「リハビリ拒否」に対し、周囲はどう対応すればよい?

「リハビリ拒否」に対し、周囲はどう対応すればよい?

「今の状態より、少しでもよくなってほしい」
大切な家族だからこそ、そう思うのは当然のことです。
しかし、中には本人が「リハビリを拒否してしまうことがある」ということをご存知でしょうか?
少しでもよくなってほしいのに、本人は頑なに拒否をしてしまう。
実はこれ、医療や介護の現場において、珍しいことではありません。
では、本人がリハビリ拒否をした場合、周囲はどのように対応すればよいのでしょうか?
今回は、「リハビリ拒否」についてとりあげていきます。

 

リハビリ拒否の理由は、一つではない

リハビリを拒否する理由は、精神的なものから認知症など病気によるものまで、様々です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

自分の状況を受容できていない

病気やケガなどで自分の運動機能が著しく低下してしまった場合、その状態を受容するまでには一定のプロセスを経ます。
医学的に有名なのが、キューブラーロスという精神科医が提唱した、「死の受容のプロセス」です。

人は、物事を受け入れるまでに、

・否認・隔離(自分は違う、と否定する)
・怒り(なぜ自分がこんな状態に、と怒りがわく)
・取引(なんとかこの状態を脱するためにはどうすればいいか、取引を考える)
・抑うつ(何もできない状態になる)
・受容(自分の今の状態を受け入れる)

5つのプロセスを経る、というものです。

キューブラーが提唱したのはあくまで「死の受容」ですが、これは障害や機能低下にも当てはめることができます。
人によって受容に至るまでにかかる時間は個人差が大きいですが、受容に行きつくまでに時間がかかる場合、リハビリに対しても拒否が強くなる傾向にあるといえます。

認知症による理解力低下

認知症での主症状の一つとして、「理解力の低下」があげられています。
いくら家族や医療従事者、介護従事者がリハビリの大切さを説明しても、認知症の方は大切さを理解することができないか、そのときはわかったと思っても、すぐ内容を忘れてしまい、また同じ質問を繰り返すといったことが起こります。
この場合には、「相手の理解力に合わせて、その都度説明し、理解を得る」ことが必要です。

>>認知症とは

自分の弱い部分を相手に見せたくない

特にご高齢の男性では、多くみられます。
自分の印象を崩したくない、あるいは自分の弱っている姿を見せたくないという思いから、リハビリそのものを拒否してしまうのです。
中には医療者の前では積極的に行っていても、家族の前ではリハビリを断固拒否する、という方もいらっしゃいます。

リハビリの必要性を「家族や施設のため」と考えてしまっている

リハビリは、あくまで本人が行うものです。
しかし、家族が「この状態ではとても自宅で介護できない」「もう少しよくなってもらわないと、施設に迷惑をかけてしまう」など、本人を主体としていない場合、言葉や態度の節々に出てしまうため、本人も伝わります。
その結果、本人がリハビリそのものを拒否してしまうのです。
「なぜ、リハビリを行うのか」その理由を、本人を主体にして考えることが大切です。

「リハビリ=痛くて辛い」と思い込んでいる

リハビリというと「痛くて辛いもの」というイメージが一般的でした。
今のリハビリでは、「本人が苦痛に思わない範囲で、長期的に持続できるリハビリ」となっていますが、お年を召した方を中心に、未だにひと昔前のリハビリイメージが抜けきれていません。
そのため、リハビリそのものを拒否されてしまうのです。

リハビリ拒否に対して周りができること

「リハビリをしたくない」という気持ちを受け止める

リハビリを行うのは、あくまで本人であり、周囲の人ではありません。
よって、リハビリを拒否している場合には、まず「リハビリをしたくない」というご本人の気持ちを受け止めることが大切です。
気持ちを受け止めず、一方的に「何を言っているの?きちんとやらないと、もっと体が動かなくなってしまうよ」などと声をかけてしまうと、本人の「リハビリをしたくない」という気持ちがより強固となってしまいます。
今の状況について、一番辛いと感じているのは、ご本人です。
周囲のものとして、まずは「リハビリをしたくない」という気持ちを受け止めることから、拒否に対する対応は始まります。

家族だけで解決しようとしない

リハビリを拒否している場合、家族だけで対応しようとしてしまうと、自分たちの思いや都合も合わさるため、どうしても解決しにくくなってしまいます。
そこで、リハビリを行う療法士や、リハビリの指示を出している医師、看護師に相談し、「第三者から話を聞いてもらう」ということが、大切です。
家族には言えない理由でも、第三者には話せるといったこともあります。

リハビリを続けた方と情報交換をする場を提供する

リハビリの必要性を理解してもらうための方法の一つとして、「本人同士の情報交換の場を提供する」があげられます。
リハビリを行っている人から、直接自分が不安に思っていることについて話を聞くことで、不安も解消されますし、その方がリハビリによって運動機能が改善している姿を見て、「自分も頑張ろう」という意欲が芽生えます。

リハビリのゴールを明確にする

リハビリを行っても、ある程度の障害やハンデが残ってしまう場合もあります。
そうした時、大事となるのが「本人も含め、リハビリのゴールを明確化する」ということです。
リハビリは、短期間で高い効果があげられるものではありません。
よって、「自分たちの中でゴールを明確化し、一緒でチームとなって取り組む」ことが大切となるのです。
実現可能なゴールを設定することで、本人のやる気も挙げることができます。

まとめ

リハビリ拒否は、家族にとって大きな問題の一つです。
しかし、今の状況で一番辛いのは、介護を受けているご本人です。
思いを受け止めた上で、リハビリを受け入れてもらうには、家族以外にも周囲の協力が不可欠です。
ご家族の不安も、介護や医療関係者にどんどん伝え、「本人を支えるチーム」としてこの問題に取り組まれることを、お勧めします。