【自動車メーカー福祉車両開発インタビュー】本田技研工業株式会社 1人1人に合わせた最適の福祉車両造り[PR]

【自動車メーカー福祉車両開発インタビュー】本田技研工業株式会社 1人1人に合わせた最適の福祉車両造り[PR]

「Fun for Everyone. Honda ~移動の喜びを、一人ひとりに~」。これが、本田技研工業の福祉車両のテーマです。
早い時期から福祉車両開発を手掛け、車いす仕様車や回転シート車、リフトアップシート車を13車種(2015年11月現在)、取り揃えているHonda 。
人を尊重する考え方から生まれる福祉車両の歴史やサービスの変遷、そして、高齢の方や体の不自由な方に福祉車両を届ける想いについて、販売部福祉事業室の野瀬薫さんにお話をうかがいました。

 

体の不自由な方にも自動車での移動を! 手探りの開発スタート

―いつごろから福祉車両を手掛けているのですか。

野瀬 30以上年前から開発・販売に取り組んでおります。1980年に手足の不自由な方も操作できる運転補助装置「テックマチックシステム」を開発し、「シビック」の訓練車に搭載して運転試験場に納入したのが始まりでした。

―現在、運転補助装置にはどのような種類があるのでしょうか。

野瀬 テックマチックシステムは、両足や片足が不自由な方が、手だけでアクセルやブレーキの操作をすることが可能な手動運転補助装置や、左足でアクセルを操作する左足用アクセルペダル、片手でハンドル操作が可能な旋回ノブや左手用のウインカーレバー、その他サポート部品をご用意しています。

また「フランツシステム」といって、両腕に障がいをお持ちの方には、左足をペダルに固定し、回転させることでハンドル操作を行う足動装置もございます。もちろん、障がいをお持ちでない方でも、運転が可能な仕様になっています。フランツシステムの販売は1982年から開始しました。

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 野瀬 薫
本田技研工業株式会社
日本本部 販売部
福祉事業室 チーフ

 

―フランツシステムの販売は、どのようなきっかけで始まったのですか。

野瀬 お客様のご要望がきっかけです。フランツシステムはドイツで開発された足動装置ですが、当時、日本の法律では両手が不自由な方の運転が認められていませんでした。車両の制作と共に、Hondaのスタッフが関係省庁を回り、法律改定に向けて奔走したそうです。
そのかいあって道路交通法の改正が実現し、日本でも足動装置付車両の運転が認められることとなりました。

 

 

―フランツシステムは、実際にどう造られているのですか。

野瀬 お客様の状態に合わせて、カスタマイズしています。営業担当や技術担当のスタッフがお客様と面談し、どんな機能が必要かをお互いに確認しながら決め、装置の製造に入っていきます。残念ながら採算性では厳しい面もあるのですが、このシステムは現在、国内メーカーではHondaのみの提供であり、車を必要としているお客様のために造り続けています。

特許技術で、車いすで乗っても広く快適な空間を実現

―介護用車両の開発はいつごろ開始したのですか。

野瀬 1995年にワンボックスタイプの軽自動車「アクティ」を車いす仕様車として販売したのが始まりですが、通常の車に福祉用の装備を加えただけという印象が否めませんでした。
ですが2012年、Hondaの特許技術であるセンタータンクレイアウト(燃料タンクを薄く中央に配置)を採用した「N-BOX+車いす仕様車」を発売、これが大きな転機となりました。

―従来の車両と、どう変わったのでしょうか。

野瀬 特許技術により、広い室内空間が実現できたことで、車いすで乗車しても快適に過ごせる車両になりました。おかげ様で、販売台数も大幅に伸ばすことができ、それまでは、ほとんどの販売店で年間1~2台の販売だった福祉車両が、月に数台、ご注文をいただくまでになりました。
また、この「N-BOX+」の発売に合わせ、福祉に強い販売店認定制度「オレンジディーラー」の強化にも取り組みました。

介助士資格を持つスタッフがいる、バリアフリーの販売店展開

―具体的にどんな仕組みになったのですか。

野瀬 この制度が始まった2002年当時は、店舗がバリアフリー対応であれば、3拠点で1台の福祉車両常備でもオレンジディーラーとして認定していたのですが、2012年からは差別化を図りました。
現在(2015年)は、車いす仕様車とサイドリフトアップシート車、助手席リフトアップシート車、助手席回転シート車の4台全てを揃えた販売店を最上位クラスの「マスター店」、1台以上常備した店舗を「ベスト店」としています。またハード面だけでなくソフト面の充実も図りました。

―ソフト面とは、どういうことでしょうか。

野瀬 Hondaの福祉車両はHonda販売店である全国のホンダカーズでお求めになることができますが、オレンジディーラーには、高齢者や障がいをお持ちの方をきちんとおもてなしできるよう、「サービス介助士」や「介助専門士」の資格を持ったスタッフが在籍しています。もちろん店内はエントランスやフロアも全て段差がなく、トイレもバリアフリーになっていますが、資格を持ったスタッフが応対することで、さらに安心してお客様にご来店いただけるようになりました。

現在(2015年)では、ほぼ各県に1つ、マスター店を配置、全国で約300拠点のオレンジディーラーを展開しております。また、ホンダカーズ店では現在、的確に車の情報をご提供することができるよう「ホンダ・セールス・ステーション」というツールの導入を進めております。

―これはどんなツールですか。

野瀬 全てのホンダ四輪車の情報が入ったタブレット端末です。とくに福祉車両については、サイズや性能について、カタログに載せきれない情報も盛り込んでいますので、利用できる車いすのタイプなど、お客様のご質問にも的確、迅速にお答えできます。
また、福祉車両特有である税金についての減免や助成・優遇制度に関するお問い合わせにも、分かりやすくお答えし、ご説明できるようになりました。

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タブレット端末「ホンダ・セールス・ステーション」で福祉車両を詳しく説明してくれる野瀬薫さん

 

介護する方にも快適な、普段使いもできる福祉車両

―Hondaの福祉車両の特徴といえば、どのようなことでしょうか。

野瀬 Hondaは「人のスペースは最大限に、メカの部分は最小限に(マン・マキシム/メカ・ミニマム:MM思想)」という考え方で車造りを進めていますが、それが福祉車両にも生かされており、介護する人にもされる人にも快適さを追及しつつ、普段使いもできることです。この視点は、この夏(2015年)に登場した「ステップワゴン車いす仕様車」にも反映されております。

―どんな点が新しいのでしょうか。

野瀬 Hondaとしては初となる、車いすが2台収容できるタイプで、3列目のシートは、床下に収納することで広い車内空間を実現しています。また、3列目右側シートを残すことで、車いすの方と並んで座っていただくことも可能です。両側の窓も大きく、開放的な車内で会話をしながらドライブが楽しめ、車いすを使用しない場合でも大人の方6人が快適にお乗りいただけます。

福祉車両で積極的に外出を! 移動の喜びと出会いを広げたい

―体の不自由な方が自ら運転される車造りから、独自の工夫を施した介護車両造り、そして福祉に強い販売店まで、Hondaの福祉車両のことを教えていただきました。利用なさっている
お客様からは、どのような声を聞いていますか。

野瀬 運転補助装置付き車をご購入された方からは、「この車が自分に自信を与えてくれた」という言葉を頂戴するなど、うれしい感想を多くいただいています。

また、先日、行われたモーターショー(注:「東京モーターショー2015」会場は東京ビッグサイト、2015年10月30日から11月8日まで一般公開されました)で「ステップワゴン車いす仕様車」を展示したところ、来場されたあるお客様が「他の車両を契約してしまったが、知っていればこの車を買ったのに」とおっしゃっておられました。もっと福祉車両の認知を上げることが必要と感じた次第です。

―介護する側の方々からの反応はいかがですか。

野瀬 高齢者の介護をされている方や、体の不自由なお子さんのいるご家族にとっては、シートが回転するだけでも乗り降りの負担が軽くなるそうで「非常に便利」と感じていただいている、と。簡単に乗車できる、快適な移動が可能になる、ということで介護を受ける方も、する方も「積極的に外出するようになった」という声も多く寄せられています。

―それは大切なことですね。

野瀬 公共交通機関もバリアフリー化が進められていますが、まだまだお体の不自由な方にとってハードルが高い部分があります。そのため、移動の中心はどうしても車に頼らざるを得ません。移動をすることで、人と人とが「出会う」機会が広がれば、と思います。
近年ではSNSなど通信手段の普及により、会わなくてもコミュニケーションが取れて便利ですが、やはり直接、顔を合わせたり触れ合ったりという交流がなによりも大切だと思います。福祉車両が、そんな出会いに役立つことを願っています。

「移動をすること」は、単に人がいる空間を変えるだけのことではありません。

どこかへ行くこと、その先には、出会いや楽しさがあります。福祉車両は、移動が「できない」状態を「できる」状態にするもので、大きな可能性を持っています。
移動の喜びを誰もが味わえるよう、挑戦を続けるHondaの取り組みを教えていただき、さらなる福祉車両の可能性に期待したくなりました。