家庭でできる陰部洗浄の方法

家庭でできる陰部洗浄

入浴ができない時やおむつ交換の時に行いたい陰部洗浄は、臭気を予防する以外にも本人や家族にメリットが大きなケアです。この記事ではベッド上で行う陰部洗浄について、準備するものからやり方、注意点などを介護家族向けの内容にまとめました。ぜひご参考ください。

 

陰部洗浄とは

陰部洗浄とはいつ・どんなことをするか

陰部洗浄では、入浴ができない時やオムツ交換の時に石鹸や陰洗ボトル(簡易シャワー)で汚れを洗い流します。爽快感が得られますし、排泄物や汗などで汚れたり湿った状態になりやすい陰部を清潔に保つことで、強い臭気や皮膚トラブル、尿路感染症を予防します。

陰部洗浄はいつやる?

石鹸を使った陰部洗浄は、入浴ができない日に1日1回行います。オムツ交換の時には、臭気や汚染がひどくなければ石鹸を使って毎回行う必要はありませんが、陰洗ボトルを使って汚れを洗い流すようにしましょう。

排泄時には陰部清拭とセットで行いましょう

オムツ交換の時には、陰部洗浄と陰部清拭をセットで行います。陰部を洗い流した後に、蒸しタオルで陰部を拭き、乾いたタオルで仕上げる方法が基本的なやり方です。家庭ではオムツ拭きで仕上げたり蒸しタオルだけで拭き上げたりと、ご本人の好みに応じて様々なやり方で行われています。

オムツをしている部分は蒸れやすいため、排泄物に触れたところ以外のお尻や腰の部分も清拭すると爽快感が得られます。拭く場所によって、タオルの面を変えるようにしましょう。

陰部洗浄で準備するもの


陰部洗浄は、あらかじめ次の物品を用意してから行いましょう。

用意するもの

  • ビニールシートや防水シーツ
  • フラットタイプの大人用紙おむつ
  • 低刺激の石鹸と柔らかい素材のガーゼ(1日1回)
  • ぬるま湯(40度以下)を入れた陰洗ボトル
  • おしり拭き/ふき取り用のペーパー
  • 使い捨て手袋

入浴ができない日には1日に1回、石鹸を使った陰部洗浄を行います。石鹸は洗浄力のあるものよりも、弱酸性などの低刺激のものを選ぶといいでしょう。高齢者の肌は乾燥しやすいため、保湿効果のあるものがお勧めです。しっかりと泡立てて使ってください。また、陰部洗浄用のすすぎのいらない洗浄剤もあります。

陰洗ボトル(簡易シャワー)の作り方

陰洗ボトルは専用の福祉用具もありますが、空のペットボトルを使って簡単に作ることもできます。

陰洗ボトル(簡易シャワー)の作り方図

500mlのぬるま湯を1回で使いきることはないので、小さいサイズのペットボトルで充分です。使った後は乾かして再び使えますが、定期的に交換することをお勧めします。

陰部洗浄のやり方

陰部洗浄のやり方について

陰部洗浄のやり方を説明します。30分以内にオムツ交換まで終わるように手早く行いましょう。

石鹸を使った陰部洗浄の手順

環境を整える

まず、寒くないように室温を調整し、上半身を少し上げます。 ベッドが濡れないように、お尻の下にビニールシートや介護用の防水シーツを敷きます。オムツ交換の途中でやるのであれば、使用したオムツの上で行います。それ以外のタイミングで行う際にも、フラットタイプの大人用紙おむつ(尿取りパッド)を敷いて行いましょう。

上を向いて寝た状態でズボンを膝まで下ろし、膝を立てて軽く足を開いてもらいます。

陰部を洗う

ガーゼでしっかりと石鹸を泡立て、洗う場所によってガーゼが皮膚に触れる面を変えながら洗っていきます。

●女性の場合

外陰部の汚れや分泌液を陰洗ボトルで洗い流します。石鹸を泡立てたガーゼで恥骨部や鼠径(そけい)部から洗い、汚れの溜まりやすい大陰唇と小陰唇の間も洗います。この時、尿路感染症を防ぐため前から後ろに向けて一方向で洗うように注意しましょう。

●男性の場合

男性の場合は性器を持ち上げて、尿道口から下に向けてぬるま湯をかけて洗っていきます。亀頭の包皮の内側や陰嚢の裏側もしわを伸ばしながら洗いましょう。

洗い流す

泡はおしり拭きでふき取ってから陰洗ボトルで洗い流します。その後、おしり拭きまたはふき取り用のペーパーで水分をふき取ります。泡や水分が残ると皮膚トラブルの原因になるので注意しましょう。こするのではなく押さえるようにふき取ってください。

臀部も忘れずに

続いて横を向いてもらい、臀部を洗います。

オムツ交換時の陰部洗浄の手順

陰部洗浄はオムツを交換した際にも行うと良いです。ただし、臭気や汚れがひどくなければ石鹸を使って行う必要はありません。陰洗ボトルとおしり拭き(またはふき取り用のペーパー)を使ってしっかりと汚れを洗い流し、水分をふき取るようにしましょう。

陰部洗浄の注意点

陰部洗浄の注意点について

陰部洗浄をする際には、次の3点に注意しましょう。

恥ずかしさに配慮しましょう

介護全体にいえることですが、特に排泄や陰部に関するケアには羞恥心や自尊心への配力が必要です。具体的には、カーテンを閉める、手早く済ませる、露出は最小限に済ませるといった点を心掛けましょう。

洗浄時には一緒に皮膚の状態をチェック

陰部洗浄では、陰部周辺にかぶれや赤みやただれがないかをチェックしましょう。

また、腰やお尻の骨が出ている場所が赤くなっていたら、初期段階の褥瘡(じょくそう)かもしれません。硬さや熱感などの異常がないかを確認し、かかりつけ医に相談しましょう。

泡はしっかりと泡立て、きれいに流しましょう

石鹸は、皮膚への刺激を避けるためにしっかりと泡立てて使いましょう。手早く陰部洗浄を行うためにも、泡で出てくるボディソープを使うと便利です。

また、泡が残ってしまうと皮膚トラブルの原因になるので気を付けましょう。鼠径(そけい)部や陰毛の部分、皺になっているところ、男性の場合は陰嚢の裏側が泡の残りやすい場所です。

水分をしっかりふき取るのも蒸れを防ぐためにも大切です。

まとめ

入浴できない日には石鹸を使って陰部洗浄を行いましょう。臭気を予防できますし、本人の不快感を軽減できます。また、皮膚トラブルや尿路感染症を防ぐためにも、陰部を清潔に保つことは大切です。時間がかかりますし皮膚にも負担がかかるので、においや汚れがひどくなければオムツ交換の際に毎回石鹸を使う必要はありません。陰洗ボトルで汚れを洗い流しましょう。

必要な物品を用意しておき、羞恥心や自尊心に配慮しながら手早く行いましょう。特に石鹸を使っての陰部洗浄は、ベッドが濡れてしまったり泡が流しきれなかったりと、最初のうちは難しいと感じるかもしれません。まずはヘルパーさんにお願いをして、やり方を教えてもらってから家族が行うようにしてもいいですし、台風などでヘルパーさんが来られない時だけ家族が行うようにしてもいいでしょう。

ケアマネジャーと相談し、介護者にも介護を受ける本人にも負担がかからない方法を見つけてください。

※この記事は2020年6月時点での情報を基に作成しています

監修者:陽田 裕也
陽田 裕也 (ひだ ゆうや)

2001年、介護福祉士養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得し特別養護老人ホームにて介護職員として勤務する。
その後、介護支援専門員や社会福祉士も取得し、介護以外でも高齢者支援に携わる。現在はソーシャルワーカーとして、 特別養護老人ホームで勤務しており、高齢者虐待や身体拘束、成年後見制度などの権利擁護について力を入れて取り組んでいる。