施設での看取り~終末期の「看取り介護」とは

施設での看取り

 

現在、施設で生活されているご家族が終末期となり看取りのタイミングとなった場合、施設に入っているとはいえやはりご家族としてはサポートをしていきたいと思われるのではないでしょうか。

また、施設ではの看取りをどのように行っていくかががどのように行われるのか分からず不安という方も少なくないでしょう。

今回は大事なご核家族が施設で看取りとなった時に、施設側ではどのような対応がとられるのか、家族としてどのように対応をしていけばよいのかについてご紹介します。

終末期の「看取り介護」とは

終末期の「看取り介護」とは?

医学的に医療の手を尽くしても回復する見込みがない人に対して、本人の精神的・肉体的負担を軽くして、安らかで穏やかに過ごせるようにする介護が「看取り介護」です。

介護施設では終末期に入り、看取りとなると看取り専用の介護計画が作成され、その計画に則って介護を行っていきます。身体的な介護はもちろんのこと、ほかにも食事は好きな物が中心になったり、家族とおだやかに過ごせるように個室に移動したりなどといった対応がなされます。

また、終末期や看取り介護を家族とともに考えるために、施設から定期的な状況の説明や確認が行われます。

施設での看取り メリット、デメリット

施設への看取り、メリット・デメリット

施設で看取りを行うことによって本人や家族にとってどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

施設で看取りをすることのメリット

施設で看取りをすることの最大のメリットは、やはり専門家が常にそばにいてくれるというところではないでしょうか。家庭で看取りのための介護をするとなれば、24時間365日つきっきりで介護を行うということになります。また例え、24時間の介護が実現したとしても家族が疲弊してしまいます。また、介護している家族が経済的軸となる方であれば、家族が働かなくなることで、生活が成り立たないという状況も出てくるかもしれません。家族の生活を上手く回しつつ、24時間365日看取りに向けた手厚い介護を受けられるというのは、施設で看取りをするメリットになるでしょう。特に、今まで医療や介護に携わったことのない方であれば、看取りそのものが初めての経験です。どの時期にどのようなケアをすることが適切であるかどうかも分からないでしょう。そういった知識の部分も含め、施設で看取りをすることは適切な時期に適切なケアを提供してもらえるため家族にとって安心に繋がります。

また、施設で看取りをすることは本人にとってもメリットがあります。病院に入院されている方は、病院はあくまでも医療を受ける場ですので制限が多く、最期が近づいているにもかかわらずたくさんの制限を受けながらその日を迎えることになります。ですが、介護施設では、なるべく自宅に近い環境を提供し、看取りのための介護に移行した方にとってはその方の個別性を尊重したケアが提供されるため、自宅にいるときと近い状態で制限がほとんどなく余生を過ごすことができ、本人も心身ともにリラックスできる環境作りができます。

特に、病院で治療を受けていて施設での看取りに移行した方にとってはここが最大のメリットと感じるかもしれません。

施設で看取りをすることのデメリット

施設で看取りをすることのデメリットは、本人と家族で異なると言えます。本人にとってのデメリットはやはり自宅ではないというところです。病院よりも制限がない環境とはいえ、全く制限がないということではありません。例えば、飲酒が好きだった方や愛煙家の方がもう一度死ぬ前に飲酒をしたい、喫煙をしたいと思った時、入居している施設によってはこれらの願いをかなえてあげることができない場合もあります。最期を迎えるタイミングですが、完全に制限のない状態で思いをすべて聞いてもらえないというところは本人にとってデメリットになるかもしれません。

また、家族にとっては病院ほどではないものの、ある程度金銭的な負担がかかるというところです。看取りだけでなく介護全般に言えることですが、介護施設よりも自宅で介護をした方が金銭的な負担は少ないといわれています。看取り期間に入ったとはいえ、どのくらい介護が必要であるかは未知な状態です。ある程度の金銭的な負担がかかるということがデメリットになると言えます。

看取りを行っている施設

看取りを行っている施設

平成27年4月の介護報酬改定に伴い、介護福祉施設サービス及び地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護における看取り介護の質を向上させるために看取り加算が見直されました。 これに伴い、特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホームなど多くの介護施設で看取り介護に力を入れるようになりました。

ただし、介護老人保健施設については施設の立ち位置が在宅復帰支援施設であるという観点から、看取りを積極的に行っていない施設もあります。もともと、介護老人保健施設に入所していて、入所期間中に終末期を迎えて看取りとなった場合にはもちろん積極的に看取りのための介護ケアを行いますが、看取りのために介護老人保健施設へ入所をするというのはまだ難しい施設が多いことが現状です。

現在施設に入所されている方は現在の入所している施設でそのまま看取りをし、現在施設に入所されていないという方は特別養護老人ホームなど看取り介護を積極的に行っている施設への入所を検討されることをおすすめします。

施設での看取りの手順

施設での看取りの手順

施設での看取り介護について大まかな流れは下記の通りです。

入所時または看取り介護実施の決定時

看取り介護の開始については、医師が医学的知見から「回復の見込みがない」、「医療機関での対応の必要性が薄い」と判断した場合に、看取りの計画を作成するようになります。 この時点で主に施設と行うやり取りは下記のような内容です。

  • その時点での要望(避けられない死が近いときに病院で延命治療を受けたいかなど)の聞き取り
  • 施設の医療体制の説明を受ける
  • 個室の有無や身の回りの品の持ち込みなど、看取りを行うための療養環境について説明を受ける
  • 連絡方法の確認
  • 最終的な決定を医師が「看取りに関する医師意見書」に記録。施設、本人や家族などが保管
  • 費用についての説明と同意書の記入

また、この時点でご家族にも見取りにおける今後の具体的な流れが説明されます。

看取り安定期~不安定期

看取り介護が始まり、身体状況が安定している状態から徐々に体が衰弱していく時期です。最期をどうしたいかという希望を本人や家族が明確にしていくことが必要です。また、急変時の対応はどうするのか、医療的な介入はしなくてよいのかというところまで改めて確認をしていきます。ここで決めたことは、最終決定ではありません。もしも本人や家族の気が変わったのであれば変更をすることも可能です。ですが、安定期と不安定気を繰り返しながら、着実に死に向かっていく時期であるため、ある程度方向性を固めておく必要があります。

本人と意思疎通が図れるのであれば、本人と、もし本人との意思疎通が難しければ介護職員と死について話し合っておくとよいでしょう。

看取り介護後期:病状が日~時間単位で変化する時期

本人も家族も「死が迫っている」と実感する時期です。様々な心構えが必要になり、死後の準備を始める時期でもあります。いざその時が近づいてきたときには、できるだけ家族と過ごせるように手配が行われます。

  • 看取り場所の希望や死亡時の緊急連絡先などを確認
  • 死後の処置についての相談
  • 救急搬送される場合についてなど「看取り介護計画書」への同意
  • 会わせたい人への連絡

他にも本人が好きだった音楽を聞かせてあげたり好きだった香りを嗅がせてあげたりなどと、残っている感覚を活用したケアを行うことができます。また、帰宅の際に本人に着せてあげたい衣服などがあれば準備しておくとよいでしょう。

亡くなった後

  • 医師が死亡確認後、死亡診断書を記入
  • まだ見舞われていない家族の到着を待ってから、看護師や介護職員とともにエンゼルケアを行う

もしも最期に家族だけで過ごしたいという場合には一旦職員に席を外してもらうことができます。

その後

多くの施設では、葬儀の際に弔電や供花などを送ってくれます。その場合、返礼は不要ですが、お礼状を送る方が多いようです。また、施設に直接挨拶へ行かれる方もいます。ご自身ができる範囲で感謝の気持ちを伝えることが大切です。

やっぱり最期は施設以外で迎えたい!場合

終末期を施設にゆだねた場合でも、「やっぱり最期は病院で延命治療をしたい」、「自宅で看取ってあげたい」と希望することも可能です。

施設が地域の医療機関や居宅サービス事業所との連携を取り、支援してくれます。 こういった意向が固まりましたら職員へ相談し、施設以外の場所で看取るあるいは治療を継続するための準備を行います。

※この記事は2020年3月時点の情報で作成しています。

監修者:小笹 美和

介護業界・区役所勤務経験を経て、相続コンサルタントに転身。
介護保険訪問調査員など高齢者との1,000件を超える面談実績を持つ。 高齢者にもわかりやすい説明とヒアリング力には定評があり介護にも 強い相続診断士として多くの相談を受けている。
終活や相続・介護と幅広い視野から話すセミナー講師として全国で活動をしている。