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介護費用と家族【介護とお金の気になること】

介護とお金の気になること01

介護の現状とお金の問題に詳しい、「特定非営利活動法人 くらしとお金の学校」のファイナンシャル・プランナー等の方々に、介護にまつわるお金の問題について書いていただきました。

執筆:ファイナンシャル・プランナー、行政書士 川畑 静美

介護費用がかさみ、資金不足とならないためにも家族の協力は重要です。しかし、特定の家族に負担がかかってしまうとトラブルになりかねません。

介護の負担が、相続の時点で相続争いの原因にもなっています。家族がどのように協力するのがよいのか、そして相続争いを避けるために、どのような方法があるかを解説します。

皆様は、相続争いは高額な遺産を分けるために争っているというイメージがありませんか。現実は裁判所が発表している資料(「司法統計」平成27年度)によると、遺産分割事件全体のうち約75%は遺産額が5000万円以下です。さらに、1000万円以下の遺産額で約32%もあります。このように財産が少なくてももめやすいのです。

kurakane10_介護費用と家族のグラフ

子どもの中でも介護に関わった子供とあまり手伝わなかった子どもが同じ遺産額では納得できないですよね。円満な相続のためにどのような対策をしておけばいいのか、順を追って見ていきましょう。

被介護者と話し合い理解を得ておく

親子で介護についての話し合いをする際、どうしても介護する側は、子どもとして何ができるかという気持ちで話をするようですが、大切なのは、介護される側の気持ちを尊重することです。高齢になると会話がテンポよくとはいきませんが、時間をかけて在宅で介護を受けたいのか、施設に入るのかなど、まずはじっくりと親の気持ちを聞くことです。

介護サービスを利用する際、ケアマネージャーさんに任せるのではなく、介護保険の手引きやガイドブックなどから介護保険制度を勉強し、必要なサービスを上手に組み合わせて利用しましょう。

また、親と同居していない子どもからは、同居していた分の家賃が浮いて、親のお金で生活していたのでは、などと言われます。親の預貯金から介護費用や必要な物を購入したときなど、しっかり記録をし、お金の入出金を後日説明できるようにしておきましょう。相続でよくもめるのは、もっと預貯金があったはずだと、他の子どもから追及され説明できないことがあるからです。

親族と話し合い理解を得ておく

親の介護のやり方に兄弟間で意見がかみ合わず、もめたことで疎遠になることもあります。介護の役割分担の情報を共有するようにしましょう。

相続では、亡くなった人の看護や介護をした相続人に対し、貢献度によって相続財産を上乗せする「寄与分」という制度があります。しかし、親の面倒を見たからといって、遺産を多くもらえるわけではありません。献身的な看護や親の財産が減らないように寄与していれば別ですが、一緒に住んでいただけでは難しいのが現実です。

親が元気なうちから兄弟間で普段から会って、コミュニケーションをとる機会をできるだけ増やすよう心がけることです。

家族介護と相続

セミナーで「元気な時に、相続の準備しておいた方がいいですよ」とお話しすると、「うちはたいした財産はないから」「兄弟の仲もいいから問題ない」と考え、何の事前準備をしていない方がほとんどです。そして結果として「争続」となることがあります。

とても仲がよい兄弟でも、遺産分割協議に参加できない配偶者が絡んできて、もめなくてよいことまでもめる要因となることもあります。

遺産分割でもめた結果、調停や審判で決着がついても、一度もめてしまうと親戚としての行き来はなくなり、親の法事で顔を合わせることもありません。

相続の相談を受けていて感じるのは、義務よりも権利を主張する方が増えていることです。結婚して家を出た後、親の面倒をまったく見ていないのに、親が亡くなり相続が起きると、同居していた兄夫婦に対して「相続の権利は同じでしょ、」と平気で言う女性がいました。

相続対策はそれぞれのご家庭に合った対策をする必要があります。

まずは、エンディングノートを使い、財産を書き出してみましょう。もし、借金があれば出来るだけ生きている間に返済しておきましょう。完済が無理であれば、家族にはこれくらいの借金がある、ということを伝えておきましょう。家族が知らないと借金もそのまま相続してしまいます。

そして相続人を確定し、相続対策をどのようにすればいいのかを考えてみましょう。相続対策として、遺言書の作成、生前贈与、生命保険の活用、信託制度など様々な方法があります。

kurakane10_介護費用と家族のイメージ図

①遺言書の作成

「まだ元気だから遺言書を書く必要がない」と言われますが、元気なうちだからこそ、冷静に考え、書けるのではないでしょうか。歳を重ねるとますます書きにくくなります。認知症になると遺言書は書けません。

遺言書を書く際に、その内容を実現するための遺言執行者を選任しておけば、スムーズに手続き出来ます。遺言執行者とは、遺言者が亡くなり相続が発生したときに遺言書に書かれた内容を実現するために名義変更などの手続きを行う人です。

遺言執行者は未成年者、破産者以外であれば誰でもなることができますが、遺産に対して利害関係のない、相続についての知識を有する専門家を指定しておくほうがよいでしょう。

遺言書とは、遺言者が亡くなったあとの、法律関係を定める意思表示です。遺言で相続人や相続割合を自由に決めることができ、介護をしてくれたお嫁さんに財産を遺贈として渡すことも出来ます。

遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言と3種類ありますが、専門家としては公正証書遺言をおすすめします。

公正証書遺言は、公証役場で、公証人に遺言の内容を話して作成してもらい、実印を押印します。費用はかかりますが、原本が公証役場に保管され、安全で確実な方法といえます。また、付言事項といって自分の想いや相続人等に感謝の気持ち、願いなどを書いておきます。付言事項には法的拘束力はないのですが、遺言者の気持ちを伝えることで相続人間の感情的な対立を防ぐ効果があります。

弁護士、司法書士、行政書士などの専門家に相談して、想いをこめた遺言書を作っていただきたいと思います。

②生前贈与の活用

その1 暦年課税制度は、1月から12月の1年間の贈与された合計額が110万円を超えた場合に、贈与された側に贈与税がかかることです。

贈与を受けた財産は、贈与を受けた日の時価で評価します。財産の評価方法は、原則として相続税の財産評価の方法と同じです。

110万円まで贈与税がかからないことを利用して、生前贈与により財産を減らすことができます。

その2 相続時精算課税制度は、生前に財産を推定相続人に贈与し、実際に相続が発生したときに、生前贈与した分を含めて相続税を計算して清算する制度です。この制度は父親と長男など1対1での選択となり、その後の贈与はすべてこの制度で行い、非課税範囲内でも、その都度申告をします。2,500万円までは非課税で、超過した場合は20%の贈与税が課されます。

一度この制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与については、暦年課税制度には戻れません。直接的には相続税の節税にはなりませんが、介護をしてくれた子どもに資産を移すことで、資産の有効活用となります。また賃貸物件などを贈与すると、その後の賃貸収入は子どもの資産となるので相続財産を減らす効果もあります。

生命保険の活用

生命保険は年齢、性別、資産状況により相続対策として活用できます。生命保険を使った相続対策のポイントとしては、以下の点が挙げられます。

・死亡保険金は受取人固有財産です。
・死亡保険金は遺産分割協議の対象ではありません。
・死亡保険金は500万円×法定相続人の人数までは非課税です。

例えば、介護をしてくれた子どもに対して他の相続人と差をつける方法として生命保険を使って解決する方法があります。契約者を子ども、被保険者を親、受取人を子どもとして終身介護保険に加入します。保険料を親が毎年、子どもに贈与すれば相続対策となります。また、親が介護状態になれば介護保険金として使えます。介護保険金として使わない場合は、死亡保険金を子どもが受け取れます。

④信託制度

皆様は、信託という言葉をお聞きになって、信託銀行や投資信託を思い浮かべるのではないでしょうか。平成19年に信託法の改正があり、信託法が緩和され、家族信託という文字通り家族を信じて託すという信託が注目され始めました。

なぜ、家族信託が注目されるようになってきたのか、それは超高齢社会となり、長生きになってきたからです。医療技術の向上により、身体面の寿命は伸びていますが、認知症などにより意思表示ができなくなり、判断能力が衰えるリスクが生じてきました。

家族信託を活用することにより

・親が認知症になった場合も積極的な相続対策ができます。
・子どものいない夫婦が、老後の資産の行く末を託し、安心することができます。
・障害を持つ子どもに財産を残し、生涯にわたり、その財産を管理できます。

など、遺言書や成年後見制度では難しいことも家族信託を活用、併用することにより実現できます。詳しくは要介護時期の財産管理をご参照ください。
>>要介護時期の財産管理【介護とお金の気になること】

高齢化が進む現在、認知症のリスクも高くなり、介護の問題はさけて通れません。ぜひ元気なうちから家族、親族間でコミュニケーションを密にとり、介護のこと、お金のことをよく話し合っておきましょう。

すでに介護が必要な状態になっているのなら、介護認定を申請しつつ、主介護者は誰になるのか、兄弟間での役割分担を決めましょう。実際の介護に関われないのであれば金銭的な負担をする、仕事があるなら週末だけ介護をする、あるいは電話による安否確認など、できることは色々あります。それをしないまま介護を任せていると、不公平感が残り、相続の際に財産分与を含めたもめごとの原因となりかねません。それだけに、最初の話し合いが大切です。


執筆者

川畑 静美

行政書士かわばた福祉法務事務所代表 相続、遺言専門の女性行政書士。
日本福祉大学通信教育部福祉経営学部卒。 家族信託普及協会正会員・行政書士
ファイナンシャルプランナー・社会福祉士・終活カウンセラー・オムツフィッター


介護とお金の気になること:バックナンバー

  1. 介護保険制度の行方
  2. 介護にいくらかかるか
  3. 費用との関係で考える「終のすみか」
  4. 介護のためのお得な情報
  5. 介護費用はどのように準備すればよいか
  6. 民間介護保険
  7. 地域で異なる介護事情と老後の住まい
  8. 介護費用が足りない時は?
  9. 要介護時期の財産管理
  10. 介護費用と家族