看取りを前提として病院への入院や施設への入所は可能か

看取りを前提としての入院や施設入所はできますか。

在宅介護を続け、看取りも自宅で・・・と思っていても本人の状況や家族の状況によっては自宅での看取りが難しくなるというケースも往々にしてあります。 自宅での看取りが難しくなった場合には、病院への入院や施設への入所を検討するかと思いますが、病院や施設は看取りを前提として受け入れをしてくれるのでしょうか。 今回は、看取りを前提として病院への入院や施設へ入所することは可能かどうかについてお伝えします。

 

看取りを前提として病院や施設に入る事は可能か?

看取り前提での入院や施設入所は可能か

病院や施設に看取りを前提として入れるかどうかという結論は、「病院や施設による」というところになります。

どういうことなのか、以下で詳しくご紹介します。

病院での看取りを希望する場合

病院での看取りを希望する場合

病院の場合、療養病棟や緩和ケア病棟で看取りのためのケアを入院をして受けることができます。ですが、この場合がんや後天性免疫不全(HIV)といった病気の方が対象となります。 病院で看取りを希望する場合、いったん自宅に戻ってしまうと治療をせずに看取りだけのために入院をするということは困難を極めると考えられます。病院はそもそも医療を受けるための施設ですので、医療を受けないのであれば病院へ入院するということは難しいでしょう。また、今まで入院や治療を受けたことがないのにいきなり看取りだけ受け入れを希望するということは難しく、病院側においてもリスクが高く受け入れにくいと言えます。

また、看取り時期に延命治療をするかしないかの判断も必要になってきます。

後悔をしないため、その判断もした上でどこで看取るのが最良なのか考えると良いでしょう。

「延命治療」とは

人生の終末期を迎え、“看取り”を考えるきっかけとなるのが、 「食事が十分にできなくなる」という段階です。

【延命治療の方法】

口から食事をとることが困難な方には、胃と体外をカテーテルでつなぎ、直接胃から栄養を摂取できるようにする「胃ろう」や静脈にカテーテルを通して栄養を送る「IVH」などの方法で、 栄養を補給します。

ただし、口からの食事ができるようになるまでの処置ではなく、 命を伸ばすためにこういった処置をすることに疑問を感じている方もいます。

中には積極的に延命処置拒否の意思を示すために、日本尊厳死協会の「尊厳死の宣言書」(リビング・ウィル)に登録されている方もいるようです。

準備や手順

病院に入院することができた場合、どのように看取りまでの手順を踏めばよいでしょうか。

まずは、入院できるとなったら入院のための準備を行います。看取りのための入院となり、人生最期の場となります。家族としてはいろいろと本人の好きなものを持っていきたいと思われるかもしれませんが、病院は外からの持ち込みを禁じているところがほとんどです。そのため、持ち込めるのは必要最低限の物のみです。食べ物の持ち込みもできませんし、ぬいぐるみなどの布製品、水分を含むものや植物なども衛生的な観点から不可能としています。家族の写真やお気に入りの時計など本人がどうしても持っていきたいというものを数点持っていく程度と考えてください。事前に病院に持ち込んでいい物などの確認をしておきましょう。

荷物をまとめたら病院へ行き、入院の手続きをします。その後は病院側の指示に従って手続きをし、入院をするという流れになります。

その後は家族もお見舞いへ行きながら本人の看取りケアを行います。身体的なケアなどは看護師や介護士が中心になって行うものの、看取りのケアの中心はいつでもどこであっても家族です。病院に入院したから終わり、ということにならず在宅で看取りをしてきた時と同じように積極的に来院されるようにしましょう。

施設での看取りを希望する場合

施設での看取りを希望する場合

回復の見込みがなく看取りに向けた介護をした場合、死亡日から30日前までを上限に加算される、「看取り介護加算」が2006年から創設されました。

これによって介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)で看取りを行うところが増えました。

介護施設では、施設ごとに看取り期にできることを掲げています。例えば、風邪をひいたときには風邪薬の投薬をしたり、抗生剤の点滴をしたりということができます。また、病院よりも持ち物などの規定が緩いため本人の好きな食べ物を持ち込めたり、身に着けていたものを持ち込めたりすることもあります。病院よりも制限が少なく最期に向かっていけることが病院よりもメリットであるのではないでしょうか。

また、しっかりと研修を受けた介護職員がケアをしてくれるので家族としても安心して看取りのケアを任せることができるかもしれません。ですが、介護施設はそもそも待機している方が多いのが現状です。特に超高齢化社会となっている昨今では、介護施設への入所待ちの高齢者が増えています。そのため、看取りを希望し、すぐに介護施設へ入所できるという可能性は少なく、何カ月あるいは何年も入所するために待たなければならないという場合もあります。

>>高齢者向け介護施設を探したい!種類と選び方・探し方のポイント

準備や手順

まず施設で看取りをと考えたら、介護施設へ入所の申請を行いましょう。介護施設へ入所を打診するということがはじめてでしたら1件だけでも良いですし、複数の施設をあたるというのも良いでしょう。もしも、過去にショートステイなどで利用したことのある施設がある場合にはそちらに打診をされることをおすすめします。一度利用したことのある方は、どんな方かをスタッフが分かっていることなどから順番が早まる可能性もゼロではありません。

介護施設が決まったら、入所の準備を進めます。介護施設への入所の際に最も大事なのが、最期の対応です。介護施設は医療を提供する機関ではありません。ですので、自宅で看取る時と同様に自然の摂理に任せてお看取りをするという形をとります。しかし、本人がまだ医療処置を受けたい、あるいは、少しでも延命をしたいと希望した場合には医療機関へ搬送したり、延命のために処置を受けることになります。施設で最期を迎えるという方向性で本人あるいは家族も了承できるのかということをもう一度家族で話し合う必要があります。介護施設への入所は決まったが最期についてまだ、解決できないという場合には施設の職員も相談にのってくれますので、施設の方に相談をされても良いでしょう。

さらに、病院よりも自宅に近い形で看取りをすることができます。宗教上などの理由で看取りの際に希望することがあれば施設の職員に伝えておくのも良いでしょう。

施設の職員も看取りについて十分に勉強されています。ですので、最期の時が近づいたときにおける症状やその後についても理解できている方が多いです。

介護職員と密に連携をとり、最期の時をなるべく本人のそばで過ごせるように関わっていけるとよいでしょう。

自宅での看取りを希望する場合

自宅での看取りを希望する場合

厚生労働省が行ったとある調査によると、国民の約6割が自宅で療養をしたいと考えており、今や、自宅での療養は決して珍しいことではなく、自宅での看取りも今後増えてくることが予想されます。また、在宅療養を支援する病院は年々増加傾向にあり、病院で看取りを考えるよりも自宅で看取りを希望した場合の方が医療的な支援を受けながら看取りができる可能性も秘めています。

自宅で看取りをする場合には本人の希望に沿って最期までの生活を送ることができます。しかし、介護者への負担は増えていきます。先の見えない介護になるため、社会的資源を積極的に活用して看取りまでのケアを行うことが重要です。

>>自宅での看取り【準備~終わりまで】 

準備や手順

自宅で看取りをするとなったら担当のケアマネジャーと連携をとり、社会資源を積極的に活用できる環境を整えましょう。訪問看護や訪問介護、往診医を決めたり自宅で介護ができるように介護用のベッドのレンタル等の準備を進めていきましょう。自宅で看取ると決めたならば、本人が病院から帰ってきてすぐにケアをスタートできるように準備を整えておきましょう。

また、死へ向かうまでの経過について看護師等から学び、突然の別れに対しても落ち着いて対処できるように情報を収集しておくことが大切です。

まとめ

どこで看取りをするにしても、無理や後悔しないよう本人や家族の希望する形で最期を迎えられるように、もしもの時に備えて、最期の時間をどこで過ごしたいのかを元気な時から話し合っておくことが重要ではないでしょうか。

 

※この記事は2020年3月時点の情報で作成しています。

 

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監修者:小笹 美和

介護業界・区役所勤務経験を経て、相続コンサルタントに転身。
介護保険訪問調査員など高齢者との1,000件を超える面談実績を持つ。 高齢者にもわかりやすい説明とヒアリング力には定評があり介護にも 強い相続診断士として多くの相談を受けている。
終活や相続・介護と幅広い視野から話すセミナー講師として全国で活動をしている。