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地域で異なる介護事情と老後の住まい【介護とお金の気になること】

介護とお金の気になること01

介護の現状とお金の問題に詳しい、「特定非営利活動法人 くらしとお金の学校」のファイナンシャル・プランナー等の方々に、介護にまつわるお金の問題について書いていただきました。

執筆:ファイナンシャル・プランナー 長沼 和子

定年後の住まい選びや老親の施設選びのためには地域によって異なる介護事情を知っておく必要があります。今後はさらに地域格差が広がることが予想されます。介護保険料を支払っているからといって、日本全国、どこで暮らしても一律のサービスが受けられるわけではありません。2015年の介護保険法改正で要支援1,2の家事援助とデイサービスが市町村の地域支援事業(*1 ページ下部参照。以下同)に移行しました。それによって、要支援(日常生活に支援が必要な状態)になった時、全国共通の介護サービスではなく、各市町村の実状に応じたサービスを受けることになったからです。

市町村という「地域完結社会」

国は、市町村(保険者)というひとまとまりで医療・看護・介護・福祉が完結する社会を作ろうとしています。概ね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域が、範囲の目安になります。その歩みは次の通りです。

2006年 介護保険法改正で、高齢者の総合相談窓口として「地域包括支援センター」(*2)を各市町村に創設する。その時、グループホームも都道府県指定から市町村の指定に変わり、「地域密着型サービス」が新設される。指定・指導・管理は保険者である市町村。

2006年 「小規模多機能型居宅介護」(*3)や「夜間対応型訪問介護等」(*4)の新設。

2012年 介護と医療の両方を提供できる「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」(*5)の新設。

2014年 「複合型サービス」(*6)の新設。

2016年 小規模な通所介護も地域密着型サービスへ移行される。

2018年 ケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所の指定権限も、都道府県から市町村への委譲される予定。

2015年に要支援1、2の家事援助とテイサービスが市町村の運営になったということは、今後、要介護1、2の家事支援とデイサービスも市町村の運営になることが予想されます。掃除や洗濯、買い物等の介護サービスを一方的に受ける高齢者ではなく、できることにチャレンジして社会参加・社会的役割を持つことで生きがいや介護予防につなげていく方向が見えてきます。その仕組みづくりは老親が生きている間には間に合わないかもしれませんが。。。

定年退職して「終の住まい」を探している方へ

高齢化の波が過ぎた地方自治体は高齢者用施設が充実しています。

以前に、北海道・旭川市の『第4期介護保険事業計画』を調べていて、介護サービスは大都市が一番と考えていた私は驚きました。在宅サービスや地域密着型サービスが、東京区部と比較して旭川市の方が断然充実していたのです。

『平成26年度 介護保険事業状況報告』(厚生労働省)によれば、介護保険施設(特別養護老人ホーム、保健施設、介護療養型医療施設)は西高東低で西日本地方が多く、四国の徳島県と高知県、山陰地方の鳥取県と島根県、積雪量が多い北陸の富山県、新潟県、福井県、そして鹿児島県などで多い傾向にあります。高齢化の先進地域である西日本、北陸の各県は介護サービスの基盤がすでに出来あがっています。その基盤に上乗せするかたちでケアハウス、グループホーム、サービス付高齢者向け住宅等の居住系サービスの拡充も図られています。

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(グラフはクリックすると拡大します)
出典:厚生労働省「平成26年度 介護保険事業状況報告(年報)」より作成

また、「お泊まり」のある地域密着型サービスが充実しているのは、九州地方の長崎県、鹿児島県、中国地方の島根県、岡山県、鳥取県、そして愛媛県、青森県、石川県、北海道などです。

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(グラフはクリックすると拡大します)

出典:厚生労働省「平成26年度 介護保険事業状況報告(年報)」より作成

移住という手もある

岡山県にある老人保健施設を訪問した際、理事長に「東京は若い生産的な都市であってほしい。福祉の充実ということなら、最期までこちらで暮らすことが可能ですよ。高度医療は望めませんが、普通の病気なら病院のベッドも空いています。年金をもって住み替えませんか?」と勧められました。「日照時間が日本一長くて暖かいですよ」とも。

内閣府から「日本版CCRC(*7)」構想推進が提案されたのは、2015年6月(まち・ひと・しごと創生会議)のことです。その提案は、「東京圏をはじめとする地域の高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくりの実現・普及を目指す」とあり、先の理事長の見解と共通しています。

反対に介護保険施設が極端に少ないのは、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、滋賀県、大阪府の7都道府県で、今後、高齢者人口が急増する地域です。その上、これらの都道府県では在宅介護を可能にするための地域密着型サービス(8種類)の供給量が少ない傾向もあります。住み慣れた地域で、地域の特性に応じて、多様で柔軟なサービス提供が可能な「地域密着型サービス」が創設され、10年経ても首都圏では増えていません。

筆者が知る範囲で、地域住民も組織してサービスを提供しているのは品川区、練馬区、和光市など少数です。

今後の介護をめぐる状況はますます厳しくなることが予想されるので、地域差をにらんでの「移住」も選択肢のひとつになりそうです。

 

*1: 2006年度から市区町村が要支援や要介護になるおそれのある高齢者に対して介護予防のためのサービスを提供していたのが地域支援事業です。2011年、介護サービス基盤整備強化法が成立、介護保険法の一部が改正され、地域支援事業の中に「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」が創設されました。

*2:高齢者のために包括的および継続的な支援を行う地域包括ケアを実現するための中心的役割を果たす。

*3:利用者の居宅、または利用者がサービス拠点に通ったり、短期間宿泊したりして、提供される入浴、排泄、食事などの介護、そのほかの日常生活を送るうえで必要となるサービス。

*4:夜間の定期的な巡回や利用者からの連絡で、利用者の居宅を訪問して行われる

*5:定期的な巡回や利用者からの連絡によって、利用者の居宅を訪問して行われる入浴、排泄、食事などの介護や療養生活を支援するための看護、そのほかの日常生活を送るうえで必要となるサービス。

*6:利用者の居宅への訪問、または利用者がサービス拠点に通ったり、短期間宿泊したりして、提供される入浴、排泄、食事などの介護や療養生活を支援するための看護、そのほかの日常生活を送るうえで必要となるサービスなどや機能訓練をいいます。

*7:高齢者が移り住み、健康状態に応じた継続的なケアや生活支援サービスを受けながら、自立した社会生活を送ることができるような地域共同体。米国には数多く存在している。


執筆者

長沼 和子

NPO法人くらしとお金の学校代表。創立当初から高齢者問題に関心が強く、高齢者施設・住宅の取材や見学のコーディネイト、住み替え相談を担当。2010年から始めた連続「介護FP養成講座」はリピーターが多く、今年で6期目を迎える。同年、NPO法人みぬまで暮らす会(さいたま市)の設立に参画、高齢者向けのコミュニティ・カフェを開設。高齢者の暮らしから見えてくる課題は講座にフィードバック。


介護とお金の気になること:バックナンバー

  1. 介護保険制度の行方
  2. 介護にいくらかかるか
  3. 費用との関係で考える「終のすみか」
  4. 介護のためのお得な情報
  5. 介護費用はどのように準備すればよいか
  6. 民間介護保険
  7. 地域で異なる介護事情と老後の住まい
  8. 介護費用が足りない時は?
  9. 要介護時期の財産管理
  10. 介護費用と家族