介護離職とは 仕事と介護の両立方法

介護離職とは

介護離職とは

介護離職とは、身近な方の介護を行うために、現在行っているお仕事を退職してしまうことです。日本での介護離職者は、年間約10万人といわれています。介護離職を行ってしまうと、収入が減ってしまったり、社会との繋がりが途切れてしまい、孤立する可能性が高まります。

介護を行いながら仕事を行っている人口は、2013年時点で290万人といわれています(2013年7月に総務省が発表した就業構造基本調査より)。

厚生労働省が定めた支援制度

介護離職は本人だけではなく、経験やスキルを持った人材を失う企業にとっても大きな問題です。そこで厚生労働省では「介護離職ゼロ」を目標に掲げ、支援に向けた法改正などを進めています。

また、企業によっては在宅勤務を認めるなど、企業独自の支援制度を用意していますので、あわせて確認しておきましょう。

介護休業

労働者は対象家族1人につき、要介護状態に至るごとに3回まで(2017年1月1日より)、通算して93日 まで、介護休業をすることができます。

 

対象となるのは、雇用期間が1年以上の労働者となります。

・日雇い労働者
・入社1年未満の労働者
・申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
は対象外となるので注意が必要です。

介護休暇

要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者は、事業主に申し出ることにより、対象家族が1人であれば年に5日(所定時間×5)まで、2人以上であれば年に10日(所定時間×10)まで、時間単位で休暇を取得することができます。

 

対象となるのは、雇用期間が半年以上の労働者となります。

・日雇い労働者
・入社6ヵ月未満の労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
は対象外となるので注意が必要です。

法定時間外労働の制限

2017年1月1日より、介護をしながら仕事をしている労働者について、残業を免除する制度が企業に義務付けられます。
>>厚労省、介護者の残業免除を企業に義務付けへ

勤務時間や勤務地の配慮について

要介護状態にある対象家族を介護する労働者が希望した場合、事業主は短時間勤務制度やフレックス制度などの措置、深夜(午後 10時から午前5時まで)労働の免除を講じなければなりません。 

また、事業主には転勤によって労働者の介護が困難になることがないように、配慮が求められています。

不利益取扱いの禁止

事業主は、上記の制度の申出や取得を理由として、降格や解雇などの不利益な取扱いをしてはいけないことも育児・介護休業法によって定められています。

介護給付金

雇用保険に入っている人なら、介護休業時に介護休業給付金が支払われます。2016年7月までは賃金月額の40%でしたが、同年8月1日から67%に引き上げられました。
>>仕事と介護を両立させる介護休業給付金制度

育児休業では認められている社会保険料の免除は、介護休業では認められていません。

介護休暇には給付金がなく、有給休暇とは異なり、取得時には賃金は発生しません。ただし、会社独自の介護支援として介護休暇中も賃金を支払うところもあるようです。

事業主向けの助成金も

介護をしている労働者への配慮を求め、介護と仕事の両立がしやすい環境づくりを促すため、一定の要件を満たした事業主に介護離職防止支援助成金を支給しています。

▼主な要件
・仕事と介護の両立支援のための職場環境整備
・実際に介護に直面した労働者の「介護支援プラン」の作成・導入
・介護支援プランに沿って労働者の円滑な介護休業を取得・職場復帰させた場合
 または仕事と介護の両立のための介護制度を利用させた場合など

介護離職ゼロポータルサイト

事業主と労働者の両方に向けて、介護休業や介護保険制度を周知するポータルサイトをオープン。各制度の関連情報に誘導しています。
>介護離職ゼロポータルサイト

厚生労働省以外の取り組み

介護離職ゼロに取り組んでいるのは、厚生労働省だけではありません。自社の労働者のために、独自の制度を設けている民間企業が増えています。

また、ベネッセではそんな企業を増やすために、在宅勤務やフレックス制度などの離職防止の制度設計や運用、風土の改革などの「仕事と介護の両立支援サービス」を、企業の人事部に向けて提供しています。

他にも行政・企業・個人に向けた介護離職防止の啓発と、仕事と介護の両立ノウハウを広く発信する「一般社団法人介護離職防止対策促進機構」や、介護があっても自分の人生や仕事をあきらめない社会を目指す当事者たちの連合「介護離職のない社会をめざす会」などが、介護離職ゼロに向けて活動しています。

介護と仕事を両立させる苦労

母の認知症進行で妄想や不穏な状況が悪化して、私が心身の疲労で会社に行けない日が増えてきました。わたしはどうすればいいんでしょうか。このまま休む日が増えると会社をクビになります。母のせいでわたしの人生はめちゃくちゃに崩壊しています。
認知症の実母を在宅介護している女性)
引用元 介護のQ&A:一人で母介護で、体も心も疲労し将来に絶望です

介護を理由に仕事を辞めると、その後の自分の人生ってどうなるのでしょうか?仕事は、続けられないのでしょうか?その後の事を考えると、40歳なので正社員以外は、難しいと思っています。5年~10年介護のみで生活した場合 45歳~50歳で再就職は、正社員は、厳しくなると思います。頑張っても、先が見えなくて 続けられるか心配なので、先輩方 教えて下さい。(在宅でダブル介護中の女性)
引用元 介護のQ&A:介護で仕事を辞めるべき?

2012年時点で462万人と言われていた認知症患者数は、10年後の2025年時点では700万人と、65歳以上高齢者の5人に1人に達すると、先日厚労省より発表されました。

介護と仕事の両立に関する相談は、安心介護にも非常に多く寄せられてます。

暴言・暴力・徘徊・介護拒否・昼夜逆転など、介護をする人を肉体的にも精神的にも、非常につらい状況に追い込んでいくのが、“認知症介護” の現実です。そして、その結果、ストレスから虐待や介護鬱などに繫がるケースが多いのも事実です。

実際に介護離職をされた方々の意見

介護離職中です。私の30代は、全て介護で終わってしまいました。今40代になって、同じ選択をすることが正しいのでしょうか。いつまで続くかすら分からない状況なので、このまま40代も介護になる可能性も高いです。四六時中、頭をよぎることは、もっと良い方法があったかもしれない。自分の人生と両立出来たかもしれないと、後悔ばかりです。(認知症の父母を在宅介護している40代女性)
引用元 介護のQ&A:これからの自分の人生を考えるべきでしょうか

2年位怒涛の日々でした。いまだに、解らない事だらけですが、仕事に復帰して、父母には申し訳ないですが、仕事の時間こそ介護から開放される時間になり、気持ちが楽になりました。(認知症の父母を介護している女性)
引用元 介護のQ&A:仕事を復帰して、気持ちが楽になりました。

介護離職を経験した人々は一様に、後悔の気持ちや自分の生活を大切にすることの重要性を訴えてます。
介護を機に起こる生活の変化、いつまで続くかわからない不安から「介護離職はダメ!仕事や自分の人生は守らないと!!」というメッセージが強く届いています。

また、あるカウンセラーの著書に書かれた言葉を抜粋してご紹介します。

「今ここで辞めてしまうわけにはいかない」「私がいないと大変なんです」生真面目な人ほど言います。でも本当にそうでしょうか?酷な言い方になってしまいますが、この世の中、誰か一人が休んでも、たいていのことはなんとかなるのです。~中略~ 休ませてもらうことは、負けることではありません。明日のための前向きな行動なのです。
引用元 介護のQ&A:仕事しながらの介護は、出来ないでしょうか?

介護サービスを有効利用する、親族で改めて話し合い手分けして介護ができる方法を考える、など介護離職を決断する前に方法がないか、もう一度考えてみてはいかがでしょうか?

ひとりで悩まず同じような境遇の人の体験談を参考にしたり、介護の専門家に相談してみるなど、情報を集めることからはじめてみてください。