どうやって子が親に、終活に興味を持ってもらうように促すか。そしていかに双方ともに納得のいく終活を行うか―。
これは難しい問題です。介護を受けるような年齢、身体状態、精神状態になっている方に「終活」に興味を持ってもらうというのは確かに難しい。
そもそも、現在健康な親に終活のことを切り出せないという方は数多くいるのです。
ですから、まずは「難しい」ということを認識することからはじめましょう。
その上で、どうするのが良いのでしょうか?
終活のイメージを変える
「終活とはなにか?」から始める必要があります。「終活」=「死ぬための準備」というのが世間一般のイメージですね。ですから、「お葬式の準備」や「お墓の準備」をしましょうとイメージがあるのです。それだと死ぬ準備を始めてくれと言っているのと同じですよね。
そのイメージを少し変えるところからはじめましょう。
「終活」とは、「人生の終焉を考えることを通じて自分を見つめ、今をよりよく自分らしく生きる活動」(一般社団法人 終活カウンセラー協会定義)だと理解してください。そこから始めましょう。
お互いに尊重しあうことが大事
「こうすれば正解」「こう言えば納得してくれる」そういうものではありません。
人生、一人として同じ道程はありません。人それぞれ違うのです。
その人の置かれている状況、家族構成、精神状態、様々な要素があって、今が成り立っています。その先にその人の未来があり、そのことを考えていくことが終活です。
「自分らしく」とは勝手に生きるということではありません。その命の個性をしっかりと生きることこそ「自分らしく」ということだと思います。
子(介護者)と親(被介護者)がお互いを認め合い、尊重して生きていくことが大事です。
子世代が終活に興味を持って活動する
親に終活に興味を持ってもらうのに、魔法の言葉はありません。
でも、一つできることがあるなら、それは一緒に「終活」をすること。
子(介護者)が自分の「終活」をやってみましょう。
そうすると何が変わるのか?
第一に「終活」を考える必要がある人が、親(被介護者)だけではなく、子(介護者)でもあることに気付くと思います。
そんなことを親(被介護者)に話をしてあげてほしい。そうすることで「じゃ、私もやってみようかな」となっていくのだと思います。
残念ながら人間の死亡率は100%、誰も死から逃れることはできないし、それは高齢者だけの問題ではなく、若い人にも当てはまるということです。
子世代がまず「終活」に興味を持ち、活動をしてみる。
そうすることで、その大切さ、面白さに気付く。
すると、それが親御さん世代に自然と広がっていくのです。
親が子供に「勉強しなさい!」言って、親がTVを見る。ビールを飲む。
それでは子供は勉強しませんよね。
親が一生懸命に勉強している。その姿を見ると、子供も自然と勉強をするのではないでしょうか?
まずは子(介護者)が終活をやってみましょう! でも、「私はまだ若いから、必要ない」と思われますか?
「終活」とは死ぬための準備だけを指している言葉ではありません。
「終活」とは自分自身のこれからの「生き方」であり、家族のコミュニケーションであると思います。
早いうちから話し合いを
親子が分かり合えずに失敗した例は数多くあります。
双方が納得いく終活をするコツは、「一刻も早く話し合いをして家族の方針をあわせておく」ことであると思います。
お勧めしているのは、“元気なうちに”しっかり話し合いをすること。
>>終活カウンセラーが教える!親子が分かり合うために必要なこと
そろそろ介護の終わりが見えてきて、「急いで亡くなった後の準備をしなくちゃ!」となると、その気持ちは親(被介護者)には伝わってしまいますよね。
皆様が逆の立場ならどう思うでしょうか。
具体的にするべきこと2つ
終活のイベントに行く
具体的にはどうするのが良いのでしょうか?
ひとつは、終活のイベントに遊びに行くというのはどうでしょう?
終活のイベントというと、イメージが暗い感じがするかもしれませんが、そうではありません。非常に前向きなイベントが多いのです。
健康のことを考えるブースがあったり、自分史を作るブースがあったり、結構楽しいものなのですよ。
エンディングノートを書く
もうひとつは、エンディングノートを書くことです。
まずはご自身が書いてみてください。今や書店に行くと様々なエンディングノートが置いてあります。どれを選べばよいか、迷うかもしれません。そんな時は、「簡単そうな」やつにしましょう。
最初から気合を入れすぎて、立派なノートを買う方が多いですが、書けないことが多いのです。ですから、まずは「気軽に」書けるノートを買うこと。
次にエンディングノートを記入する際の注意点。
・好きなところ(書きやすい)から書く
・無理に完成させようとしない
・鉛筆で書く(書き直し自由)
・法的な効力はない(遺言とは違う)
あなたが書くと親御さんも興味を持つと思います。書いたエンディングノートを見てもらうのが一番手っ取り早いですね。
第一歩は「親の気持ちを聞く」
親の気持ちを聞くということも第一歩としてお勧めです。
でもいきなり「お葬式どうしたい?」など聞けるわけもありません。具体的な方法もそうですが、「親が人生において何を大事にしているのか」を聞いておくと、何かの判断をするとき、非常に助かります。
▼親の本心の引き出し方
例えばお父さんに「お父さんの人生を漢字一文字で例えると何?」などクイズ感覚で聞くのはいかがでしょうか。
その漢字が出てきたら「その心は?」と聞いてください。
なかなか出てこないようなら、「私はこの漢字にした。なぜなら…」なんて話してみるのはいかがでしょうか?
そこからは家族ですからきっとお父さんの人生においての話しに花がさくでしょう。もしかしたら全く知らなかったお父さんの一面も窺えるかもしれません。
このように第一歩を踏み出した後、自分が先にはじめた終活についての価値を伝えてみてください。
そうすることで双方が納得のいく終活ができると思います。
キーワードは「一緒に」
一緒に「終活」をやるというのがキーワードになります。
「終活」とは「死ぬ準備」ではありません。「これからの生き方を決める」ことです。
そして、ただ勝手に決めるのではなく、家族との対話をもって決める。
いわゆる「家族とのコミュニケーション」だと思います。
イベントに行くのも、エンディングノートを書くのも全て「コミュニケーション」をとる為のツールにすぎないと思っています。
早いうち元気なうちから、親と子が一緒になって、双方ともに納得のいく終活を探してみてください。
(執筆者:武藤頼胡/終活カウンセラー)
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