相続税はいくらからかかる?

遺産総額が3600万円以下なら相続税課税なし!?

相続税はいくらからかかる?

相続税が課税される人は意外と少ない?

 ニュースなどで著名人が亡くなったときに話題にあがる相続税額。それを耳にすると自分が相続人になったときに相続税がどれだけかかるのかと心配になるものです。しかし、相続が発生した時にすべての相続人に相続税の納税が発生するものではありません。実際に相続税の対象となった人の割合は、国税庁の発表(※1)では平成29年度で約8%、12人に1人の割合です。この数字を多いか少ないかどうお感じですか。割合的には小さいのですが、ご自身がこの8%の入ってしまうかどうかを事前にある程度把握しくおくことは大切なことです。

 このようにすべての相続人に相続税の申告・納税が発生しない理由の一つが相続税の基礎控除の存在です。簡単に言うと相続税の申告・納税をしなくともよいボーダーラインと考えるとよいでしょう。相続税は、一言でいうと故人(被相続人)の遺産の相続税評価額(※2)がこの基礎控除額を超えた場合に、超えた金額に相続税が税率10%~55%で課税される仕組みの税金です。

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基礎控除の仕組み

遺産の多くが土地などの不動産で現預金が少ない相続の場合、相続税が高いと納税資金の確保に困難が生じてしまいます。また、被相続人の財産形成に相続人も協力していたともいえるため、一定の金額まで相続税を課さないように基礎控除規定を設けたと言われています。

 この基礎控除額は、次の算式で求めます。

 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数

 ここでいう法定相続人とはいわゆる相続人ですが、戸籍を遡って生誕時から死亡時まで漏れがないように調べます。そこで相続放棄、死亡した相続人がいる場合には死亡のタイミング、養子縁組があった場合などには特殊な数え方をします。少しでも不安がある場合には専門家にまかせた方がよいでしょう。

 さて、基礎控除額は定額3,000万円に法定相続人の人数に比例した金額を加算します。たとえば相続財産の評価額5,000万円の場合、法定相続人が4人だと基礎控除額が5,400万円(3,000万円+600万円×4人)となることから相続税の申告・納付は必要ありませんが、3人だと4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となり相続税の申告・納付が必要となります。相続財産の評価額の算出とともに法定相続人の把握の重要性がここにあります。

 ちなみにこの記事ご覧になっている皆様が考えている相続には相続人が最低お一人はいらっしゃることでしょう。ということから法定相続人が1人として求めた金額が表題に挙げている3,600万円(3,000万円+600万円×1人)で、相続税の申告・納付の要否判断ラインとなります。つまり、相続財産の評価額がこの3,600万円以下であれば法定相続人が1人以上何人いようとも相続税がかからないことを意味します。

(※1)参考URL: https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/3012_01.pdf

(※2)現金預金、有価証券、不動産などすべて財産の相続税評価額から葬儀費用及び債務の金額を引いた金額です。墓地・墓石・仏壇・仏具などの祖先を祀るための祭祀財産は非課税として相続税の課税対象の財産から除かれ、一方、生命保険金及び退職金は課税対象の財産として別途特別な方法で算出された評価額が相続財産の評価額に加えられます。

相続税計算シミュレーション

ここまで、相続税の基礎控除額についてお話してきましたが、ここから実際に以下の資料を利用して相続税についてシミュレーションをしていきましょう。

 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sozoku-tokushu/souzok-kanihanteih27.pdf(国税庁ホームページより)

 上記のURLは相続税の申告が必要であるかの要否を簡易的に判定できるシートになります。シートの説明に沿って、まず被相続人となる方の配偶者や子供の有無を入力してください。すると右側の方の欄に法定相続人の人数と基礎控除額が表示されます。

  1. 次に、相続の対象となる方の所有している財産を概算で構わないので入力してみてください。なお、土地に関してはhttp://www.rosenka.nta.go.jp/(国税庁ホームページより)をご参考ください。不動産につきましては土地と建物では評価額の算出方法が異なりますので、簡易ツール等の利用、または正確に確認されたい方は専門家にご相談下さい。
  2. ①、②を入力するとシートの下方に金額が表示されます。🄫と記載がある欄にマイナスで金額が表示される場合は相続税がかかりません。プラスの表示ですと相続税がかかる可能性があります。

 上記の手順をシミュレーションしたサンプルが以下になります。

シミュレーションサンプル

例:首都圏在住の家族の場合

被相続人(夫)家族構成 配偶者(妻)、子供2人・兄弟姉妹1人

 この場合、基礎控除額よりも相続する財産が低いため相続税は発生しません。あくまで簡易的なものなので目安にしてください。

相続税の申告・納付が必要となった場合

相続税の申告・納付が発生する可能性が大きい場合、税務手続きとしてどのような所作をおこなえばよいでしょうか。

 まず、被相続人が亡くなったと知った日の翌日が相続開始日となります。その日から10ヵ月以内に被相続人の住所地を所轄する税務署に相続税の確定申告書の提出及び納税を行わなければなりません。

 また、遺産分割が法定相続人間で揉めており整わない場合にも10ケ月以内に法定相続分に基づいて税額を計算し、未分割として確定申告及び納税をしなくてはなりません。その後、遺産分割の話し合いが進み、分割協議が整った場合には、その協議に基づいた相続税額を計算し、その計算した金額が確定申告の金額と異なる場合には、その差額について修正申告の提出・納付又は更正の請求を行うこととなります。未分割の場合の手続きについては付随する手続きが多々ありますから専門家に任せた方が良いでしょう。

 なお、未分割の確定申告では、未分割でない確定申告ならば受けられる税額控除など様々な優遇措置を受けることができなくなりますから、相続税の納税負担が重くなるのが通常です。

 経験上、相続の争いとなってしまったときには、いろいろ思いはあるでしょうがクールダウンをして落とし所を互いに見つける努力をして、最終的に確定申告の期限までに解決した方が法定相続人全員の利益になることが多いです。

さいごに

ここまで相続税について基本的なお話をさせていただきましたが、私の経験からのアドバイスです(多分に理想論的なのですが)。

財産を残す方に関して

  • 財産を残すのであれば、その財産の分け方まで責任を持ち、意思表示を残しておきましょう。ご自身が亡くなったあと、大なり小なり法定相続人間で揉めごとがおこる可能性があると考えてください。仲がいいから揉めないから大丈夫と思っているのはあなただけです。
  • ご自身の財産に関する資料をまとめておきましょう。特に預金、有価証券、保険などはすぐ分かるようにしておいてください。万が一のときにはどうするのか日頃から家族で話し合う機会をご自身が主催して持つのが最善です。
  • 遺産の分け方がアンバランスである場合にはその理由をしっかりと書き残しておきましょう。理由としてたとえば、留学資金を出した、車を買ってあげた、自宅の購入資金を出したなど過去にあった特別な支出がありますし、また、残された配偶者への今後の世話や宗家として責任を考え分割したなど理由はいろいろあります。
  • 最後にいちばん大切なことが、まだ元気だからあとでいいやと思って行動を起こさないのではなく、今できるところから行動に移すことです。また、お子様から同様なことを言われたときに腹を立てずにその言葉を聞いてあげてください。

財産をもらう人に関して

  • 相続でもらう財産はとても嬉しくありがたいものです。でも、ご自身が稼ぎ出したものではないのですから、大きな期待ややっかみの思いはなるべく持たない方が良いでしょう。
  • 被相続人の方の残された思いが書かれた文書があればその思いを汲み取りましょう。  
  • 被相続人の方は、争わせるために財産を残したのではないのですから。
  • いざということが起きた後にどうしてほしいのか、事前に皆で話し合っておくと良いでしょう。そのときに基礎控除の金額を把握しておくと、相続税の発生の有無などがわかり、より具体的な話し合いが持つことができるでしょう。

※この記事は2019年12月時点の情報で作成しています。

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監修者:望月茂(税理士)
監修者:望月茂(税理士)

大手簿記学校にて消費税・所得税・国税徴収法講師を25年勤める。平成17年税理士事務所開業。日経系雑誌への掲載記事多数。各種団体において税務に関する講演多数。毎年相続事案を受任。社会保険労務士である望月厚子とともに公的年金の確認・成年後見制度・家族信託制度などを駆使した老後生活をサポートする業務を行なう。埼玉県税理士講師団に所属し、同団著「実務家・経理担当者のための税務相談室」の一部担当。