介護保険が使える3種類の施設、民間介護施設との違いは?かしこい介護施設の選び方 その1

かしこい介護施設の選び方  その1介護保険が使える3種類の施設、民間介護施設との違いは?

介護保険サービスに位置づけられている公的施設は、 「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム  略して、“特養”)」 「老人介護保健施設  (略して、“老健”)」 「介護療養型医療施設  (略して、“療養型”)」の3種類です。

民間企業などが運営する「有料老人ホーム」との違いは、 1)入居一時金などがない 2)所得に応じた負担軽減の制度がある 3)全国どこでも利用料に大きな差がない ことなどです。

ここでは、もっとも人気の高い特別養護老人ホームを中心に解説します。

特別養護老人ホーム : “特養”は、高度な医療的ケアを必要としない人が対象

“特養”は、全国に約7,500カ所と設置数が多く(※出典1)、入所費用も他の施設サービスと比べて低額で済むことから、もっとも利用希望者が多く、入居の順番を待つ「待機者」という言葉があるほどです。

入所の順番は申込み順ではなく、通常は介護度や認知症の程度、家庭環境などを点数化したポイント順に入居する仕組みです。家族による虐待の疑いがあるケースは例外となります。それゆえに入所まで数年かかることもあります。 2015年度からは、入所条件が「要介護1以上」から「要介護3以上」と厳しくなりました。 増え続ける待機者数に歯止めをかける狙いがありましたが、入居条件の厳格化により「待機者不足」という状況になっている施設もあります。(※出典2) 

特養は、家庭的な雰囲気のなかで24時間、生活に必要な支援を受けられるのが特徴です。一方で、医師が常駐しているところはほとんどなく、嘱託医の往診によって医療的なサポートを受けるのが一般的です。高度な医療的ケア(常時の点滴、中心静脈栄養、癌の疼痛管理など)を必要としている場合は、入所できないことがあります。また、空いているベッドは社会資源であり、有効活用の観点から、入所中に3カ月以上入院すると退所しなければなりません。

特別養護老人ホームに入居した場合の費用は、介護度や個室かどうかによっても異なります。また所得に応じて負担限度額が設定されており、所得の低い人への負担軽減が図られています。 

>>特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは 特徴と探し方

老人介護保健施設 : リハビリを行う“老健”は自宅へ帰ることが目的

“老健”は、自宅へ帰ることを目指し、リハビリを中心とした看護や医療的な管理、日常生活に必要な支援を行う施設です。看護師が夜間も常駐するか、または電話での呼び出し対応が可能であり、常勤の医師も入居者100人あたり1名以上配置されています。(併設の病院・診療所と兼務している場合は、医師が常勤でなくても可能)(※出典4) 薬代など医療的なケアにかかる費用も利用料金に含まれているため、高額な薬や治療などは要求しても断られる場合があります。

自宅復帰のための施設であるため、原則として長期入所はできません。短ければ3ヶ月、長くても半年程度が利用できる期間の目安です。特養よりも医療的な面で手厚いため、介護サービス費が特養より高く設定されています。(※出典3) またリハビリを集中的に行う場合はリハビリを1回行うごとに加算が加わります。利用者ごとの違いが大きくなるため一概には言えませんが、特養よりも高額となります。

>>介護老人保健施設(老健)とは 特徴と探し方

介護療養型医療施設 : “療養型”は新しい施設へ転換する方向へ

“療養型”は、「療養病床」と言われることもあります。病状は比較的安定しているが、介護度が高く自宅での生活が難しい高齢者が多く入院している現状があります。

治療の必要がないのに、家庭の事情などから病院で生活する「社会的入院」につながるおそれがあることから、国は介護療養型医療施設を減らす方針を打ち出していました。2017年度までに廃止して老人保健施設などへ転換する計画でしたが、思うように進んでいません。 そのため2016年12月に、「療養病床の在り方等に関する議論の整理」を公表。3つの新しい施設への転換を改めて進めていくこととし、新しい受け皿として介護医療院が示されています。(※出典5)

介護保険の施設サービスの中では医療的なケアが高度であるため、一日あたりの施設サービス費が最も高く設定されています。(※出典3) 加算の有無によって一概には言えませんが、利用料は老健と同等かそれ以上となります。

>>介護療養型医療施設(介護療養病床)とは 特徴と探し方

これら3つの施設は、介護保険を利用して使うことができる施設サービスです。入居の申込みについては、まずは担当のケアマネジャーに相談しましょう。 今まで介護保険の利用がない方の場合は、市町村の介護保険課や地域包括支援センターに相談して、介護認定を受ける手続きを進めてください。介護が必要な状態と認められれば、担当のケアマネジャーが、介護保険のサービスを使ってより良い暮らしを送るためにケアプランを作成してくれます。

施設によって要介護度以外にもさまざまな入所条件があるので、まずはしっかり条件に該当するかどうかを確認しましょう。 また費用負担の軽減のための制度もあります。期日までに申請手続きが必要となるなど、不慣れな人には手続きがわかりにくいかもしれません。この点もしっかりと確認するように気をつけましょう。

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※出典1 厚生労働省「平成27年介護サービス施設・事業所調査の概況」 ※出典2 毎日新聞2016/6/30付「要介護者、奪い合い 施設空き出始め」 ※出典3 厚生労働省 介護サービス情報公表システムHPより (特養の料金について / 老健の料金について / 介護療養施設の料金について) ※出典4 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について ※出典5 厚生労働省社会保障審議会 療養病床の在り方等に関する特別部会「療養病床の在り方等に関する議論の整理」(平成28年12月20日)