パーキンソン病で現れるすくみ足の基礎知識と対策のコツ

パーキンソン病で現れるすくみ足の基礎知識と対策のコツ

パーキンソン病で現れるすくみ足とは、動き始めの1歩が踏み出せなくなる症状です。転倒の危険性もあるため当事者にとっても介護者にとっても日常生活で負担になります。この記事ではすくみ足が起こりやすいタイミングや対応方法についてまとめました。ぜひご参考ください。

 

すくみ足とは

すくみ足について

移動したいのに最初の1歩がなかなか出ない…そんな高齢者のすくみ足は、パーキンソン病の特徴的な症状のひとつです。前に進みたいのに、足が地面に張り付いたように動かなくなりますが、最初の1歩が出てしまえば比較的足が出るようになります。最初の1歩だけではなく、次の1歩も出ないようであれば、それは無動という他の症状です。

すくみ足は突然出現する症状で、通常は10秒程度で治まることがほとんどですが、転倒などの原因になるため、日常生活で困っている方も多いことでしょう。

パーキンソン病になったからと言って、必ずすくみ足の症状が現れるわけではなく、およそ半分の方に出るといわれています。

すくみ足が起こりやすいタイミング

すくみ足はいつ出現するかわからない症状ですが、現れやすいタイミングがいくつかあるため、介護をする際に気を付けると良いでしょう。

最も現れやすいのが歩き始めです。続いて多いのが方向転換をする時で、狭い場所を通る時や目的地に近づいた時にも生じるといわれています。

すくみ足の原因

すくみ足は何が原因になって起こるのか

すくみ足はパーキンソン病でよくみられる症状です。パーキンソン病によりどのようなメカニズムですくみ足が出現するのかは、明らかにはなっていません。

パーキンソン病では、薬をきちんと服用していても、薬の効果がなくなって症状が悪くなる「オフ現象」と、薬の効果が表れて症状が良くなる「オン現象」が現れますが、すくみ足はどちらのタイミングでも現れる可能性があります。

通常は罹病期間が長くなってから現れる症状で、早期に起きた場合には他の原因が考えられます。

パーキンソン病とは

パーキンソン病とは、脳の中の黒質と呼ばれる場所にあるドパミン神経が減少することで、神経伝達物質であるドパミンの分泌が減り、神経回路の情報処理に異常が起きる病気です。加齢に伴って発症しやすくなりますが、若いうちから発症する方もいます。

すくみ足の対応方法

すくみ足の症状が現れた場合の対策法

すくみ足の症状が現れたら、どのように対策をしたらいいのでしょうか。

リハビリをする

すくみ足の改善にはいくつかのコツがあります。

例えば…

  • 「1,2、1,2…」と声を出したり歌ったりして、リズムをつけながら歩く
  • 「せーの」と号令をかけながら1歩目を踏み出す
  •  腕を大きく振って、足を持ち上げるように歩く
  • 出にくい方ではない足を半歩引いてから振り子のように出して歩く
  • 家の中で頻繁に通る場所には30センチほどの間隔で床にテープを貼り、それをまたぐように歩く
  • 向きを変える時には、大きく円を描くように方向転換する など

 

その方にあったコツを手に入れるには、通所リハビリ(デイケア)や訪問リハビリを利用して専門家と共にすくみ足の対策を考えるといいでしょう。訪問リハビリでは自宅に理学療法士などの専門家が来てくれるので、生活の場に合わせた対策を考えてもらえるためお勧めです。詳しくはケアマネジャーにご相談ください。

生活環境を整える

すくみ足の症状が出る方は、以下に気を付けて生活環境を整えましょう。

  • スリッパは転倒しやすいので使用せず、できればリハビリシューズを着用する
  • 夜間も廊下を明るくしておく
  • 床に荷物を置かずに広いスペースを確保する
  • 段差にはスロープを付けたり、廊下や室内に手すりを設置したりなど、歩きやすい環境を整える

すくみ足の治療

すくみ足の治療には薬の服用が有効だと考えられており、薬の効果が切れているオフの時に起こるすくみ足にはレボドパ(L-ドパ)の増量、薬が効いているオンの時に起こるすくみ足にはドロキシドバの追加投与が推奨されています。

パーキンソン病の治療では、複数の薬が処方されることが一般的です。服薬のタイミングを間違えないようにすること、他の薬との飲み合わせに注意することが大切です。

まとめ

すくみ足とはパーキンソン病で現れる症状のひとつです。前に進みたいのに最初の1歩が出にくいため、転倒につながってしまうことがあります。突然現れる症状ですが、歩き始めや方向転換をする時、狭いところを歩く時、目的地が近づいてきた時に現れやすい傾向があります。パーキンソン病の罹病期間が長くなると現れやすい症状ですので、早期に現れた時には他の原因があるのかもしれません。

最初の1歩を出す時に号令をかけたり、床にテープを貼ってまたぐように歩いたりなど、すくみ足には様々な対策があります。理学療法士などの専門家のアドバイスを参考に、当事者や家庭環境にあった方法を探してみるといいでしょう。転倒をしないように、歩きやすいように家の中を整えることも大切です。

転倒リスクのあるすくみ足は、当事者にとっても介護者にとっても負担の大きい症状です。この記事が、皆さんのお役に立てたのなら幸いです。

※この記事は2020年7月時点での情報を基に作成しています

医師:谷山由華
監修者:谷山 由華(たにやま ゆか)

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)

【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤

内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている