誤嚥性肺炎の原因にもなる食物残渣(ざんさ)とは

誤嚥性肺炎の原因のひとつ、食べ物残渣とは?

介護者が気を付けたいものに食物残渣(ざんさ)があります。あまり聞きなれない言葉ですが、虫歯や口臭だけではなく、誤嚥性肺炎の原因にもなりうるものです。この記事では食物残渣のリスクや家庭でできる対処方法をまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

 

食物残渣(ざんさ)とは

食物残渣(ざんさ)とは何?



食物残渣(ざんさ)とは、口の中に残された食べ物などの残りカスのことです。咀嚼力(噛む力)や嚥下力(飲みこむ力)の低下、唾液量の減少などで食べ物が口の中に残ってしまいます。胃などに未消化のまま残された食べ物も食物残渣と呼びますが、この記事では口腔内の食物残渣について解説していきます。

ひき肉やひじき、きざみ食など口の中でバラバラになりやすい食べ物や繊維質の多い食べ物、青菜類やわかめ、のりといった口の中にくっつきやすい食べ物などが食物残渣になりやすい傾向があります。また、身体の半身にマヒのある方は、口腔ケアの際に患側(マヒのある側)が磨きにくいため、食物残渣が溜まりやすいです。

食物残渣で高まるリスク

食物残渣で高まる健康上のリスクについて

口の中に食べ物が残ると、そこに細菌が繁殖して次のようなリスクを引き起こします。

虫歯や口臭

口の中の細菌が食物残渣のたんぱく質を分解するときに、ひどい口臭が発生すると考えられています。また、食物残渣に細菌が付き、それが分解されるときに生じた酸により虫歯が発生するなど、食物残渣は様々な口腔トラブルの原因となります。

誤嚥性肺炎

飲みこむ力が低下すると、食べ物や唾液が気管に入ってしまうことがあります。このことを誤嚥(ごえん)と言います。食物残渣は食事中だけではなく、食後に吸い込んで誤嚥してしまうことがあります。一緒に細菌を誤嚥することで引き起こされるのが、誤嚥性肺炎です。

嚥下機能が低下した高齢者がかかりやすく、症状が分かりにくいため発見が遅れてしまうことがあります。厚生労働省による平成29年度人口動態統計では、誤嚥性肺炎が原因で亡くなった人は全国で約36,000人に上り、死因順位の第7位となっています。

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食物残渣を減らすポイント

食物残渣を減らすポイントについて

食物残渣を減らすために気を付けたいポイントには、次のようなものがあります。

唾液の分泌を促す

唾液の分泌は加齢とともに減少していきます。唾液の分泌を促すために、食事はよく噛んで食べ、水分を十分に補給しましょう。

また、食事の前にお勧めしたいのが、唾液腺マッサージです。介護者でもできますので、次の動画を参考にして行ってみてください。 ※以下の動画の埋め込みをお願いします

www.youtube.com

(引用元:口腔ケアチャンネル)

口の中に食べ物が残りにくい形態の食事を

口の中でバラバラになりやすい食べ物やパサパサした食べ物は、とろみをつけたりあんかけ風にしたりして、口の中でまとまりやすく飲みこみやすい状態にしましょう。

噛む力や飲みこむ力に合わせた食事は、食物残渣の予防にも効果的です。しかし、家族の食事と別の料理を用意するのは大変なので、市販品や高齢者向けの食事宅配サービスを利用するといいでしょう。

口腔ケア

毎食後には必ず、歯ブラシや口腔ケア用のスポンジを使って口腔ケアを行いましょう。口の中の状態に合わせて、綿棒、ガーゼなどを使用してください。どんな口腔ケアを行ったらいいのか迷ったら、かかりつけの歯科医に相談してみるといいでしょう。

また、口腔内を刺激することで、唾液の分泌を促す効果も期待できます。

>>高齢者の口腔ケアの方法は?誤嚥性肺炎の予防に口腔ケアが重要

まとめ

口の中に残された食べ物などの残りカスである食物残渣は、口臭や虫歯などの口腔トラブルの原因となります。食物残渣を誤嚥して、細菌が肺に入ることで誤嚥性肺炎を引き起こすこともあり、介護者が注意したいもののひとつです。

口腔ケアを実施したり、食事の形態を変えたり、食事の前に唾液を分泌するマッサージを行ったりすることで、食物残渣は減らすことができます。かかりつけの歯科医など、専門家のアドバイスを聞きながら口腔環境の改善を目指してみてはいかがでしょうか。

※この記事は2020年6月時点での情報を基に作成しています

監修者:春田 萌

日本内科学会 総合内科専門医、日本老年医学会所属
15年目の内科医師です。大学病院、総合病院、クリニックでの勤務歴があります。訪問診療も経験しており、自宅や施設での介護についての様々な問題や解決策の知識もあります。