ヘルパーにできること・できないこと 4~生活援助の中身とは?<後編>~
「生活援助」編の4回目です。
前回、同居家族がいる場合や、近所に様子を見に来ることができる家族が住んでいる場合、生活援助を使うことは難しいことを説明しました。
>>ヘルパーにできること・できないこと 3 ~生活援助の中身とは?<前偏>~
ヘルパーにやってもらえないことはこんなにある!
今回は、「日常的な家事」と「非日常の家事」についてお話します。
ヘルパーができる生活援助の目安は、「本人に直接かかわることで、本人では行うことが困難で、それがなされないと日常生活に支障が生じること」に限られます。
さて、では以下の家事は、ヘルパーにやってもらえるしょうか。
・窓拭き、換気扇の掃除、キッチンの排水溝の掃除、ベランダの掃除、床のワックスがけ
・電球の取り換え、家具の入れ換え、大量のごみの処分、修理・修繕、車の洗車
・庭の掃除、植木の水やり、草むしり、ペットの世話
・手の込んだ料理、おせちなど特別な料理
・年賀状などの代筆、公共機関への支払い・銀行でのお金の引き出しなどの代理人行為
・来客の応対
・布団干し、おしゃれ着の手洗い、アイロンがけ
上記のうち、ヘルパーができるのは、窓拭きと電球の取り換え、それもご本人がいつも使う居室ならOKでしょう。ほかには、毎日使う布団を干す、最低限のアイロンかけくらいです。あとは基本的にはNGです。
なぜできないの? 誰が決めたの?
大がかりな大掃除や手間のかかる特別料理は「日常的な家事」とは認められず、庭掃除・植木の水やり、ペットの世話は、本人の日常生活上、必要な援助とは認められません。
いくらご本人が「うちのカレーはルーを使わず3時間かけて作るけど、日常の料理よ」と言っても、ヘルパーのサービス提供時間を考えれば、認められないことは明らかです。
介護保険のヘルパーを、家政婦さんのように、頼めばなんでもやってくれる。このように思っている方が依然として多いようですが、介護保険のヘルパーは、高齢者が自立した生活を在宅で継続するために、介護保険で必要と認められた支援を行うことが大前提であり、家政婦さんのように、庭の草むしりから話し相手まで、何でもやってくれる便利屋さんではありません。ですから、いくらご本人が、日常的に手間のかかる料理を作っているので支援内容として認めてほしいと思っても、「日常的な家事」とは認められない場合も多々あるのです。
介護保険法に、「これらの行為をやってはいけない」と、具体的に禁止されているわけではありません。しかし、介護保険の財源が家事に使われるのはいかがなものかとの声も大きく、生活支援の部分は提供時間が削られるなど、法改正のたびに使いにくいものになっています。
また、ヘルパーができることと、頼んでもできないことの区別は、市区町村によっても、事業所によっても異なります。市町村ごとのローカルルールについては前回お話しましたが、事業所によっては、ヘルパーの安全を確保するために「○センチ以上の脚立など高所の作業はNG」など、細かいルールを設けているところもあります。こうしたルールは、最初に事業所と契約を結ぶ時に、きちんと説明があるはずですし、サービス開始前に必ず確認することが大事です。
なんでもしてほしい場合は自費サービスを依頼する
ご本人が自分の力ではどうしてもできないことをサポートするのもヘルパーの重要な仕事です。たとえば、
・ヘルパーが材料を切るなど調理の下ごしらえをして、ご本人が味付けをする。
・ヘルパーが洗濯ものを干して取り込み、ご本人がたたんで収納する。
・ヘルパーが掃除機で床を掃除し、本人が棚の上など無理なく動ける範囲の拭き掃除する。
こうした行為は、ご本人の自立を促すこととして、ケアプランに位置付けられます。
もし、どうしてもイレギュラーな家事をお願いしたい場合は、ケアマネジャーに相談しましょう。たとえば、「いつもは同居家族がいるけれど、3日間だけ留守にするので生活援助が必要」など、ご本人の緊急性や必要性に応じて、認められる場合も多くあります。
また、多くのヘルパー事業所では、介護保険外サービスも提供しているので、ケアプランに位置づけられた生活支援以外の家事をお願いしたい場合は、全額自己負担での自費サービスを利用しましょう。自費なら、1時間いつものサービスに入った後、自費で1時間延長して話相手をお願いしたり、イレギュラーな家事をお願いすることも可能です。
制度内のサービスといっても、最終的には人と人の信頼関係がものを言います。ヘルパーがやっていいことかどうか迷う場合は、「持ち帰ってケアマネジャーに相談します」と対応するかもしれませんし、気を利かせて「今日は時間があるから」と、やってくれるかもしれません。そこは「記録に残らない・残してはいけない支援」の部分となり、利用者がいつもそれを期待することは、やはり許されることではありません。
将来や現状の家族介護に役立つ介護職員初任者研修
ヘルパーの技能や知識は、介護職員初任者研修によって学ぶことができます。
介護職員初任者研修とは介護を学ぶ全ての人の入門となる講座であり、介護職を
目指す方のほとんどがまずはこの資格を取られています。
介護職員初任者研修で身に付く技能や知識は仕事だけではなく、
大切なご家族を介護する際や、ご自身が介護される側になったときにも大変役に
立つ技能です。
また、最近では介護職員初任者研修にて認知症についても詳しく学ぶため、
日常における認知症の家族への支援についてもしっかり学ぶことができます。
特集<ヘルパーにできること・できないこと>
>> 1 ~ヘルパーの正式名称を知っていますか?~
>> 2 ~ヘルパーの仕事範囲はどこからどこまで?~
>> 3 ~生活援助の中身とは?<前編>~
>> 4 ~生活援助の中身とは?<後編>~
>> 5 ~支援能力の高さは「観察力」~
>> 最終回~爪切り、口腔ケア、耳掃除も解禁!~
>>1~6をまとめてみたい方はこちらから
>> “ヘルパーにできること・できないこと” について、同じ介護者同士で話し合う!(共感広場への投稿)
>>他の人の体験談を見る!
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