高齢者のひとり暮らしがもたらす問題と対策
高齢化が進む中、大きな社会問題となっているのが高齢者の孤立です。
内閣府の高齢社会白書によると、2010年の65歳以上の高齢者人口におけるひとり暮らしの割合は、男性約139万人(11.1%)、女性約341万人(20.3%)でした。
▼高齢者がひとり暮らしを選ぶ理由
・頼れる家族がいないから
・住み慣れた地域を離れたくないから
・介護者に転勤が多いから
・ひとりでの気楽な生活を望んでいるから など
ひとり暮らしを望む高齢者の暮らしを、地域で支えるための仕組みが求められています。
高齢者のひとり暮らしがもたらす問題
高齢者のひとり暮らしがもたらす問題はいくつかありますが、ここでは代表的なものをご紹介します。
生きがいの低下
ひとり暮らしでも近所付き合いをしたり、困った時に頼る人がいたりすれば問題はありません。
しかし会話をする相手もなく、社会から孤立してしまう高齢者は多く見られます。
すると生きる希望をなくし、生きる気力さえ失ってしまうのです。
高齢者の消費者被害
ここ数年、深刻な社会問題を引き起こしている振り込め詐欺。
高齢者を狙った事件が多く、その理由としてひとり暮らしの高齢者が社会から孤立していることが挙げられます。
高齢者が不安に感じているお金や健康、孤独などをさらに煽り、親切なふりをして財産を狙う悪質業者や詐欺グループが後を絶ちません。
認知症などの症状の進行
一緒に住んでいる家族がいれば、すぐに異常な行動に気付くでしょう。
しかし1人の場合には指摘する人がいないため、認知症であることにも気付かず、さらに症状が進行することが考えられます。
また、火の元や健康面などの問題も深刻です。
高齢者による犯罪
もともと前科や犯罪歴がある高齢者は、家族や親戚と距離を置くことが多いようです。
それがさらなる孤立を招くことで、犯罪を繰り返してしまいます。
孤独死
誰にも知られずに息をひきとり、誰にも気づかれないまま放置されてしまう孤独死。
死亡理由はさまざまですが、自殺も少なくありません。
近所づきあいが少ない、あるいは頼れる知り合いがいないことで、死後長い間にわたり気付かれないことも多くあります。
高齢者のひとり暮らしへの対策
これらの問題を解決するためには、いくつかの方法があります。それぞれの事情や環境に応じて、最もよい方法を探してみましょう。
施設に入る
健康であれば老人ホームや高齢者マンション、介護が必要であれば特別養護老人ホームなどの介護保険施設やグループホームなど、状態に合わせて適した施設に入所してもらう方法です。
ただしいずれも有料なので、経済的な負担にも考慮が必要となります。
遠距離介護の準備をする
介護の担い手となる子どもにそれぞれ家庭がある場合など、なかなか同居は難しい面があります。
将来親がひとり暮らしになることがわかっているのなら、遠距離介護について早いうちから調べておくといいでしょう。
>>遠距離介護のはじめ方
>>飛行機の介護割引や見守りなど遠距離介護者にうれしいサービス
見守りサービスの活用
さまざまな企業や団体が提供している、見守りサービスを利用するのもよい方法です。
遠くに住む家族に代わって、ひとり暮らしの高齢者の安全を確保してくれるでしょう。
担当者が自宅に訪問したり、センサーで確認したり、あるいは電気やガスの使用状況による異常発見など、さまざまなサービスがあります。
>>高齢者の見守りサービスとは
成年後見制度を利用する
もし判断能力が低下しており、悪質な業者の被害にあうのではないかと心配なら「成年後見制度」を利用するという手段があります。
>>成年後見制度とは
これは契約などの法律行為や財産の管理をしてくれる代理人を立てる制度です。メリットやデメリットを把握したうえで、利用するかどうかを決めるといいでしょう。
デイサービスの活用
転倒やヒートショックなどの危険性がある入浴。ひとり暮らしの高齢者は、動けなくなってもすぐに助けてもらうのが難しいことから、デイサービス(通所介護)の入浴を利用するといいでしょう。
>>通所介護(デイサービス)とは 特徴と探し方
まだ元気なうちなら、銭湯の利用を勧めてもいいかもしれません。
また、定期的に外出したり他人と交流を持つことで、要介護や認知症予防の効果も期待できます。
火災対策をする
ひとり暮らしの高齢者で注意したいのは、火災です。
コンロをガスからIHクッキングに変更したり、本人が調理をしないようにヘルパーさんや宅食サービスを頼むなどの方法もあります。
暖房器具を正しく使えているかや、電源コードの上に物が乗っていないかなど、漏電の危険性も考慮しなければなりません。
>>電気ストーブでの火災事故に要注意! チェックしたいポイントは?
また、もしもの時のために火災保険に加入しておきましょう。高齢者の方が認知症の場合には、火災保険が下りる条件をよく確認しておくことをお勧めします。