第2回 「スマイルケア食」と「介護食」の違いとは?

第2回 「スマイルケア食」と「介護食」の違いとは?

「美味しさ」「見た目の美しさ」にもこだわるスマイルケア食

在宅介護をされるご家族にとって、特別な調理が必要な食事を朝・昼・晩用意することは大きな負担です。

そこで、やわらかく調理された食品やゼリー状の食品など、市販の「介護食」が広く販売されてきました。 ただ、従来の介護食の中には、食べやすさ・飲みこみやすさ優先で美味しさが伴っていないものもありました。また、ご自宅で用意する場合も、ミキサーにかけてしまうとどんな食材も見た目は同じようなペースト状になってしまい、食欲をそそられない結果になりがちです。

在宅で介護を受けるご高齢者にとって、食事は最大の楽しみ。 その楽しみが味気ないものになると、毎日に張り合いがなくなります。さらに食が進まないことで低栄養に陥り、身体機能まで低下する恐れがあることは前回お話したとおりです。

スマイルケア食は食べやすさ・飲みこみやすさはもちろん、「美味しさ」「見た目の美しさ」にもこだわり、要介護者の食欲をかきたて、クオリティ・オブ・ライ フ(生活の質)を高めることを目的としています。そのため、メニューも煮物、焼き魚、豚肉の生姜焼き、筑前煮など、健常者と変わらないバラエティゆたかな 内容。従来の介護食では食材をミキシングしてしまうと、たとえ成形してももとの食材とは似ても似つかぬ外見になるデメリットがありましたが、スマイルケア 食メーカーの中には独自の技術で見た目がまったく変わらないまま、スプーンで崩せる程度のやわらかさを実現する企業も現れはじめています。

「鮭の塩焼きが食べたい」と願う嚥下困難なご高齢者の食卓に、オレンジ色のペーストではなく、皮までついた鮭の切り身を出してあげることができたら……そんなご要望が手軽にかなう時代になったのです。

噛む力・飲みこむ力に応じたスマイルケア食の7つの分類

実は「介護食」には明確な定義がなく、市販品を選ぶ際になにを基準にするべきか消費者にわかりづらいというデメリットがありました。 たとえば、同じ「食品を噛めない」状態でも、「舌でつぶせる」「歯ぐきでつぶせる」「弱い力でかめる」など、人により症状はさまざまです。そこで誰にでも わかる客観的な指標が求められ、「高齢者ソフト食」や「嚥下食ピラミッド」などの基準が各団体で提唱されるようになりました。 しかし、複数の指標があると消費者に混乱を招きかねません。そこで2014年11月、農林水産省が「スマイルケア食」の7つの分類とマークを定め、基準を統一することになったのです。

スマイルケア食には、以下の7つの分類があります。

分類 形態など 噛む力 飲みこむ力
介護予防のための食品1 栄養状態に配慮した食品 問題なし 問題なし

弱い力で噛める食品

2

硬さ・ばらけやすさ・張りつきやすさなどのないもので、弱い力で噛めるもの(焼き豆腐程度の硬さ) やや弱い やや弱い
歯ぐきでつぶせる食品 3 硬さ・ばらけやすさ・張りつきやすさなどのないもので、歯ぐきでつぶせる程度のやわらかさのもの(もめん豆腐程度の硬さ) 弱い やや弱い

舌でつぶせる食品

4

形はあるが、舌で簡単に押しつぶせるもの(絹ごし豆腐程度の硬さ) とても弱い 弱い

ペースト状の食品

5

スプーンですくって食べられるもの。口の中で簡単にまとまって、飲みこめるもの(米粒がほとんどないお粥など) とても弱い とても弱い

ムース状の食品

6

均質で、付着性、凝集性、硬さ、離水に配慮したゼリー・プリン・ムース状のもの。少量をスプーンですくって、そのまま飲みこめるもの とても弱い とても弱い

ゼリー状の食品

7

均質で、付着性、凝集性、硬さ、離水に配慮したゼリー。離水が少なく、スプーンでスライス状にすくうことができるもの。 とても弱い とても弱い

出典:(外部サイト)農林水産省 介護食品のあり方に関する検討会議「「新しい介護食品(スマイルケア食)」の提供方法に関する基本的考え方(事業者等向けガイドライン)」

スマイルケア食を通して、ご高齢者の方にも楽しんで食事をしてもらえるといいですね。

<スマイルケア食特集>

>>:第1回 高齢者の低栄養を予防する「スマイルケア食」とは

>>:第2回 「スマイルケア食」と「介護食」の違いとは?

>>:第3回 どう選べばいいの? 「スマイルケア食」