高齢者本人の状態や環境によっては、在宅での介護が難しい場合があります。介護者が身体的・精神的に限界を迎えたり介護離職をしたりする前に、介護施設への入居を検討してみてはいかがでしょうか。検討時に知っておきたい情報をまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
介護施設とは
介護施設とは、介護サービスや生活支援を受けながら暮らす施設のことです。様々な施設があるので、選ぶのは難しいかもしれません。
介護施設に入居させることに罪悪感があるという方もいることでしょう。しかし、介護者が倒れてしまったり仕事を続けられなくなったりしては、要介護者を守れません。
在宅介護が長くなると、介護者も年を取っていきます。無理をせずに、柔軟に介護施設への入居を検討に入れるようにしましょう。
介護施設のメリット・デメリット
介護施設に入居するメリットとデメリットには、次のようなものがあります。
メリット
- 介護のプロが近くにいるので安心
- 手すりの設置など高齢者に配慮された環境で生活できる
- 介護家族の負担が減る
- 他の利用者と交流できる
- 要介護者と介護家族が距離を置くことで、良好な関係を築くことができる
デメリット
- 経済的な負担が増える
- 住み慣れた自宅を離れなくてはいけない
介護保険施設の種類
高齢者向けの介護施設には、介護保険施設というものがあります。特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設(介護療養病床)、介護医療院の4種類があり、人気の高い施設です。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
《利用対象者》原則として要介護3以上で、常時介護が必要な方
常に介護が必要な方が暮らす施設です。ターミナルや看取りにも対応しており、終の棲家として利用する方も少なくはありません。
老人保健施設(老健)
《利用対象者》原則として要介護1以上で、在宅復帰を目指している病状が安定期の方
在宅復帰や自立支援を目的とした施設です。医療や看護のサポート体制が充実しているため、医療ニーズの高い方も安心して入所することができます。“終の棲家”ではなく、自宅に戻るためのリハビリ施設です。リハビリが必要ないと判断されると退所となります。
介護療養型医療施設(介護療養病床)
《利用対象者》原則として要介護1以上で、長期療養が必要な病状が安定期の方
病状は安定しているけれど、医療的ケアが必要な長期療養者のための施設です。すでに廃止が決定しています。
介護医療院
《利用対象者》原則として要介護1以上で、長期療養が必要な病状が安定期の方
廃止が決定している介護療養型医療施設(介護療養病床)の受け皿となる施設です。長く暮らす人が多いので、長期療養の場そして生活の場であることが重視されています。
介護保険施設の特徴
介護保健施設では、利用者の所得や貯蓄額に応じて居住費と食費が軽減される制度が利用できます。費用が比較的安いのにサービス内容が充実しているため人気が高く、すぐに入居ができずに待機期間が長くなることも少なくはありません。
その他の施設
続いて介護保険施設以外の介護施設を確認しておきましょう。
有料老人ホーム
《利用対象者》タイプにより様々。60歳以上の自立から要介護5まで
有料老人ホームには3つの種類があります。介護は必要ないけれど一人暮らしが不安な方が入居する「健康型」、外部の在宅介護サービスを利用して暮らす「住宅型」、施設の職員から介護サービスを受けられる「介護付」です。 施設数が多いので比較的簡単に入居できますが、月々の利用料金や入居時の初期費用が高額になることがあります。
>>有料老人ホームを探したい!相談先や選び方のポイントを解説
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
《利用対象者》要支援2、要介護1~5の認定を受けていて、認知症と診断されている方
認知症の高齢者が介護サービスや生活支援を受けながら、家庭に近い環境で共同生活を送る施設です。介護職員が24時間サポートし、利用者が家事を分担したり、スタッフと買い物に行ったりと、持っている能力を生かして日常生活を送ることで、認知症の症状の改善や進行予防、認知機能の維持を目指します。
ケアハウス(軽費老人ホームC型)
《利用対象者》身体状況などの理由で独立した生活に不安がある方。
家族の援助が受けられない方などが対象です。自立型は年齢が60歳以上の方、夫婦で入居する場合にはどちらかが60歳以上なら入居可能です。介護型の場合には、要支援1・2、要介護1~5の認定を受けている方が利用できます。 自治体の助成が受けられるので、比較的少ない経済的負担で利用できる施設です。3食の食事が提供され、利用者は自由に生活できます。
どんな介護サービスを受けられる?
これらの介護施設での介護サービスは主に2通りあります。1つ目は、施設の職員から介護を受けるサービスです。グループホームでは認知症対応型共同生活介護サービス、特定施設だと認定された施設では特定施設入居者生活介護サービスとなります。介護保険が適用されるサービスで、認知症対応型共同生活介護は1日ごと、特定施設入居者生活介護はひと月ごとに一定の金額を支払い、介護サービスを受けます。特定施設には介護付有料老人ホームや一部のサービス付き高齢者住宅、ケアハウス(経費老人ホームC型)などがあります。
>>特定施設入居者生活介護とは?介護付有料老人ホームなどで提供される介護保険サービス
2つ目は、外部のケアマネジャーや介護サービス事業者と契約をして、必要な分だけの介護サービスを受ける方法です。住宅型有料老人ホームなどが、このタイプです。
高齢者向け住宅という選択肢も
介護施設ではありませんが、高齢者向けに配慮された住宅もあります。「介護施設はまだ早いけど、一人暮らしや高齢者だけの生活では不安…」「住み慣れた家では段差が多くて心配」「自立した生活を続けさせてあげたい」という方は、こちらも検討の参考にしてください。
高齢者向け住まいを探したい!種類と選び方・探し方のポイント - 介護の専門家に無料で相談「安心介護」介護の基礎知識
サービス付き高齢者向け住宅
《利用対象者》原則60歳以上の方
初期費用:敷金がかかる(入居一時金がかかるケースもある)
月額料金:見守りなどのサービスがあるため周辺の家賃相場よりも割高
サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者向けの賃貸住宅です。「一般型」と「介護型」の2つの種類があり、介護付有料老人ホームに該当する「介護型」では、「特定施設入居者生活介護」サービスを受けることができます。
グループリビング
《利用対象者》一般的に60歳以上で共同生活ができる方
初期費用:0円~数十万円の入居一時金
月額料金: 10~15万円(施設によって異なる)
グループリビングとは、高齢者向けのシェアハウスのような住まいです。住民同士で植物の水やりや戸締りの点検など、緩やかな役割を持ちつつ暮らす点がグループリビングの特徴です。制度化されていないため、入居や退去の条件、サービス内容、住まいのルール、費用、設備や人員配置、地域とのかかわり方などは、それぞれの住まいによって異なります。
シニア向け分譲住宅
《利用対象者》年齢制限がなく現役世代でも購入できるところもあり、物件ごとに異なる
初期費用:マンションの購入費用がかかる。共用スペースが広いこともあり、近隣の分譲マンションよりも高いことが多い
月額料金: 管理費用や修繕積立費がかかる
生活の支援や食事などのサービスを受けながら老後の生活を楽しみたいという比較的元気な中高年に選ばれることが多い住まいです。賃貸ではなく所有権がある分譲マンションですので、売却や相続もでき、資産価値のある老後の住まいだといえます。
その他の高齢者向け住宅
その他にも、都道府県や市町村が運営している高齢者向け住宅や都道府県の認定を受けた民間企業やNPO団体、UR都市機構などの住宅供給公社が運営をしている高齢者向け優良賃貸住宅があります。
また、上記はいずれも「契約」をして入居する住まいですが、市町村の「措置」によって入居が決定する養護老人ホームがあります。身体的・精神的・経済的・環境的などの理由から在宅での生活が難しい方が対象の施設です。
施設に入れない場合にはどうする?
希望にあった介護施設を見つけても、すぐに入居できるとは限りません。待機期間中にはどのように過ごせばいいのでしょうか。
デイサービスやショートステイの利用を
待機期間中に在宅で過ごす場合には、高齢者本人にも家族にも無理がないように、施設で日中を過ごす通所介護(デイサービス)などの利用や、ショートステイなどの短期間の宿泊サービスを利用しましょう。
詳細はケアマネジャーや地域包括支援センターにご相談ください。
他の施設サービスを一時的に利用する
待機期間中に自宅で生活するのが難しい場合には、待機期間中の介護施設への入居を考える必要があります。
地域によって差はありますが、サービス付き高齢者住宅や介護付有料老人ホームは比較的入居しやすい傾向があります。介護老人保健施設、グループホームなどの介護施設を利用してもいいでしょう。
まとめ
介護施設には、比較的費用を安く抑えられる介護保険施設など、様々な種類があります。また、高齢者向け住宅もあり、幅広い選択肢の中から選ぶことができます。それぞれの特徴を理解して、介護施設に入居するのか、それとも在宅生活を続けるのか、または高齢者向け住宅を探すのかを検討してください。
※この記事は2020年2月時点の情報で作成しています。
訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。