食事介護の食べこぼし対策

食事介護の食べこぼし対策

在宅介護を行っていると、食べこぼしに関してストレスを感じる人が多いようです。

食事は毎日のことなので、そのストレスは介護をしている人にとって相当なものとなるでしょう。

高齢者にとっても、「家族に負担をかけて申し訳ない」「きれいに食べたいけどできない」といった事を抱いてストレスを感じているのです。

また『食べること』は、自立した豊かな生活を送る為の人として最も基本となる機能であり、誰もが最期まで自分の口から食べ続けたいものです、どうしたら良いか見ていきましょう。

食べこぼしの原因

食べこぼしの原因

食べこぼしの主な原因には次の3つがあります。

  • 身体機能や嚥下機能の低下
  • 姿勢の悪さ
  • 食器があっていない

食べこぼしの原因が分かれば解決に近づきます。これらの3つの原因について以下でご説明しますので、ご自身がお悩みの状況にはどれがあてはまるか、ぜひ考えてみてください。

身体機能の低下

高齢化による身体機能や嚥下機能の低下から体が思うように動かなくなり、また視力低下から食べこぼししやすくなることがあります。

脳梗塞などで麻痺がある高齢者も、嚥下機能の低下等で食べこぼす事が増えます。さらに頬などの口腔筋力の低下や、歯が失われている事の原因もあります。

例え治療の必要がない高齢者で有っても満足に食べる事が難しくなる事もあります。

姿勢が悪い

身体機能の低下が原因ではないケースもあります。

食事のときの姿勢が悪くて、口に運ぶまでに溢したり、前屈みの姿勢の為に口から溢す場合があります。

単に姿勢が悪いのであれば、ちょっとした工夫で改善されます。

食器があっていない

本人に合わない、使いづらい食器で食事をする事も、食べ溢しの原因となります。

また、テーブルやイスが体に合っているかも、食べ溢し予防のポイントです。

姿勢が悪くないか、食器が本人に合っているかの食事環境のチェックは、介護者の大切な役割です。

食事介護の食べこぼし対策

食事介護での食べこぼしの対策

姿勢を改善する

食事の際に姿勢が悪いと、うまく食べることができません。

椅子に座る場合は、クッションを敷く等をして倒れないように支え、食べやすい姿勢を取りましょう。

また、脳梗塞の後遺症で麻痺が有る方は、椅子に座ると体が傾きます。この場合もやはりクッション等を使い、体が倒れないように支えましょう。

・姿勢のチェックポイント

チェックポイント1:両足がかかとまでしっかり床についているか?

両足が床についていない場合、踏み台を使って調整します。

チェックポイント2:上体が少し前かがみになっているか?

上体が前かがみにならないよう座椅子やクッションを使いましょう。

チェックポイント3:口とお皿の距離が離れすぎていないか?

口とお皿の距離が遠いと食べものが口からこぼれやすくなります。

・車椅子のチェックポイント

車椅子の場合は、大きさが本人に合っているかを見直してみます。

体が小さい人が大きな車椅子を使用すると、転落の危険もあります、サイズの合う車椅子に変えましょう。

また、福祉用具専門相談員かケアマネジャーに相談し適切な車椅子の選定とアドバイスを貰うと良いです、定期的なメンテナンスも期待できます。

歯の調整や口の周りの筋肉を鍛える

口の周りの筋肉を鍛えたり、義歯で失われた歯を補ったりすることで、食べこぼしを減らせる場合があります。

・口を鍛えるトレーニング

口腔の衰えが、食べこぼしの原因となっているケースがあります。改善するにはトレーニングが効果的です。

口腔のトレーニングには様々な物がありますが、例えば、舌をだして上下左右に動かす「ベロ出し体操」を行うと、口の筋肉や舌の柔軟性を鍛えられます。

口腔のトレーニングの詳細については、こちらの記事も参考にしてみてください。

また、脳血管疾患等の病後のリハビリには専門職からのサポートを得る事も重要です。

ケアマネジャーなどに相談をしましょう。

・歯について

歯に不安がある場合は、歯科や訪問歯科で自歯や入れ歯の調整を行うと、食べこぼしが軽減されることがあります。

また、自歯や入れ歯がないと咀嚼の力が弱くなり軟らかいものに偏った食事から食欲低下や低栄養に至り、機能低下から誤嚥性肺炎や窒息事故の危険も考えられます、ケアマネジャー等に相談をしましょう。

使いやすい食器を使う

いつも使っている食器が使いやすい物かも、一度確認をおすすめします。

・自助食器

自助食器という、手指が不自由な人でも使いやすい食器やスプーンなどが販売されています。

こうした物の利用も検討し、なるべくストレスなく食事ができる道具を選ぶことが大切です。

・子供・ベビー向けの食器

また自助食器だけでなく、子供・ベビー向けのプラスチック食器などを使っている方もいるようです。デザインやカラーが豊富ですし、100円ショップでも販売されているため、手に入りやすいというメリットも。

・スプーンやテーブルのサイズ確認を

スプーンやフォークは本人の口のサイズに合っているかも確認しましょう。大きすぎると、口の中にうまく入れられず溢してしまう事があります。

最後に、テーブルの高さも重要です。椅子とテーブルのバランスが悪いと、食べ物が見え辛くなり、食べ溢しにつながります。

このように食事環境を見直すことで、食べ溢しを防ぐことが可能です。

食器をうまく使えない例

食事の時に使えるグッズ

食事の時に使えるグッズをいくつかご紹介します。つかみやすさや溢れにくさ等が追求されたグッズで、食べ溢しにお悩みの方にお勧めです。

楽々箸 クリップタイプ

楽々箸グリップタイプ

バルーン

バルーン

すくいやすい食器(有田焼)

すくいやすい食器

kiss コップ用

Kiss コップ用

食事用エプロン

食事用エプロン

食事用エプロン (超撥水タイプ)

食事用エプロン(超撥水タイプ)

食事介助の方法

食事介助の方法

 

食べ溢し予防の為に、食事介助の方法をきちんと押さえておく事も大切です。食事介助の方法について、ポイントをご説明します。

姿勢を整える

まず、姿勢を整えます。座った姿勢を保てる場合は、椅子や車椅子に座らせてください。 この際、上半身を少し前にかた向けましょう。そうする事で、噛みやすく、誤嚥予防になります。 ベッドを使って上半身を起こせる場合は、ベッドを60度以上の角度に起こし、クッションなどを使って顎をひく姿勢にしてください。 座った姿勢が難しい場合は、ベッドを30度ほどかたむけて上半身をもちあげ、後頭部に枕などをあて顎をひきます。

食事環境を整える

食事介助の時間を十分に確保した上で、テレビやラジオがついている場合は消し、食事に集中できる環境を整えましょう。 同じ視点からテーブルが眺められるよう、介助者は対象者の横に座り、対象者にはエプロンをかけます。

水分で口腔内を潤す

高齢者は口腔内が乾きがちでむせやすいため、食事前に水分で口腔内を潤してください。

口に運ぶ量は少なめにし、飲み込み終えてから次を

飲み込みやすいよう、一度に口に運ぶ量は少なめに。きちんと飲み込まれたのを確認後、次の食べ物を口に入れましょう。焦って飲み込むと誤嚥につながるため急かさずゆっくり見守ります。

終了後のケア・確認

食後、食べ物が口腔内にないか確認し、残っている場合は取り除きます。すぐに横になると逆流のおそれがあるため、30分程度は食事中の姿勢を保ちましょう。 最後に、日々の健康状態を確認するために、食事量や食事内容を記録してください。

介護保険を利用し訪問看護や理学療法士、言語聴覚士による訪問リハビリ等から、適切な介助方法をご家族が見て学ぶ事もお勧めです。

※この記事は2020年3月時点の情報で作成しています。

監修者:福田 菊乃
監修者:福田 菊乃

ケアマネジャー(介護支援専門員)社会福祉協議会の職員として13年勤務。現在は要介護認定調査員を行っている