ヘルパーにお願いできることは?爪切り、口腔ケア、耳掃除はOK?

「ヘルパー」と一口に言っても、介護保険における訪問介護だけではなく、広義では家政婦紹介所などから派遣され、家事全般や病人のお世話をしてくれる家政婦さんや、施設・病院で働く人も「ヘルパー」と呼ばれることがあります。

しかし、介護保険制度のもとでのヘルパーは、ケアプランに則った支援以外のことは、原則できないことになっています(※1)。

ところで、「ヘルパー」「ホームヘルパー」という言い方はあくまで通称で、正式には「訪問介護員」と言います。「ケアマネジャー」が正式には「介護支援専門員」であると同様、お役所の考える名称は、どこか堅苦しいですね。

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ヘルパーにできること・できないこと 爪切り、口腔ケア、耳掃除はできる? 

 

 ヘルパーができるのはどんな人?

施設のように多くの職員が協力し合ってケアするのと異なり、ヘルパーは自宅で暮らしている利用者さんに1対1でのサービスを提供するため、常に高いスキルと経験が求められます。そのため、訪問介護を提供できる人は、かつては「ヘルパー2級以上の者」と定められていました。

2013年度からは、ヘルパー2級に代わる新たな資格として、「介護職員初任者研修」が誕生し、ヘルパー2級・1級の養成は行われなくなりました。しかし、呼称や資格は引き続き有効です。

訪問介護で仕事をできるのは、以下の人たちです。

介護福祉士(国家資格)

ヘルパー1級・2級(訪問介護員養成研修修了者)

介護職員初任者研修修了者(2013年度より実施)

介護職員基礎研修課程修了者(2006~12年度まで実施)

これ以外にも、社会福祉士、看護師・准看護師など、都道府県ごとに政令で定められた資格取得者や研修修了者が訪問介護の仕事に就くことができます。就労時には、研修の修了証明書の提出が必須のため、無資格の人がこっそり働く、などということはできません。

介護の専門職としての役割を担う

訪問介護の仕事は、利用者の自宅に訪問し、炊事や洗濯・入浴・排せつ・食事の用意や片付け等、利用者に対する身の回りのお世話が中心です。認知症の人への支援では、声かけや見守り的な援助も行います。しかし具体的な支援内容は、利用者の心身の状況に応じて100人いれば100通りあります。

それを決めるのはサービス担当者会議(※2)であり、その内容がケアプランに反映され、必要な支援が決められます。

介護保険が始まった当時は、ヘルパーを家政婦と混同し、必要な時にはいつでも来てくれて、なんでもやってもらえると思っている人がたくさんいました。しかし現在では介護保険の役割も広く浸透したため、ヘルパーは介護の専門職としての技量を、存分に発揮できる環境にあるのです。

※1 定期巡回・随時対応サービス、小規模多機能型居宅介護など、新たに創設された地域密着型サービスにおける訪問介護は、この限りではない。

※2 すべてのサービス提供事業者が参加し、利用者・家族の意向の確認や事業者から専門的意見を求め、ケアプランの修正や最終決定をする場。訪問介護事業所からはサービス提供責任者が出席する。

ヘルパーの仕事範囲はどこからどこまで?

ヘルパーの仕事内容は、通常の掃除や洗濯、調理など、日常的な家事を提供する「生活援助」、食事介助、入浴介助、排泄介助、あるいは歩行介助など、直接利用者の身体に触れる「身体介護」の2種類に分類されます。この二つは、単独でも組み合わせても提供されますが、提供される時間はそれぞれ決められています。具体的な内容やサービスの提供時間は、本人やご家族の要望を聞いたうえで作成したケアプランに基づき、訪問介護事業所との話し合いで決められます。

ただし、ここで注意してほしいのが、掃除や洗濯、調理などの「生活援助」を提供できるのは、援助を必要とする本人に対してのみとなっていることです。掃除を行えるのは、あくまで利用される本人の部屋や、トイレなどの共用部分に限られますし、洗濯や調理も、本人のみに対してのサービス提供です。「ついでに、家族の分も洗濯してほしい。」「家族の分まで多めに調理をしてほしい。」などは、介護保険制度上認められていません。 そして、この「生活援助」と「身体介護」の二つに分類されない「話相手になってほしい」「通院の間、診察が終わるまで病院で待っていてほしい」「一緒に散歩に行ってほしい」などは、介護保険制度では原則ヘルパーに頼んでもできないことになっています。「一緒に散歩」ができるのは、歩行が不自由で介助が必要な場合など、「ヘルパーの同行が必要」とケアプランに記されている場合です。

買い物については、「調理」がケアプランに盛り込まれており、そのために必要な材料を買うのはOKですが、「洗剤が切れているから来る途中で買ってきて」などのケアプランに明記されていないイレギュラーなお願いは、原則頼めません。同様に、「郵便物を出してきて」「銀行でお金をおろしてきて」「新聞を代読して」などの「代行サービス」も、原則としてできません(利用者の心身が不自由で身体障害者として認められている場合などは、この限りではありません)。

公的制度上では中立・公平性を守ることが大切

また、「お世話になっているのだから……」と時折、お礼として金品を渡したり、一緒にお茶を飲んだりお菓子を食べたいという利用者もいますが、これも断るのがヘルパーの常識です。なぜなら、介護保険は国の公的な保険制度のため、ヘルパーには公務員に準じる中立・公平な立場が常時求められているからです。ずいぶん堅苦しいと思われるでしょうが、もしヘルパーが「この家はなにもくれないから」とサービスの手を抜くようになったらどうですか?

訪問介護を毎日利用しているような場合には、日によって異なるヘルパーが入ることもよくあります。すると「Aさんのやり方は気に入っているけど、Bさんは嫌い」など、仕事内容だけでなく、人として合う・合わないという相性がかならず出てきます。

しかし、先の「中立・公平性」があるため、「いつも(気に入っている)Aさんにお願いしたい」という「ヘルパーの指名」は、原則できません。もちろんヘルパーの勤務体制の都合で「たまたま毎週同じ人」ということは十分にあり得ます。そしてBさんのやり方に不満や不備があれば、きちんとケアマネジャーや訪問介護事業所にサービスの不満内容を伝えることで、提供されるサービスを改善したり、場合によっては別のヘルパーに入ってもらうなどの解決法を考えてもらうこともできます。

なかには、学校を出たばかりで料理の経験がない若いヘルパーが、利用者に叱られながら料理を教わるというおかしなことも起こっています。これを「利用者が育ててやっているようでほほえましい」ととるか、「プロなのにあり得ない」ととるかは、利用者とそのご家族の考え方次第なのです。

住んでいる町によっても違うヘルパーの支援範囲

ヘルパーの支援内容は、利用者の心身の状況や家族の有無、生活環境など、総合的に判断して決められるため、「Cさん宅ではやってもらえるのに、Dさん宅ではできない」、ということもよくあります。

実は、どこまでがヘルパーの支援範囲なのかは、制度をつくった厚生労働省はおおざっぱにしか決めていません。そのため、市区町村(保険者=介護事業所に開設指定を与えている)ごとにマイナールールがある場合があり、援助を行える同居家族がいると認められる場合、生活援助は原則NGの町もあれば、同居家族がいる場合でも、個々の事情を鑑みて柔軟に対応してくれる町もある、というわけです。

事業所やヘルパーはある程度選べても、住んでいる町を引っ越すわけにはいきません。もし、「やってもらえないこと」について不満がある場合は、まずはケアマネジャーに相談し、それが市の条例などで定められている「ルール」であるなら、なぜそう決まっているかなど、行政に突っ込んで確認することもできます。

そもそも生活援助の中身ってなに?

生活援助の中心となるのは、

・食事の支度(調理)、配膳、後片付け ・本人が日常着用している衣類の洗濯(干す、たたむ、しまう、必要に応じてアイロンがけなど) ・本人が寝起きしている布団を干す、シーツやタオルを換える ・本人が日常使用する部屋(寝室、茶の間・リビングなど)や浴室・洗面所・トイレの掃除

などです。

どうしてヘルパーはやってくれないの?

「1人分だけ調理するなんて不経済だ」「息子の靴下くらい、ついでに洗ってくれたって」「今日は孫が遊びにくるから隣の部屋も片づけて……」。介護保険が始まってから、何万回となくヘルパーが言われ続けてきた、利用者さんやご家族からの不満です。「できません」と断ると、「時間をオーバーしてまでとは言ってないのに、なんて融通が利かない」。ごもっともです。

しかし、なんと言おうと、家族の分の食事、家族の分の洗濯、本人が使っていない部屋の掃除は、介護保険制度のルール上、ヘルパーに頼むことはできません。たとえ同居の妻が倒れて要介護になり、1人残された夫にまったく家事の心得がなくても、です。

なぜなら、介護保険とは税金と国民から徴収した介護保険料、そして利用者の支払う1割負担の料金で成り立つ社会保障制度だからです。サービスが提供されるまで、ケアマネジャーやサービス提供事業者とも話し合いを重ね、合意したうえでサービスが開始されているはずです。そこに「ついで」や「今回だけ」の入りこむ余地はありません。

もちろん心やさしいヘルパーの中には、「やってはいけない」ことを知りつつも、親切心からやってしまう人もいるでしょう。「1人分の調理」に関しては、少し多めに作って残りは夕食用にとっておく、ということは普通に行われています。あくまで「本人用」としてですが、ヘルパーが帰った後にそれを夫が食べたとしても、それはヘルパーの預かり知らぬことですね。

でも、「Aさんは同居の夫が高齢でかわいそうだからついでにやるけど、同じ状況でもBさんはわがままだからやりたくない」ということになったらどうでしょう。前回お話したように、介護保険制度上で提供されるサービスには、常時、中立・公平性が求められます。サービス利用者に対する、好き・嫌いの感情で仕事を選ぶことはヘルパーには許されません。

スープの冷めない距離に住む家族も「同居」とみなす?

こうした、サービス利用者からの問い合わせが多すぎるせいか、「同居家族がいる場合の生活援助は、介護保険制度では基本的にはできない」とする地域が増えました。家族が日中仕事で留守にしていても、利用者の昼食は仕事に出かける前にあらかじめ準備出来るはずだし、掃除や洗濯も、家族が在宅中にやればいい、というわけです。

なにしろ、市区町村によっては、「同居していなくても、普段から食事を届けるなど様子伺いできる範囲に家族が住んでいる」場合は生活援助が使えない、としている市区町村もあるのです。もちろん、個々の事情を勘案した例外はありますが、いわゆる「家事サービス」的な生活援助は、独居の方や老老世帯など、近隣に支援者も無く、そのうえで炊事や洗濯といった、生活上最低限の支援を必要とする人たちが利用できる、と考えましょう。

ヘルパーにやってもらえないことはこんなにある!

「日常的な家事」と「非日常の家事」とはどんなものでしょうか?

ヘルパーができる生活援助の目安は、「本人に直接かかわることで、本人では行うことが困難で、それがなされないと日常生活に支障が生じること」に限られます。

さて、では以下の家事は、ヘルパーにやってもらえるしょうか。

窓拭き、換気扇の掃除、キッチンの排水溝の掃除、ベランダの掃除、床のワックスがけ

電球の取り換え、家具の入れ換え、大量のごみの処分、修理・修繕、車の洗車

・庭の掃除、植木の水やり、草むしり、ペットの世話

・手の込んだ料理、おせちなど特別な料理

・年賀状などの代筆、公共機関への支払い・銀行でのお金の引き出しなどの代理人行為

・来客の応対

布団干し、おしゃれ着の手洗い、アイロンがけ

上記のうち、ヘルパーができるのは、窓拭きと電球の取り換え、それもご本人がいつも使う居室ならOKでしょう。ほかには、毎日使う布団を干す、最低限のアイロンかけくらいです。あとは基本的にはNGです。

なぜできないの? 誰が決めたの?

大がかりな大掃除や手間のかかる特別料理は「日常的な家事」とは認められず、庭掃除・植木の水やり、ペットの世話は、本人の日常生活上、必要な援助とは認められません。

いくらご本人が「うちのカレーはルーを使わず3時間かけて作るけど、日常の料理よ」と言っても、ヘルパーのサービス提供時間を考えれば、認められないことは明らかです。

介護保険のヘルパーを、家政婦さんのように、頼めばなんでもやってくれる。このように思っている方が依然として多いようですが、介護保険のヘルパーは、高齢者が自立した生活を在宅で継続するために、介護保険で必要と認められた支援を行うことが大前提であり、家政婦さんのように、庭の草むしりから話し相手まで、何でもやってくれる便利屋さんではありません。ですから、いくらご本人が、日常的に手間のかかる料理を作っているので支援内容として認めてほしいと思っても、「日常的な家事」とは認められない場合も多々あるのです。

介護保険法に、「これらの行為をやってはいけない」と、具体的に禁止されているわけではありません。しかし、介護保険の財源が家事に使われるのはいかがなものかとの声も大きく、生活支援の部分は提供時間が削られるなど、法改正のたびに使いにくいものになっています。

また、ヘルパーができることと、頼んでもできないことの区別は、市区町村によっても、事業所によっても異なります。市町村ごとのローカルルールについては前回お話しましたが、事業所によっては、ヘルパーの安全を確保するために「○センチ以上の脚立など高所の作業はNG」など、細かいルールを設けているところもあります。こうしたルールは、最初に事業所と契約を結ぶ時に、きちんと説明があるはずですし、サービス開始前に必ず確認することが大事です。

なんでもしてほしい場合は自費サービスを依頼する

ご本人が自分の力ではどうしてもできないことをサポートするのもヘルパーの重要な仕事です。たとえば、

・ヘルパーが材料を切るなど調理の下ごしらえをして、ご本人が味付けをする。

・ヘルパーが洗濯ものを干して取り込み、ご本人がたたんで収納する。

・ヘルパーが掃除機で床を掃除し、本人が棚の上など無理なく動ける範囲の拭き掃除する。

こうした行為は、ご本人の自立を促すこととして、ケアプランに位置付けられます。

もし、どうしてもイレギュラーな家事をお願いしたい場合は、ケアマネジャーに相談しましょう。たとえば、「いつもは同居家族がいるけれど、3日間だけ留守にするので生活援助が必要」など、ご本人の緊急性や必要性に応じて、認められる場合も多くあります。

また、多くのヘルパー事業所では、介護保険外サービスも提供しているので、ケアプランに位置づけられた生活支援以外の家事をお願いしたい場合は、全額自己負担での自費サービスを利用しましょう。自費なら、1時間いつものサービスに入った後、自費で1時間延長して話相手をお願いしたり、イレギュラーな家事をお願いすることも可能です。

制度内のサービスといっても、最終的には人と人の信頼関係がものを言います。ヘルパーがやっていいことかどうか迷う場合は、「持ち帰ってケアマネジャーに相談します」と対応するかもしれませんし、気を利かせて「今日は時間があるから」と、やってくれるかもしれません。そこは「記録に残らない・残してはいけない支援」の部分となり、利用者がいつもそれを期待することは、やはり許されることではありません。

支援能力の高さは実は「観察力」にある

身体介助とは、身体にまひがあるなどで身体を自由に動かせなくなった方や、寝たきりの方に対して、直接身体に触れる介助で、その方の生活に必要な支援を行うことを言います。自分で自分の身の回りのことができにくくなった人に対して、いつまでも尊厳をもって暮らしていただけるように、ヘルパーは「その方にとって必要な支援はするが、ご本人ができることまでは手を出さない」ことを念頭に置いて動きます。 ヘルパーが行う介助の中で、俗に言う三大介助とは、排泄介助、入浴介助、食事介助の3つです。

・排泄介助―トイレなどでの衣類の上げおろし、後始末、おむつ交換

・入浴介助―浴槽入浴やシャワー浴の介助、手浴・足浴・清拭

・食事介助―食事を食べてもらうための介助

いずれの介助も、ただ手や身体を動かして手伝えばいいというのではなく、ご本人の身体に異常がないか、前回の訪問時と比べて、様子はどうかなど、常に異変を見極める観察眼をもって接するのが、プロのヘルパーです。

例えば、排泄介助では、その時の排泄物の状態、色や量なども観察します。入浴介助では、皮膚に湿疹やあざ、床ずれができていないか、また爪の状態など全身の観察を行います。食事介助では、食べる速度や食べる量、食事に対するご本人の意欲などもチェックします。

もし、前回の訪問時と比べて明らかに様子が違っていたり、異常を認めた場合は、ヘルパーは連絡ノートにその旨を記入し、必要と判断すれば速やかに事業所の責任者やケアマネジャーに報告し、その後の指示を仰ぎます。こうした日々の些細な変化を、ヘルパーの気づきとして報告することで、病気や身体の不調に気付き、予防につながるケースは多いものです。

移乗介助では安全のため道具を使うことも

ベッド上での体位変換にはじまり、ベッドから車いす、車いすからトイレの便座への移乗介助も、ヘルパーの重要な仕事の一つです。移動介助は、ボディメカニクスの根拠に基づいた介助方法により、ご本人が安心してヘルパーに身を任せていただけるよう、安全に安楽に行われなくてはなりません。時にはスライドボードやリフトなどの福祉用具を使うことで、体重80キロの人でも45キロのヘルパーが問題なく移乗させることができます。

移乗後も、たとえば車いす上で姿勢が崩れていないか、ご本人が痛みを訴えないかをチェックし、姿勢が安定しないようであれば、クッションやマットレスなど福祉用具を使ってご本人にとって適切なポジションになるよう整えるなど、「点」ではなく時間が連続した「面」で支援するのも、重要な視点です。単なる「見守り」はできませんが、常に介助をしながら見守ることも、ヘルパーの重要な仕事です。

また、毎日の洗顔や整髪、ひげ剃り(※1)、爪切り(※2)、着替えの介助もヘルパーの重要な仕事です。身支度が自分でできない人に、こうした整容(みだしなみ)を、1日複数回提供するケースもあり、こうした場合は介護保険でも訪問介護ではなく、定額払いで1日に何度も利用できる「定期巡回・随時対応サービス」という便利なサービスが使えます。

もし、要介護度が重くなっても、こうした巡回型のサービスを使うことで、ひとり暮らしの高齢者でも在宅での生活を継続することができます。 ※1……電気シェーバーによるひげ剃りのみ。剃刀を使うひげ剃りはできません。 ※2……巻き爪など変形した爪の爪切りはできません。

ヘルパーができる「医療行為でない行為」

かつてヘルパーは、耳かき、爪切りなどの日常的な行為であっても、介護保険制度の中では医療行為にあたるとみなされる介助について「できないこと」としていた時期がありました。それは主に、道具を使う医療に準じた行為(体温測定、血圧測定)、ひげそり、散髪、爪切りなど刃物を使う行為、褥創(床ずれ)患部のガーゼの取り換えや座薬の挿入、目薬の点眼など薬剤に関する行為などです。

「えっ、体温測定は医療行為なの?」と思う人も多いことでしょう。でも、医療職の専門性を守るあまり、医療職と家族以外は、爪切りすらできなかったのです。 このヘルパーができない医療行為について、家族ができる爪切りを、なぜヘルパーはしてはいけないの?お風呂に入った後に軟膏を塗ってもらうことも医療行為なの?といった疑問の声が、利用されている方や家族から多く上がっていたことも事実でした。

しかし、平成17年にこの規制は緩和され、ヘルパーもできる仕事が一気に増えました。

特に以下の10項目は、医療行為かそうでないかもグレーゾーンにありましたが、このとき晴れて「医療行為ではない」と認められ、ヘルパーができる仕事になりました。

1) 水銀体温計・電子体温計による腋下の体温測定、耳式電子体温計による外耳道での体温測定

2)自動血圧測定器による血圧測定

3)新生児以外で入院治療の不要な者へのパルスオキシメータ装着(指先にはさんで、血液中の酸素飽和度を測る測定器の使用)

4)軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について専門的な判断や技術を必要としない処置(汚物で汚れたガーゼの交換を含む)

5)軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)

6)湿布の貼付

7)点眼薬の点眼

8)一包化された内服薬内服(舌下錠の使用も含む)

9)座薬の挿入

10)鼻腔粘膜への薬剤噴射の介助

※5)~10)については、本人や家族から事前に依頼があること、医師など医療職の指導に従って介助すること、となっています。

爪切り、口腔ケア、耳掃除も解禁!

さらに、法律上は医療行為であってもヘルパーができる行為として、以下の6つのケアもその規制が緩和されました。

1.爪切り、爪やすりによるやすりがけ(爪と周囲に異常がなく、かつ糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合)

2.歯ブラシや綿棒などによる歯、口腔粘膜、舌に付着した汚れの除去

3.耳垢の除去(耳垢塞栓の除去を除く)

4.ストーマ装着のパウチにたまった排泄物の廃棄(ストーマ及びその周辺の状態が安定している場合等、専門的な管理が必要とされない場合には、肌に装着したパウチの取り替えも可)

5.自己導尿の補助としてのカテーテルの準備、体位の保持

6.市販の使い捨て浣腸器(いわゆるイチヂク浣腸)を用いた浣腸

上記は、家族は普通に行っている行為であり、「衛生面や整容面で必要」としてケアプランに位置付けられていれば、ヘルパーでも行えることとなりました。それでもなお、市町村や事業所によっては上記のいくつかをグレーゾーンとしているところもあります。どうしてもヘルパーにやってもらいたい場合は、ケアマネジャーに相談し、サービス担当者会議で手順や方法について話し合ってもらいましょう。

広がるヘルパーの医療行為

さらに平成24年からは、指定研修および実地研修を修了した介護職に限り、たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろうまたは腸ろう、経鼻経管栄養)のケアもできるようになりました。

たんの吸引や経管栄養は、長期在宅生活を可能にするために必要な医療的ケアですが、現状ではそれほどニーズが高くなく、訪問看護で足りているなどの声もあり、すべてのヘルパーがこの行為ができる研修を修了しているわけではありません。

しかしいずれ、重度の人がたくさん在宅に戻ってくる時代になれば、訪問看護師だけでは用が足りず、訓練を受けたヘルパーに安心して上記の医療行為をお願いできる時代がくるでしょう。

将来や現状の家族介護に役立つ介護職員初任者研修

ヘルパーの技能や知識は、介護職員初任者研修によって学ぶことができます。 介護職員初任者研修とは介護を学ぶ全ての人の入門となる講座であり、介護職を目指す方のほとんどがまずはこの資格を取られています。

介護職員初任者研修で身に付く技能や知識は仕事だけではなく、大切なご家族を介護する際や、ご自身が介護される側になったときにも大変役に立つ技能です。 また、最近では介護職員初任者研修にて認知症についても詳しく学ぶため、日常における認知症の家族への支援についてもしっかり学ぶことができます。