介護予防のために心掛けたい「健康な食事」

介護予防のために心掛けたい「健康な食事」

介護予防はもちろん、元気に自立した生活を続けるためにも、食事の見直しは欠かせません。食が細くなったり、買い物や食事の準備が大変になったりする高齢者にとって、十分に栄養バランスの取れた食事を継続するのは難しいものです。

今回は、日本人の長寿を支えてきた日本の食文化と「健康な食事」を考え、高齢者の毎日の食事を「健康な食事」に変えるためにはどうしたらいいのかを紹介します。

介護予防にも!日本人の長寿を支える食文化と「健康な食事」

日本は世界的にも知られている長寿の国です。栄養バランスの整った健康的な食文化が、日本人の長寿を支えてきました。

日本の食文化「和食」の基本は、「一汁三菜」です。一汁と三菜(主食・主菜・副菜)によって、様々な食材を1回の食事で取り入れることができます。また、比較的低カロリ―で各種の栄養素をバランスよく摂取しやすい「和食」は、生活習慣病や肥満を防止し、介護予防にもつながります。

健康な体を維持して自立した生活を続けるために必要な食事は、単に栄養バランスよく、しっかりと食べることだけではありません。厚生労働省は、『「健康な食事」とは、健康な心身の維持・増進に必要とされる栄養バランスを基本とする食生活が、無理なく持続している状態を意味します。「健康な食事」の実現のためには、日本の食文化の良さを引き継ぐとともに、おいしさや楽しみを伴っていることが大切です。』としています。

参考:日本人の長寿を支える「健康な食事」

食事を“おいしく”“楽しく”する要素は、味つけだけでなく、多様な食材を使ったり、調理の方法や盛り付けを工夫して、彩りや食感を楽しむなど、たくさんあります。

地域によって異なる食材や旬の食材を楽しんだり、食事や季節に合わせて食器や調度品を変えたり、年中行事に関わる食事を準備したりといった日本の食文化も、「健康な食事」には欠かせない要素です。また、無理をせずに、続けられることも大切です。

バランスのよい食事の習慣を身につけることができる無料のアプリも

また最近では、毎日の食事を簡単に記録することで、自分の食事の傾向を振り返ることができて、いろいろな食材(食品群)をまんべんなく食べるよう心掛けることができる、便利なアプリも開発されています。

無料のスマホアプリ「バランス日記」

このアプリには、「食べ友」機能という、離れて暮らしているご家族の食事情報を共有して、 食の見守りができる機能も付いているので、介護する方にとってもありがたいですね。

高齢者の食事の特徴と注意点

年齢を重ねると身体機能が低下して、食事にこんな影響が出てきます。

・固いものが噛めなくなる ・食べ物を飲み込めなくなる ・味覚が衰える

高齢になると柔らかいものを好むようになり、味覚が衰えているために食事が進まなくなります。次第に食事への興味が減り、食事量が減ってゆきます。味覚が衰えるので、濃い味を好むようになるのも特徴です。

さらに、ひとり暮らしの高齢者には、こんな特徴があることがわかっています。

・孤食:ひとりで夕食を食べることが多い ・不規則な食生活:食事の時間が不規則になる ・メニューの偏り:食事への興味の低下から、同じようなメニューが続く

参考:2015年10月14日付「60歳~79歳の男女に聞く「食生活と食意識に関する調査」」:日本能率協会総合研究所

このような特徴から、高齢者の食事で注意したい点は3つです。

・無理なく噛めて飲み込めるようにすること ・塩分を取りすぎないようにすること ・食事量が減った分のたんぱく質とエネルギーを効率よく補給すること

食材を細かく刻む、柔らかく煮込むなど、本人の咀嚼嚥下機能(噛んだり飲み込んだりする機能)に応じた調理が、高齢者の食事には必要です。

塩分のとりすぎを控えるには、出汁をしっかりとったり、すだちなどの柑橘類やお酢などを使ったりするといいでしょう。また、醤油やソースを食卓に置かないようにしましょう。

さらに、食が細くなった高齢者は、たんぱく質とエネルギーが不足しがちになります。ひとり暮らしの高齢者は、不規則な食生活によって食事の回数が減ることもあるので、特に注意が必要です。

効率的なエネルギーの補給については、次の項目で説明していきます。

普段の食事にプラスして効率的なエネルギーの補給を

高齢者、特にひとり暮らしの高齢者が、普段の食事を「健康な食事」に近づけるためには、積極的に食事から摂取するたんぱく質とエネルギーを増やすことが大切になります。

しかし、もっとたんぱく質とエネルギーを補給して介護予防をしようと思っても、食事の量を増やしたり、調理に時間をかけて品数を増やすのはなかなか難しいでしょう。そんなときは、主食よりも肉や魚などのおかず(主菜)を優先的に食べるとともに、同じ量でもエネルギーの多くとれる油料理を食べるようにしてはいかがでしょうか。

そこで、簡単にエネルギーアップを目指すために、摂取したい栄養成分として、最近注目されているのが、MCT(中鎖脂肪酸)です。これは、ココナッツなどヤシ科の植物の種子に多く含まれる油で、一般的な油よりもすばやく消化・吸収され、すぐにエネルギーになりやすいという特長があります。

医療機関や介護施設でも利用されているMCT(中鎖脂肪酸)

MCT(中鎖脂肪酸)は効率的なエネルギー補給のために、40年以上前から医療機関や介護施設などで利用されている成分です。食事の量を増やさなくても、ご飯に混ぜたり飲み物に加えたりするだけで、簡単に普段の食事をエネルギーアップすることができます。

また、脳のエネルギー源は「ブドウ糖」ですが、老化の進行や特定の疾病によって、脳がブドウ糖を上手く使えなくなることがあります。脳細胞がエネルギー不足になると、多くの高齢者が悩む「もの忘れ」や「記憶力の低下」といった影響がでてきます。最近の研究では、油から体内で作られる「ケトン体」という物質が、脳の第二のエネルギー源として使われていることがわかってきました。MCT(中鎖脂肪酸)は、ブドウ糖に代わるエネルギー源である「ケトン体」を効率的に作り出せる成分でもあるため、高齢者には特におすすめしたい成分です。

また、アルツハイマー型認知症の患者の脳は、エネルギー不足に陥っている可能性があることがわかってきました。そこで、毎日の食事にMCT(中鎖脂肪酸)を取り入れたところ、短期記憶や遂行機能障害などの認知症の中核症状やもの取られ妄想や暴言暴力などの周辺症状の改善、意欲や集中力の回復、コミュニケーションの活発化といった本人の変化が報告されています。また、本人の変化によって、介護する人の負担感やストレスが減ったとの声もあります。

高齢者の食事にMCT(中鎖脂肪酸)をプラスして、「健康な食事」を心掛けてみてはいかがでしょうか。

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