルパーさんにすぐに連絡したいというときや、具合が悪いときの健康医療の相談など、緊急性が低いケースであっても頼ることができます。

孤独感を募らせて気持ち的に追い詰められているときの、相談に乗ってもらうといった活用に対応するサービスもあります。

民間サービスは高額化する場合もある

公的なサービスよりもきめ細かなニーズに対応でいるのが、民間サービスの良い点ですが、一方で利用料が高額化する可能性もあります。

契約する企業にもよりますが、料金の一例としては機器代金が7~10万円、設置費用15,000円前後、月会費2,000~3,000円といったところが料金相場です。

月額料金のほか、1回あたりの警備駆け付けに8,000円程度の料金が発生する企業もあります。

一概には言えませんが、警備会社の場合にはホームセキュリティのサービス込みとなるケースもあるため、他業種よりも高額化しやすい傾向が見られます。

個人の事情に合わせた選択が大切

個人の事情に合わせた選択が大切

家族だけではカバーしきれない緊急時の不安について、有効策となるのが緊急通報システムです。今ではほとんどの市町村が何らかのサービスを実施しています。まずは高齢者が住んでいるエリアの、公的なサービスについて調べてみることをおすすめします。

条件が合わなかったり、サービス内容に不足を感じたりするときには、民間企業の利用を検討すると良いでしょう。各社がさまざまなプランを提供しており、料金体系もそれぞれです。

家庭や個人の事情にマッチしたサービスを、上手に選ぶようにしたいものです。

※この記事は2020年1月時点の情報で作成しています。

 

監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。