高齢者が転院を検討するケースとセカンドオピニオンについて

転院を検討するケースとセカンドオピニオンについて

要介護者を介護していると、考えなくてはならないことがたくさんあります。退院後の行き先や病気・ケガの治療方針を考えた結果、転院を検討することもあるでしょう。この記事では、転院の流れやセカンドオピニオンについてまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

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転院を考える4つのきっかけ

転院を考える4つのきっかけについて



転院とは、様々な理由で現在治療を受けている病院から別の病院に変わって治療を受けることです。入院・通院にかかわらず、転院することがあります。要介護の方の場合、本人に代わって家族が情報収集や交渉をすることも多くなるでしょう。

転院を検討するきっかけには、主に次の4つのケースがあります。

急性期ではなくなったから

転倒などによるケガや脳卒中などの病気で入院すると、まずは病状に応じた検査や治療を受けます。そうした処置を24時間体制で行う病院が急性期病院です。長期的な入院はできず、危機的な状況を脱して回復を目指す段階になると退院となります。

高齢者の場合には、ケガや病気、そして入院をきっかけに身体機能や認知機能が低下してしまうことがあります。その結果、要介護度が進んでしまったり、それまでは自立して過ごしていたのに介護が必要になってしまったりすることも少なくはありません。

退院してすぐに今まで通りの生活に戻れるわけではないため、在宅に戻る前に回復期リハビリ病棟や地域包括ケア病棟に転院、または老人保健施設に入居をして、ケアを受けながら在宅復帰を目指します。

または、長期療養が可能な医療型療養病床に転院したり、介護療養型医療施設(介護療養病床)や介護医療院といった介護施設へ入所したりする場合もあります。

便利な病院に移りたい

長期入院が可能な療養病床に入院しても、遠くて家族が通いづらいなどの理由で転院するケースがあります。

入院ではなく通院している場合にも、家を引っ越した場合や家の近所に病院ができたなどの理由で転院することがあります。

専門的な病院に移りたい

いったん医療機関に収容されたものの、症状の急変やより専門的な処置を必要になった時に、他の医療機関に転院する場合があります。緊急性がある場合には病院から病院へ救急車で搬送されることもありますが、そうでない場合には病院の搬送車やタクシーなどで移動します。

入院ではなく通院している場合にも、同様の理由で転院する場合があります。

病院の対応や治療方針に納得ができない

安心介護内でも入院先の医師や看護師、ケアワーカーの対応に納得ができず、転院を考えているという声は多数投稿されています。

複数の医師が在籍する病院に通院している場合は、通院する曜日を変えると担当医師を変えられることもありますが、それができない場合には転院するのも選択肢のひとつでしょう。

また、対応には問題がないものの、治療方針や診断に疑問があるため転院を検討するケースもあります。その場合、他の病院にセカンドオピニオンを求めて、本当に転院する必要があるかどうかを考える必要があります。

相談から転院先を決めるまで

相談をしてから転院先を決めるまでの流れ



それでは実際に転院するまでの流れを確認していきましょう。以下は一例ですので、詳しくは病院の地域医療連携室などにご相談ください。

入院先を変更する場合

病院の地域医療連携室に相談する

「自宅に戻る前にリハビリができる病院に転院したい」「家族が通いやすい病院に転院したい」などの要望がある場合、病院にある地域医療連携室に相談をしてみましょう。希望に沿った病院を探してくれるだけではなく、その他の選択肢などについてもアドバイスをしてくれます。

希望する病院に病床の空きが無かったり、症状によって受け入れができなかったりすることもあるので、数ヵ所の病院を候補にあげます。

もし個人で探される場合には、インターネットで検索をしたり、地域包括支援センターに相談をしたりしてみるといいでしょう。

受け入れ可否の決定

現在入院中の病院から、転院を希望する病院に受け入れが可能かどうかを打診します。その際に、「紹介状(診療情報提供書)」「看護サマリー」「日常生活動作に関する情報」などを先方に送付します。

病院と面談する

転院候補の病院が、受け入れの可否を判断します。転院可能な場合、家族が転院先の病院に面談に行き、転院後の生活や費用について話を聞き、院内を見学します。

待機することも

希望する転院先が満床の場合には、待機しなくてはならない場合があります。待機中に現在の病院でそのまま入院できるのか、他の行き先を探す必要があるのかについては、病院の地域医療連携室で相談をしてください。

通院先を変更する場合

通いづらいなどの理由で通院先を変更する場合などにも、地域連携室に相談しましょう。

転院を希望する病院が見つかったら、現在通院している病院から紹介状(診療情報提供書)を出してもらう必要があります。知人の紹介や自分で調べた病院に転院する時や「とりあえずセカンドオピニオンだけ…」という時にも同様です。

「病院に言いづらい」「頼みごとをしたくない」と感じても、必ず紹介状を出してもらいましょう。今までにどんな検査を受けてどんな診断をうけたのか、どんな治療をしてどんな経過をたどったのかなどを転院先の医師が正確に把握する必要があります。

また、基本的な治療は今までと同じ病院で受け、処方や注射などは自宅近くの病院で受けるということも可能です。担当医に相談をして、必要な薬の種類や量について紹介状に詳細を書いてもらいましょう。

セカンドオピニオン=転院・転医ではない

セカンドオピニオンをしたら転院をしなければいけないというわけではありません。

 

医師の診断や治療方針に納得がいかないことは、転院や転医のきっかけとなります。その時、患者が求めるのがセカンドオピニオンです。

セカンドオピニオンとは

セカンドオピニオンとは、現在診てもらっている医師以外に診断や治療方針の意見を求めることです。

現在の医療はインフォームド・コンセント(説明と同意)を重視しています。患者自身やその家族が治療方針の決定にかかわっていく中で、最善の治療を選択する手段の1つが、セカンドオピニオンです。

セカンドオピニオンを求めたら、必ず病院や医師を変えなくてはならないわけではありません。「担当医に失礼なんじゃないか」と心配な方もいるかもしれませんが、インフォームド・コンセントを重視している医師なら、失礼だとは受け取らないことでしょう。

セカンドオピニオンの流れ

まずは担当医にセカンドオピニオンを受けたい旨を相談し、紹介状(診療情報提供書)を作成してもらいます。その際には、なぜセカンドオピニオンを受けたいのかを説明して話し合いましょう。担当医の診断や治療方針などをしっかり聞いて理解することで、セカンドオピニオンが必要なくなることもあります。

紹介状(診療情報提供書)を作成してもらったら、セカンドオピニオンを求める先の病院を決めます。総合病院などの大きな病院には、セカンドオピニオン外来などが設置されています。インターネットで検索したり、現在通っている病院の地域医療連携室に相談をして探すことができます。

セカンドオピニオン外来の多くは予約制です。基本的に健康保険が適用されませんので、予約の際には費用についても確認しておきましょう。本人の同意があれば、家族が受診することも可能です。予約日時には紹介状を持ち、医師に聞きたいことをあらかじめメモしておきましょう。

セカンドオピニオンを受けたら、そこで聞いた話や情報を担当医に報告し、治療方針を再検討します。必要に応じて、セカンドオピニオンを基に転院や転医を検討します。

まとめ

入院や通院している病院を変えるケースは少なくありません。急性期を乗り越えたため、自宅に戻る前にリハビリなどを受けるため、長期入院先や通院先に家族や本人が通うのが不便なため、専門的な治療を受けるため、病院の方針や対応に納得できないためなど、理由は様々です。

転院をする場合には、現在通っている病院の地域医療連携室に相談をしましょう。紹介状(診療情報提供書)を必ず担当医に作成してもらってください。また、セカンドオピニオンを求めたからといって、必ず転院・転医しなくてはならないわけではありません。

要介護者が入院したり治療を受けたりする際には、退院後の行き先や治療方法など、家族が考えなくてはならないことがたくさんあります。この記事が考えをまとめる一助になれば幸いです。

※この記事は2020年5月時点の情報で作成しています。

監修者:春田 萌

日本内科学会 総合内科専門医、日本老年医学会所属
15年目の内科医師です。大学病院、総合病院、クリニックでの勤務歴があります。訪問診療も経験しており、自宅や施設での介護についての様々な問題や解決策の知識もあります。