寝たきり介護の強い味方!床ずれ防止用具の種類と選び方

寝たきりの方の在宅介護において、ぜひ検討していただきたいのが「床ずれ防止用具」です。床ずれは在宅介護の介護者を悩ませる症状のひとつ。利用者ご本人はもちろん、介護する方の負担を軽減するには専用の福祉用具が効果的です。床ずれ予防に役立つ、床ずれ防止用具の基本情報を押さえておきましょう。

 

床ずれ防止用具とは?主な役割と入手方法

床ずれを予防する

「床ずれ防止用具」は、その名のとおり床ずれを防ぐ福祉用具のこと。車椅子のように一般的に知られているアイテムではないので、「具体的に何をしてくれるものなの?」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

まずは、床ずれのリスクや防止用具の役割、入手方法を確認していきましょう。

寝たきりの方に懸念される「床ずれ」とは

寝たきりの状態が続くと起こりやすくなる床ずれは、医学的には「褥瘡(じょくそう)」と呼ばれる症状です。

主な原因は、寝具が接する部位(特に骨が突き出た部分)への体圧の集中です。仰向けの場合、以下のような部位に発症します。

  • 後頭部
  • 肩甲骨付近
  • 仙骨や尾骨付近(腰やお尻)
  • かかと

寝たきりによって持続的に圧迫されている部位は血流が悪くなります。初期段階は赤みを帯びる程度ですが、悪化すると毛細血管が破壊され、しだいに皮膚組織が壊死してしまいます。

床ずれは、麻痺や拘縮などの影響で寝返りができない方や、栄養状態が悪く痩せている方、むくみがみられる方に発生しやすいため、早めに適切な対策をとることが重要です。

体圧分散には床ずれ防止用具が効果的

床ずれを防ぐには、体位を変換させて体圧がかかる部位を変えるのが基本です。

床ずれ防止用具は、部分的な圧迫を弱めたり体圧がかかる時間を少なくしたりすることができ、体圧の分散に効果的です。一般的な床ずれ防止用具はマットレスのような形状をしています。

床ずれ防止用具があれば、介護者の方が体位変換をする回数を減らすことができ、心身の負担軽減にも大いに役立つでしょう。

福祉用具は介護保険でレンタルできる

床ずれ防止用具は福祉用具貸与の一種なので、介護保険を利用してレンタルできます。対象は要介護2〜5の方です。保険適用の対象であれば、原則1割(所得に応じて2割または3割)の自己負担で床ずれ防止用具を借りられます。

介護用品のお店やインターネット通販で購入することも可能です。

ケアプランに組み込む必要がある

福祉用具貸与の制度を利用して床ずれ防止用具をレンタルする場合は、介護サービス計画(ケアプラン)に加える必要があります。

ケアプランは介護者自身で作ることも可能ですが、一般的には介護支援の専門員であるケアマネジャーが作成します。その後、福祉用具専門の相談員のアドバイスを受けながら、適切な床ずれ防止用具を選ぶという流れになります。

床ずれ防止に有効な介護アイテム

介護ベッド

次に、 床ずれ防止用具の種類を具体的にみていきましょう。

静止型マットレス

静止型マットレスは、ウレタンフォームやゲルのような柔らかい素材で作られているのが特徴で、主に床ずれの予防のために用いられます。

ソフトな感触で身体を包み込むように広い面で支え、体圧がかかる部位を適度に分散させることができます。自力での寝返りや体位変換が可能な方の予防的な利用に適しているため、すでに床ずれが発生している方には不向きです。

タイプは主に二つで、ベッドのマットレスの上に敷く「オーバーレイタイプ」と、ベッドに直接敷く「リプレイスメントタイプ」とがあります。リプレイスメントタイプならマットレスは不要です。

圧力切替型エアマットレス

圧力切替型エアマットレスは、エアセルという空気が入った筒状のパッドで構成されています。

電動のエアポンプによって空気を送り込み、エアセルを膨張・収縮させることによって体圧がかかる部分を変えることができます。

静止型マットレスより体位分散効果が高く、自分で寝返りが打てない方や、すでに床ずれが発生している方にも有効です。

車椅子クッション

床ずれのリスクがあるのは、ベッドで寝ているときだけではありません。車椅子を長時間利用することが多い場合は、座面に接している坐骨や尾骨付近に床ずれが発生しやすくなります。

効果的に予防するには、車椅子用の床ずれ防止クッションがおすすめです。マットレスタイプと同じように、ウレタンフォームやゲルなどが用いられていて、お尻に集中する体圧を分散させることができます。

シンプルなクッション状のタイプのほか、姿勢保持機能がプラスされたタイプや背中までサポートできるタイプなど、さまざまな仕様のものがあります。

車椅子と一体的に利用できるタイプなら、福祉用具貸与としてレンタルすることが可能です(要介護2〜5の方が対象)。

体位変換器

身体の下に挿入し、体位を変えることができる体位変換器も床ずれ予防に有効です。寝返りなどの介助をサポートするタイプと、動力を使って自力での寝返りを促すタイプに大別されます。

形状はまくら型、スネーク型、バナナ型のほか、ベッドのサイドレールに固定して使えるスライディングシートというタイプなどがあります。

体位変換器も福祉用具貸与の一種で、要介護2〜5の方が対象です。ただし、姿勢保持のみを目的とするものは対象外です。

栄養管理やスキンケアにも配慮を

床ずれを防ぐには、ご紹介したような床ずれ防止用具を使うだけではなく、日々の栄養管理やスキンケアに気をつけることもポイントです。

なぜなら、栄養不良によって痩せすぎたり、皮膚の抵抗力が低下したりすると体圧の影響を受けやすくなるからです。また、汗や失禁による皮膚の蒸れ・ふやけも床ずれのリスクを高めてしまいます。

食事ではタンパク質やビタミン類をしっかり摂取できるように配慮し、身体状況に応じて食べやすく工夫しましょう。入浴できないときは身体を拭き、皮膚を清潔に保つよう心がけてください。パジャマやシーツ類も、汗などで濡れたら清潔なものにとり替え、蒸れないようにケアしましょう。

適切な床ずれ防止用具を選ぶ基本ポイント

床ずれ防止のための体位変換

最後に、さまざまなタイプの中から、適切な床ずれ防止用具を選ぶポイントをお伝えします。

寝返り能力や床ずれの状態

床ずれ防止用具を選ぶにあたって確認しておきたいのは、利用者がご自身で寝返りできるかどうかです。

前章でもご説明しましたが、全身用の床ずれ防止用具(マットレス)には静止型と圧力切替型の2タイプがあります。そのため、まずはこのいずれかを選択します。

自分で寝返りができる方や、ベッドの上で姿勢を変えることができる方は、床ずれを未然に防ぎ、安眠をサポートする静止型のマットレスが適しています。

反対に、自分で寝返りや身体を動かすことができない方は、静止型より体圧分散効果が高い圧力切替型のエアマットレスがおすすめです。すでに発生している床ずれの悪化を防ぐ効果も期待できます。

マットレスの厚みや反発力

床ずれ防止用のマットレスは、厚みや反発力も慎重にチェックすることをおすすめします。

薄いマットレスを使うと底づきしやすくなるため、一般的には厚みがあるほうが床ずれを防ぐ効果は高いと考えられています。ですが、厚みがありすぎて身体が深く沈みこむ状態になると、沈んだ部分に体圧が集中してしまうので注意が必要です。

適切な厚みや反発力は利用者の体格によって異なるため、ケアマネジャーや福祉用具のプロに相談しながら選びましょう。

床ずれ防止用具で体位変化の負担を軽減

床ずれ防止用具は、苦痛をともなう床ずれの予防に効果的なだけではなく、寝たきり介護の負担を軽減してくれる心強いアイテムです。

昼夜を問わず定期的に体位変換をするのはかなりの重労働ですから、専用の福祉用具を使わない場合、介護をする方の心身の疲弊にもつながってしまいます。介護者にとって無理のない介護生活にするためにも、寝たきり状態の方を介護する際は、床ずれ防止用具の利用を積極的に検討しましょう。

(文・ 吉村綾子)

監修者:山岸駿介
監修者:山岸駿介

理学療法士。臨床経験は7年。
急性期から慢性期、スポーツ分野など幅広い分野を経験。医療・介護・スポーツなど幅広い分野のリハビリに携わり、老若男女に正しい運動で、健康的な生活を送るサポートしている。