介護の終わりとなる大切な人が亡くなったあと、残された家族は故人の身の回りのものを「遺品整理」しなければなりません。また大切なものは「形見分け」をし、必要に応じて「遺品供養」することもあります。この記事では、それぞれいつ・どのように進めればいいのかをまとめました。
遺品整理とは
亡くなった方が使用していた品物や愛用品などを整理するのが「遺品整理」です。これには特別な決まりはありません。
故人の遺品をそのままにしておくよりも、きちんと片づけてあげることで、遺族も心の整理がつく場合があります。家族や親族(相続人)の都合が良い時に、集まって行うのがいいでしょう。また、不用品処分などにかかる費用や作業の分担について、家族や親族で話し合ってから進めるのがお勧めです。
遺品整理を始める時期
遺品整理には、「この日までに終わらせなくてはいけない」「この日までやってはいけない」という決まりはありません。人によっては、遺品整理をする前に、気持ちの整理が必要な方もいるでしょう。
遺品整理のひとつの目安となるのが、四十九日です。仏教の世界では、四十九日に全ての審判が終わり、現世に留まっていた魂が離れて行くといわれています。これが無事に済むまでは、「大切な故人を思い、遺品もそっとしておきたい」という方も少なくはありません。法要のために親族が集まることも、遺品整理をしやすいタイミングだといえます。
一方で最後のお裁きが下る四十九日までに、身の回りの物を片付けておかなくてはいけないと考える人もいます。また、故人が遠方に住んでいてなかなか親族が集まれないという場合には、葬儀のタイミングで遺品整理を済ませてしまうこともあります。トラブルを避けるためにも、みんなが納得でき、親族が集まれるタイミングにするようにしましょう。
神式の場合は、五十日祭や三十日祭、キリスト教の場合は1カ月後の追悼ミサや召天記念式が目安となります。
早めに遺品整理を済ませなくてはいけないことも
ただし、早めに遺品整理をしなければならないケースもあります。
故人が賃貸物件などに1人で住んでいた場合
早々に遺品整理をして部屋を明け渡さないと、それまで家賃が発生してしまいます。その場合は、なるべく日を空けずに整理を始めた方がいいでしょう
貴金属や預金など財産となるものを把握しきれていない場合
相続税を申告する期限は10ヵ月以内です。それまでに遺品整理をする必要があります
空き家になるため売却を考えている場合
空き家の期間が長くなると、家が傷んで資産価値が下がってしまいます。ひとり暮らしの親が亡くなり、家が空き家になってしまう場合には、なるべく早くに遺品整理をした方が良いでしょう。
遺品整理業者に頼むことも
急いでいる場合や遺品が多い場合などには、遺品整理業者に依頼することも可能です。
遺品整理業者を選ぶ際には、見積書を提示されたら、料金の詳細と作業内容がどこまで含まれるのか必ず確認をしましょう。料金体系が分かりやすいかがとても重要となります。遺品整理士などの有資格者がいるか、廃棄物の取り扱いの説明があるか(一般廃棄物処理業の許可を得ているか)などの確認をするといいでしょう。
買い取りを行っている遺品整理業者もいます。その場合は、古物商の許可を得ているのかも確認しましょう。作業終了後に追加料金を請求されたりなど料金トラブルが年々増えてきています。口コミや実績なども十分に検討したうえで依頼されることをおすすめします。
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形見分けとは
形見分けとは故人が愛用していたものを、「故人の記念品」として親族や親交のあった人に贈る慣習のことです。一般的には故人が使っていた日用品(万年筆などの筆記用具や時計)衣類や装飾雑貨、故人が集めていたコレクションなどを贈り、想い出を分かち合い、故人を偲びます。
時期の目安は、遺品整理と同じく四十九日が終わった頃とされています。ただし、慣習である「形見分け」が、相続トラブルを引き起こさないように、遺産分割を終えてからにするといいでしょう。遺言があるようならそれに従い、ない場合は親族間のトラブルに発展しないよう、平等に分配することも大切です。
形見分けの贈与税
形見分けであっても、1年間にもらった財産が110万円を超えると贈与税が発生します。贈った側に迷惑を掛けることにもなりかねませんので、十分に注意する必要があります。
形見分けのポイント
- まだ使えるものを贈る
- 金銭的価値の高いものは相続の対象となるので注意する
- あらかじめ手入れやクリーニングをしておく
- 包装しない
- 故人より目上の人に分けない
- コレクション類は価値のわかる人へ
- 無理に渡さない
遺品供養とは
亡くなった人を見送る際には、棺に故人の大切にしていた品を入れます。しかし棺のスペースも限られているため、愛用品をすべて入れることはできません。
形見分けをしきれなかった故人の愛用品を「ゴミとして処分するのは忍びない」「残された品をそのままにしておくのは心苦しい」という場合には、読経やお焚き上げなどで供養してから処分する「遺品供養」という方法があります。
日本では古代から物や自然に魂が宿ると考えられています。また、日本人にとって思い出の品を処分するのは勇気が必要です。そのため昔から「浄化によって天へ返す」、「故人と一緒に送る」という意味合いで感謝を込めて供養してきました。
遺品供養するもの
遺品供養するものは一般的に、時計やくつなどの愛用品、神棚・数珠・お守り・お札などの宗教的なもの、人形やぬいぐるみ、大切な手紙や写真などです。
近年では、パソコンや携帯電話なども供養に出されることが増えているそうです。
遺品供養の依頼先
基本的には寺院や神社などで行います。まずは菩提寺や氏子となっている神社、故人のお墓がある宗教法人などに相談するのがいいでしょう。
お焚き上げ供養は寺院の境内などで行っていましたが、環境問題への配慮から、回収したあとで他の場所へ運ばれることもあります。気になるようでしたら、事前に確認をしておくといいでしょう。僧侶が直接お宅へ訪問し、その場で供養してくれることもあるそうです。
また遺品整理業者に、遺品供養の手配をお願いすることも可能です。遺品をいったん倉庫で預かり、合同で読経やお焚き上げを行う事業者もあります。
遺品供養の相場は、明確に決まっていませんが数千円~数万円程度です。供養する品物によっても変わります。
遺品の処分に困ったら
遺品を処分するといっても、故人とつながりの深い品は思い出も多く、「必要」「不必要」という選択ではなかなか決められません。どうしても判断できない場合は、「保留箱」を用意するのがいいでしょう。
仕分けの仕方
- 「捨てるもの」、「とっておくもの」、「捨てるかどうか迷っているもの(保留箱)」の3つに分ける
- 時間をおいて保留箱を見直し、「捨てる」か「誰かに譲る(未使用のものや、まだ十分使えそうなもの)」かを判断。まだ迷うようなら再び「保留箱」へ
- 2を繰り返して、少しずつ整理する
まとめ
故人の身の回りのものを片付ける遺品整理は、家族が気持ちの整理をしたり、遺品を親族(相続人)に分配したりするためにも大切なことです。
遺品整理や形見分けをする時期としては、四十九日が目安となります。ただし、故人が賃貸物件に住んでいた場合や親族がなかなか集まれない場合、それまでに気持ちの整理がつかない場合には、その限りではありません。トラブルを避けるためにも、みんなが納得でき、親族が集まれるタイミングにするようにしましょう。
故人や受け取る側にとって思い入れのあるものを贈る形見分けも、四十九日を目安に行いますが、相続トラブルを引き起こさないように、遺産分割を終えてからにするといいでしょう。遺言があるようならそれに従い、ない場合は親族間のトラブルに発展しないよう、平等に分配するのも大切です。
形見分けしきれなかった故人の愛用品は、必要に応じて遺品供養をお願いするようになります。まずは菩提寺や氏子となっている神社、故人のお墓がある宗教法人などに相談するのがいいでしょう。信頼できる遺品整理業者にお願いすることも可能です。
遺品整理は、関わる人も多く、どう進めたらいいのか迷ってしまうこともあるでしょう。この記事が、後悔のない遺品整理のお手伝いになれたら幸いです。
※この記事は2020年9月時点の情報で作成しています
遺品整理・生前整理 思いに寄り添ってお手伝いいたします
- 賃貸物件なので早急に退去しなければならない
- 遠方に住んでいるので作業ができない
- 量が多く自分では処理できない
- 何から手をつけていいのかわからない
- 気持ちの整理がつかないので思い切って専門業者に任せたい
介護業界・区役所勤務経験を経て、相続コンサルタントに転身。
介護保険訪問調査員など高齢者との1,000件を超える面談実績を持つ。 高齢者にもわかりやすい説明とヒアリング力には定評があり介護にも 強い相続診断士として多くの相談を受けている。
終活や相続・介護と幅広い視野から話すセミナー講師として全国で活動をしている。