高齢者の口腔ケアが重要な3つの理由

年齢を重ねるにつれて、以前は当たり前のようにできていたことが、できなくなってしまうことがあります。

その一つが、自身の口の中の健康を保つことです。 高齢者の方には「口の中をきれいにするケア」のほかに、「口の中の機能を保つケア」も必要です。 この2つのケアを合わせて「口腔ケア」と呼んでいます。

どうして「口腔ケア」は大切なのでしょうか?

口腔ケアの目的は3つ

口腔ケアの主な目的は3つです。

その1・誤嚥性肺炎の予防

口の中の細菌が、誤って気管に入り発症する肺炎が「誤嚥性肺炎」です。 気管に異物が入ると、体は反射的に咳をして吐き出そうとします。 ただし、認知症の方や高齢者の方ですと、その反射が弱くて吐き出せず、気管や肺に入ったままの異物が原因で肺炎を起こしてしまいます。

口の中の汚れや細菌を減らすことが、誤嚥性肺炎の予防にもつながります。

その2・唾液の分泌を促す

唾液には口の中を清潔に保ち、また消化を助ける働きがあります。口の中の乾燥を防ぐのも、口腔ケアの目的です。

その3・口腔機能低下の予防・改善

口腔機能が低下すると、しっかりと噛むことができなくなり、摂食障害や嚥下障害にもつながります。その結果、十分な栄養が取れずに、免疫力や体力が下がってしまいます。 また、食事をよく噛むと脳に刺激が与えられ、認知機能の低下を予防・改善するとも言われています。

歯周病を甘く考えない、全身に与える影響

口の中の健康を考えたときに、予防したい病気に“歯周病”があります。 “歯周病”とは、歯を支えている肉や骨が歯周病菌によって破壊されていく病気です。ひどい状態になると、歯が抜けてしまうこともあります。

また、歯周病菌は全身の健康にも影響を与えます。 誤嚥性肺炎の原因になるほか、歯周病菌の刺激により動脈内に脂肪性粘着物が付着し、動脈硬化により脳卒中や狭心症・心筋梗塞の原因となることがあります。 また、糖尿病になると血液中の血糖値が高くなって歯周病になりやすいという報告がありますが、歯周病になることで糖尿病が悪化する原因にもなることも分かってきました。

高齢者の口腔ケアに積極的な鳥取県

鳥取県と鳥取県歯科医師会は、高齢者の口腔機能維持・改善に向けた取り組みを始めると発表しました。

施設へ出張しての歯科検診の実施やその後のフォローからはじめ、順次個人へとケアを拡大していくそうです。 また、鳥取市ではすでに通院が困難な方やデイサービスセンターに通われている方を対象に、歯科医を派遣して無料で口腔診査を行う取り組みが始まっています。

鳥取県のような取り組みが全国に広まるといいですね。

次回は、口腔ケアの具体的なポイントについて説明したいと思います。