介護保険を遠慮なく使っていい理由

介護保険を遠慮なく使っていい理由

介護保険制度が施行された2000年から既に17年が経過しています。

この間、介護サービスを提供する事業所数は増加しつづけ、また、利用できるサービスの種類も増加するなど、要介護高齢者の生活スタイルに合わせた介護サービスを選択できるようになりました。

しかし、テレビやラジオなどマスメディアからは、介護を苦にした暗いニュースがいまだに報道されています。

この背景には、少子化や核家族化の進展など家族形態の変化、具体的には、高齢者単独や高齢者夫婦のみの世帯の増加、介護する家族の高齢化といった問題など、かつての家族だけで介護するということが困難な時代になっていること、また、要介護高齢者自身の遠慮といったことなどが背景になっているものと推測できます。

介護を社会全体で支える仕組みが介護保険制度

介護保険制度は、上述した背景から、要介護高齢者の介護を、従来の主な介護者であった配偶者や嫁、子に代わり、社会全体で支えあおうと仕組み化され、2000年に介護保険制度として施行されました。

福祉ではなく社会保険方式を採用

介護保険制度は、私たちが風邪をひいたときなど体調不良時に、健康保険証を使って医療機関を受診するのと同じような、社会保険方式によるものです。

この社会保険方式を採用する保険は、医療保険、年金保険、労働者災害補償保険、雇用保険があり、5番目に介護保険が制度化されました。

この仕組みは、生活において生じる病気や高齢、労働災害、失業、介護といった事故(リスク)による困窮を予め防ごうとする防貧のための制度です。

介護の必要度を決定する要介護認定

要介護認定は、市区町村に設置されている介護認定審査会において、介護の必要度を判定する仕組みのことです。

この判定結果により、要支援1と2、及び、要介護1から5の7つの区分に分けられ、要介護度区分に応じて介護サービスの利用上限が決定されます。

要介護度に応じて利用できる平等なサービス

要介護認定区分に応じて介護サービスの利用上限が設定されますが、例えば、要介護1の場合、1か月に16万7650円、要介護5の場合は同36万2170円が利用上限となり、介護サービスの利用者本人は、この1割(一定以上の所得がある方は、所得に応じて2割、または3割)を負担する仕組みとなっています。

これは、所得の多寡や扶養の有無によらず、介護の必要度を判断した結果ですので、その時点において平等に分配された介護サービスの利用権利の結果であるといえます。

家族介護という選択肢

社会保険方式による介護保険制度を使った介護サービスを、それでも利用せず家族だけによる介護をし続ける背景には、1つは、夫や妻の介護は、配偶者や子らがするものという義務的な考えによるもの、もう1つは、介護が必要となる以前の時期にあって、例えば夫婦間や子どもなどは「ここまで共に歩んできた」・「ここまで育ててくれた」という情愛感情を背景として、介護を他人に委ねることへの後ろめたさ、罪悪感によるものと考えられます。

家族による介護という選択肢は決して間違いではありませんが、この義務感や罪悪感から介護サービスを利用しないというのであれば、本人や介護する家族のためにも、見直したい考え方と思われます。

公的扶助との違い

本人の意向により介護サービスを使わない理由では、生活保護などの公的扶助と同列の制度であると誤った認識をしており、“お国の世話になったらおしまい”という考えから、利用を拒否している事例が見受けられます。

生活保護は、貧困な状態にある者を対象として、国が最低限の生活を保障することを目的に公費を財源として行う救貧制度のことをいうため、介護保険制度など、事故(リスク)による困窮を予め防ごうとする防貧のためのとは異なる制度です。

自助から互助、そして共助・公助へ

「いつまでも住み慣れた地域と自宅で暮らし続けたい」という願いの実現のためには、自ら運動をするなど健康維持のための取り組みを行う必要があり、これを「自助」といいます。

また、高齢や障碍などにより、1人で生活することが困難となった場合、配偶者や子らが介護することを「互助」といい、これには、この他に友人や近隣住民、ボランティアなどを含めることもあります。

自助や互助による対応だけでは、要介護高齢者や介護者の生活の質を維持できないと判断した時、社会保険方式を採用する介護保険制度の利用を検討します。(「共助」)

さらに、これらをもってしても対応が困難な時は、最終的に生活保護などの社会保障制度(「公助」)を利用することになります。

まとめ

少子化や核家族化、介護する家族の高齢化といった問題が、家族だけで介護することを困難にさせている現状があります。

かつてはこの「互助」による介護の仕組みが一般的でしたが、現代では、それが困難な状況となっており、無理をしてこの状態を維持するならば、いわゆる介護離職へと発展する可能性や、介護者の誰かが過重な介護により体を壊す危険性が生じてきます。

介護者の頑張りすぎが、要介護高齢者の「住み慣れた地域を離れることなく、いつまでも自宅に住み続けたい」という願いを壊してしまう結果ともなり得ます。

今の介護事業者は、要介護者ごとに適切な介護を、サービスとして提供する技術や知識を保有していますので、安心して家族に代わって介護してもらうことができます。

また、時には適切な介護への助言もしてくれるので、要介護高齢者も介護者も、遠慮なく介護保険を使い、自分らしい生活を実現するための機会としてください。

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