高額医療・高額介護合算療養費制度とは?|介護費用負担を軽く

高額医療・高額介護合算療養費制度とは

介護には決まった終わりがないということもあり、介護の費用もいくらかかるという決まった額はありません。そのため、できることなら介護費用は安く抑えたいと考える方は少なくないでしょう。今回は、介護費用の負担を軽くするための制度の1つでもある高額医療・高額介護合算療養費制度についてご紹介します。

高額医療・高額介護合算療養費制度とは?

高額医療・高額介護合算療養費制度とは国保や後期高齢者医療制度などを使っている世帯に、介護保険の受給者がいる場合、世帯単位で医療保険と介護保険の自己負担額の合計金額が「自己負担限度額」を超えた場合に、超えた分の金額が支給される制度です。

限度額は年額56万円が基本となりますが、世帯ごとの所得や年齢によっても限度額が異なります。 健康保険の高額療養費や、介護保険での高額介護サービス費で還付を受けても、合算すると負担額が限度額を超える場合には、超過分が戻ってきますから、医療と介護でダブルの出費がかさんだ方は、チェックしてみましょう。

介護保険は高額介護サービス費に該当する場合は、高額介護サービス費の自己負担限度額の金額までが対象となり、食費、宿泊費、住宅改修費、福祉用具購入費などは含まれませんので注意が必要です。

高額医療・高額介護合算療養費制度の対象者

高額医療・高額介護合算療養費制度を利用できる対象者となるには、次の条件を満たしている必要があります。

  • 医療保険、介護保険サービスの両方を利用していること
  • 同一の医療保険制度(国民健康保険、後期高齢者医療制度、会社の健康保険など)に属する世帯であること

※住民票上の世帯とは異なりますので注意しましょう。

この制度の目的は、医療保険と介護保険の自己負担額が著しく高額になった場合に費用負担を軽減することなので、完全に自己負担がなくなるわけではありません。ある程度の自己負担はあるということを念頭に置いておきましょう。

合算制度の対象となる可能性のある人(例)

複雑な要件がある高額医療・高額介護合算療養費制度の対象者ですが、次のようなケースでは利用できる可能性がありますので、担当役場の窓口に問い合わせてみるといいでしょう。

  • 父親が要介護4、在宅で要介護生活の方。同居の母親は持病の目の病気があり定期的に医療費の支出がある場合
  • 末期がんにより、訪問介護・訪問看護サービスを利用しながら在宅治療で療養生活をしている方
  • 妻は認知症で特養に入居、夫は脳梗塞で病院に入院中の場合

高額医療・高額介護合算療養費制度の計算対象となる自己負担額

この制度を利用できる自己負担額は、年齢や世帯の所得によって細かく決められています。主な負担限度額の適用区分は次の通りです。

後期高齢者医療制度加入者(75歳以上)と70歳以上国民健康保険加入者

住民税非課税世帯(低所得Ⅰ):限度額19万円

住民税非課税世帯で、世帯員全員に所得がない世帯(公的年金控除額 80万円以下)

住民税非課税世帯(低所得Ⅱ):限度額31万円

住民税非課税世帯

一般(現役並み所得者、低所得Ⅰ・Ⅱに該当しない人):限度額56万円

「低所得1」「低所得2」「現役並み所得者」のいずれにも当てはまらない。課税所得が145万円未満の方。

現役並み所得者Ⅰ:限度額67万円

住民税課税所得が145万円以上ある被保険者がいる世帯の方。

現役並み所得者Ⅱ:限度額141万円

住民税課税所得が380万円以上ある被保険者がいる世帯の方。

現役並み所得者Ⅲ:限度額212万円

住民税課税所得が690万円以上ある被保険者がいる世帯の方。

70歳未満の国民健康保険加入者がいる世帯

  • 住民税非課税:限度額34万円
  • 年収210万円以下:限度額60万円
  • 年収210万円超600万円以下:限度額67万円
  • 年収600万円超901万円以下:限度額141万円
  • 年収901万円超:限度額212万円

計算期間は、毎年8月1日から翌年7月31日までの12か月となりますので、当てはまる区分で年間の医療費と介護費用の自己負担額合計が、限度額を超える場合には申請することができます。

・夫婦2人暮らし、70歳以上、低所得Ⅱの場合の計算例

自夫婦2人暮らしでともに年齢は74歳、妻が清掃業務のパートをしており、収入が少しあるものの年金収入も含めて年間200万円前後。そのため、所得区分は住民税非課税低所得Ⅱにあたります。夫は要介護4で小規模多機能型居宅介護を利用。年間の自己負担額は食費・居住費・差額ベッド代を除き35万円。今年は、骨折で入院、手術もしていおり、その治療費が約30万円ほどかかっている。

 

こういった事例の場合、医療費と介護費の自己負担額は年間でトータル65万円になります。低所得Ⅱの限度額は31万円となりますので、支払った額のうち34万円は手元に戻ってくるということになります。

高額医療・高額介護合算療養費制度の利用方法

申請場所

高額医療・高額介護合算療養費制度の支給申請は、毎年7月31日(基準日)時点で加入している医療保険への申請となります。

例えば、後期高齢者医療制度や国民健康保険の場合はお住いの市区町村役場に。協会けんぽや共済組合等に加入している場合には、加入している医療保険者に申請します。

申請方法

高額医療・高額介護合算療養費制度の申請には、「申請書」と「自己負担限度額証明書」を担当の市区町村役場窓口に提出することが必要です。

原則として「自己負担限度額証明書」は各市町村の担当役場で交付を受ける必要があります。ただし、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している人で、対象期間(8月1日~翌7月31日)に転居などをしていない人は自己負担額証明書は必要ありません。

申請時の注意点

  • 市区町村によっては、制度の対象となる人にお知らせが届く場合がありますが、転居をした人や他の医療保険制度から国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入変更した人はお知らせが届かない場合もあります。

また、お知らせが届くかどうかは、各市町村の対応によって差がありますので、非課税世帯の方で介護費・医療費の合計が毎月2万円以上となっている人は、役所の担当窓口に問い合わせてみるといいでしょう。

  • 成年後見人制度を利用している方は、後見人名での申請が必要です。
  • 被保険者が亡くなっている場合は、相続人代表者様(法定相続人または指定相続人)が申請します。

その場合、「申立書」「相続人代表者と、亡くなった被保険者との関係(続柄)」が記載されている戸籍謄本など、必要な書類があります。詳しくは申請先に問い合わせてください。

高額医療・高額介護合算療養費制度の注意点

算定期間は毎年8/1から翌年7/31までの期間

介護保険と医療保険の自己負担額が年間19万円以上の人から受給できる高額医療・高額介護合算療養費制度は、家計の負担を助けてくれるありがたい制度です。しかし、毎年1月1日から12月31日までの医療費控除と異なり、算定期間が毎年8月1日から翌7月31日となるため、意外と忘れがちです。

制度を利用するには医療保険と介護保険を両方使っていないといけませんので、例えば1年間で利用したのが医療保険だけ、介護保険だけ、というケースには使えない制度です。また、計算の結果、支給額が限度額から500円以上の差額がないと使えませんので、19万円の限度額のところを、19万340円の医療費・介護費の支出となっている場合には、対象となりません。

計算対象とならない費用もある

もう一つ、注意しておきたいのが計算対象とならない費用です。高額医療・高額介護合算療養費で計算対象とならないものは主に次のようなものがあります。

  • 医療保険:月単位で支給される高額療養費、高額介護サービス費
  • 介護保険:入院・入所時の居住費や食事負担、差額ベッド代、日常生活費、住宅改修や福祉用具の購入費など

世帯が同じ・扶養家族でも対象とならない場合も

医療費と介護費用を合算して計算する高額医療・高額介護合算療養費制度は、同じ世帯の家族でも、同一の医療保険に加入していないと合算の対象にはなりません。

例えば、祖母が後期高齢者医療制度に加入し、その娘・息子が会社の健康保険にそれぞれ加入している場合には合算できませんので注意しましょう。

高額医療・高額介護合算療養費制度の問い合わせ先

高額医療・高額介護合算療養費制度に関する問い合わせ先は、それぞれの加入している健保組合となります。

高齢の方の場合、国民健康保険や後期高齢者医療制度となりますから、お住いの市区町村の保険年金課に問い合わせてみましょう。

まとめ

医療費、介護費それぞれが高額になったときに使える「高額介護サービス費」や「負担限度額認定」を受けても支出が大変な時、後から年単位で負担を補填してくれる高額医療・高額介護合算療養費制度は、後払いとはいえ、使えるのであれば使って損はない制度です。

離れて暮らすご両親の介護費用を負担しているという方も、ご両親の医療費と合わせてみると活用できる可能性がありますので、確認してみましょう。特別養護老人ホームであっても、支払い金額の負担がじわじわと増えているという方も多い中、こうした制度をしっかり利用して、少しでも家計にかかる負担を軽減できるといいですね。

高額医療・高額介護合算療養費制度はまだ知らない人も多いです。平成30年度に限度額も変わっており、今の限度額を知らないという方もいるでしょう。ぜひ、この記事をシェアして、介護や医療の費用に悩まれている方に情報を共有していただければ嬉しいです。

 ※この記事は2021年3月時点の情報で作成しています。

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監修者:小笹 美和

介護業界・区役所勤務経験を経て、相続コンサルタントに転身。
介護保険訪問調査員など高齢者との1,000件を超える面談実績を持つ。 高齢者にもわかりやすい説明とヒアリング力には定評があり介護にも 強い相続診断士として多くの相談を受けている。
終活や相続・介護と幅広い視野から話すセミナー講師として全国で活動をしている。