「シニア食事日記調査」~エネルギー摂取不足とその対策

「人生100年時代」と呼ばれる現代では、いかに健康寿命を延ばすかが重要です。健康的に長く暮らすためには、規則正しい食生活や栄養管理は不可欠です。しかし、離れて暮らしていると、高齢者がどんな食生活を送り、どんな食事をしているのかを把握するのは難しいものがあります。一緒に暮らしていたころの食生活とは、大きく変わってしまっているかもしれないのです。

身近な要介護者に適切なアドバイスをするためにも、高齢者の食事の傾向を知っておくといいでしょう。

高齢者を取り巻く環境は40年間で大きく変化

内閣府が公表している「平成29年版高齢社会白書」からも、高齢者を取り巻く環境は、この40年間で大きく変化していることが読み取れます。

昭和55(1980)年には、三世代世帯が全体の半数程度を占めて最多となり、65歳以上の高齢者が子と同居している割合は69.0%でした。同居の割合は年々下がり、平成27(2015)年の調査では、39.0%まで減少しています。高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯については、昭和55(1980)年には合わせて28.1%であったものが、平成27(2015)年には合わせて56.9%まで増加しています。

65歳以上でひとり暮らしをしている高齢者は、昭和55(1980)年には男性約19万人、女性約69万人でした。高齢者人口に占める割合でみてみると、男性4.3%、女性11.2%です。平成27(2015)年になると、ひとり暮らしをしている高齢者は、男性が約192万人、女性が約400万人。高齢者人口に占める割合は男性13.3%、女性21.1%となり、著しく増加しています。

この40年間で子と同居している高齢者の割合は減り、単独世帯や夫婦のみの世帯が増えたことがうかがえます。65歳以上の男性の7人に1人以上、女性の5人に1人以上がひとり暮らしをしているのが現況です。

高齢者世帯の食事傾向

高齢者世帯の食事には、どんな傾向があるのでしょうか。日清オイリオグループ 中央研究所 生活科学研究課が2016年8月~9月に実施した、「シニア食事日記調査」を参考に見てみましょう。

【シニア食事日記調査の調査概要】 調査期間:2016年8月26日~9月13日 調査手法:機縁法による食事日記調査(平日2日、土日2日の計4日間の食事を写真撮影) 調査対象者:東京都、神奈川県、埼玉県在住の65歳から79歳の男女40名

まず、調査の対象となった40人の充足率は、下記のようになりました。

調査結果 ~充足率

調査結果~充足率

出典:日清オイリオグループ 中央研究所 生活科学研究課「シニア食事日記調査」

 

高齢者(70歳以上)が1日に必要なカロリーは、女性で1,500~2,000キロカロリー、男性では1,850~2,500キロカロリーといわれています。エネルギー充足率が100%を超えている人は、4人に1人程度にとどまりました。

また、野菜が充足している人は、10人に1人なのに対して、食塩は10人に8人が100%を超えており、中には摂取基準の3.5倍になっている人もいました。

高齢者はエネルギーや野菜が不足しがちであり、食塩を摂りすぎる傾向があることがわかります。

また、ひとりで食事をする「孤食割合」が高いほど、エネルギー充足率と野菜充足率が低くなる傾向がありました。

「シニア食事日記調査」調査結果 ~孤食割合との関連

「シニア食事日記調査」調査結果 ~孤食割合との関連

出典:日清オイリオグループ 中央研究所 生活科学研究課「シニア食事日記調査」

 

続いて、家族形態ごとの充足率で比べてみましょう。

調査結果 ~家族形態との関連

調査結果 ~家族形態との関連

出典:日清オイリオグループ 中央研究所 生活科学研究課「シニア食事日記調査」

 

最もエネルギー充足率が低いのはひとり暮らしの男性で、 ばらつきは小さいものの、軒並み低い結果になっています。

この傾向は、野菜充足率でも同じです。ばらつきが大きいものの、ひとり暮らしの男性の野菜充足率は、100%を超える世帯はありませんでした。

参考例:エネルギー不足

出典:日清オイリオグループ 中央研究所 生活科学研究課「シニア食事日記調査」

 

また、同調査では、朝食・昼食・夕食のいずれかを常に欠食する人が「ひとり暮らし」に多いという結果も出ています。

効率的で簡単なエネルギーや野菜補給のコツとは

欠食が多い人に「1日3食取りましょう」と言ったり、食事の量が少なくても満足している人に「十分なエネルギーが取れるように食事量を増やしましょう」と言ったりしても、改善するのは難しいかもしれません。

1日2食が習慣になっている人や食が細くなっている人には、効率的にエネルギーを補給できる工夫が必要になります。

エネルギー補給食品などを利用するほかに、エネルギーになりやすいオイルを取り入れてみるといいでしょう。たとえば、ココナッツオイルやMCTオイルには、MCT(中鎖脂肪酸)という成分が含まれているのでお勧めです

MCT(中鎖脂肪酸)は、一般的な油よりもすばやく消化・吸収され、すぐにエネルギーになりやすい特長があるため、医療機関や介護施設などで、効率的にエネルギーを補給できる食品として利用されています。

さらに、多くの高齢者が悩む「もの忘れ」や、年々患者数が増える「認知症」に対して、MCT(中鎖脂肪酸)が役立つ可能性が研究されてきています。

また、野菜不足になりがちな方は、冷凍野菜やカット野菜、乾燥野菜などを常備しておくといいでしょう。調理が得意ではない人でも、インスタントの食事やお味噌汁に付け足すだけで、手軽に野菜を摂取できます。

エネルギー不足や野菜不足は、ちょっとした工夫で補えます。シニアの方々にいつまでも元気な暮らしを続けてもらうためにも、食事面を見直してみてはいかがでしょうか。

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