日本自動車工業会(JAMA) 福祉車両が安くなる?免税制度の活用[PR]

日本自動車工業会(JAMA) 福祉車両が安くなる?免税制度の活用[PR]

第1回目に福祉車両についてのお話をうかがったのは、一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)。
JAMAは1967年に国内の自動車メーカーの団体として設立され、豊かなクルマ社会の実現に向け、研究や調査などの情報発信をしています。
福祉車両の普及・認知向上を目的に活動している「福祉車両部会」が、JAMAの中に組織されたのは2005年。税の減免、助成制度の拡大などを行政に働きかけるほか、多くの方に福祉車両の種類や選び方などを知ってもらうための広報活動を行っています。
今回は、福祉車両部会の部会長である糸川浩平さん(本田技研工業)、副部会長の大野修一さん(トヨタ自動車)と太田吉彦さん(ダイハツ工業)の皆さんにお話をうかがってきました。

 

多くの方に福祉車両を知ってもらいたい!

―福祉車両を推進する部会ができた経緯や活動についてお聞かせいただけますか。

大野 福祉車両の製造や販売は各自動車メーカーで行っていましたが、行政に要望を伝えること、福祉車両を広めることなどは1社だけでは難しかったのです。そこで1997年にJAMAの中にワーキングチームを作り、定期的な会合で多くの課題を共有していきました。
さらに2005年には正式に部会が発足。現在では福祉車両の普及・認知拡大をメインに広報活動をしています。

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糸川 浩平
本田技研工業株式会社
日本本部 販売部
福祉事業室 室長 主幹

 

糸川 多くの方にとっては、まだ周囲で福祉車両を見かける機会が少ないこともあり、存在が十分知られていません。介護が必要なお客様も普通の乗用車を購入されることがあります。国の政策で「保険の適用」や「税金の軽減措置」があるのですが、まだ不十分です。私達がお客様のご要望を直接行政に伝え、仕組みの改善を働きかけています。

 

 

使う方に合わせた福祉車両の種類

―福祉車両にさまざまな種類がある中「介護式」で代表的なのは?

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大野 修一
トヨタ自動車株式会社
国内商品部 車両企画室
ウェルキャブグループ長

 

太田 「回転(スライド)シート車」は座席が外側に回転またはスライドします。「昇降シート車」は回転シートがドアの外側まで出て低い位置まで下げられます。車いすを使っている方で、少しの介添えで移乗できる方に使っていただけます。両方とも1つの座席が特別仕様になっているだけで、あとは普通の車と全く同じです。

大野 「車いす移動車」は、車いすのまま乗り降りができます。介護を受ける方にも軽度から重度の方までいらっしゃいますので、スロープで乗車するタイプから水平のまま電動式リフトで乗り込むタイプまで用意があります。スロープの出し入れも電動・手動を選べるなど介護する方のニーズにも応えています。

 

 

―「自操式」とはどういうものでしょうか。

糸川 正式には「自操式運転補助装置付車」です。お身体に障がいのある方自身で運転できます。足が不自由な方は手だけで、両手が不自由な方は足だけで車の操作ができます。
私達は、お客様一人一人の足腰の強さや腕の力などを考慮し、専門業者の協力を得てカスタマイズします。

お客様のニーズとご意見を反映させてできる福祉車両

―このような福祉車両をどのように造っているのでしょうか。

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太田 吉彦
ダイハツ工業株式会社
営業本部 特装車両室 室長

 

大野 まず、お客様が普段、自動車をどう使われているのか「観察」します。例えば家から病院へ行くとき、どんな動作で乗り降りをされるのか実際に見て、お客様にとって「不自由な点」「つらい点」を確認します。そして、これまでの経験をもとに想像力を働かせ、加える機能を検討していきます。試作モデルに実際に乗っていただき、利用のしやすさを確認した後で設計や開発を本格的に始める場合もあります。

 

 

―具体的にお客様のご要望が、どのように反映されているのでしょうか。

大野 あるご家庭で、障がいのあるお子様の学校の送り迎えをしているお母様に車いす移動車の試作モデルを見て頂きました。しかし、後部座席に車いすを固定するタイプだったので運転席から遠く、緊急時にお母様からお子様に手が届かないことが心配、という声をいただきました。そこでフロントシートを畳んで、車いすも1.5列目まで前へ出せるようにレイアウトを変えて商品化しました。後に新商品をお買い上げ頂いたお母様から「今では安心して運転できます」といっていただきました。

―福祉車両も自動車販売店で購入できるそうですが、試乗も可能でしょうか。

太田 実際の車両に車いすが合うか、などを確かめるためにも試乗は必要です。販売店の中には福祉車両を多く揃えた常設展示場のほか、巡回展示をしている店舗もあります。
試乗車がその場にない場合も、お取り寄せが可能です。また、お客様の家族構成やご要望をお聞きして、実際の使い方を販売店のパソコンから動画でお見せすることもできます。

とても大きな購入金額の差に! 福祉車両は「消費税非課税」

―福祉車両には、どんな優遇制度や助成制度があるのでしょうか。

大野 現在、ほとんどの福祉車両は消費税が非課税になっています。これは金額的にも非常に大きなレベルです。仮に車両価格が200万円で、架装部分が50万円の場合、非課税の範囲は架装した50万円分だけではありません。250万円全てが非課税対象になります。

太田 自動車税や自動車取得税が減免される制度もあります。これらは地方税で各自治体によって差がありますので、実際にいくら減免されるのか分かりづらい。販売店では各地域の状況を把握し、お問い合わせがあればすぐに説明できるよう体制を整えています。

介護を受ける方にも「移動の喜び」を!

―福祉車両を造る「想い」とはどういうものですか?
福祉車両の市場規模は小さいにも関わらず、なぜ造り続けるのでしょうか?

太田 海外では、自動車メーカーが福祉車両を造っている例はないと思いますが、日本では、ほとんどのメーカーで造っています。特にダイハツの主力である軽自動車は暮らしに最も密着していますので、福祉車両も正に生活の中で使う車として、より身近なものになるよう力を入れています。

大野 トヨタでは福祉車両を乗用車と同じ工場のラインで組み立てているので効率が上がり、より良いものを安く提供できます。これは自動車メーカーだからこそできることだと思います。短期的に大きな利益を上げられなくても、事業が継続できる販売台数を維持しながらビジネスモデルを作り、将来はグローバル展開を、と考えています。

糸川 確かに自操車などは利用される方が多くないので経済合理性がないかもしれません。しかし、わずかでも期待して待ってくださる方がいる限り、プライドを持って造り続けたい。介護を受ける方にも移動の楽しさを味わってもらいたい。介護する方もご家族と一緒に出かけ、喜びを分かち合っていただきたい。そのためにも福祉車両の存在を、もっと皆様に伝えていければと考えています。

 

国内メーカー各社は、お客様の期待にお応えして喜んでもらいたいという自動車メーカーの願いや使命感から福祉車両を造っています。今回お聞きした福祉車両への想いなどを、感じていただくことはできましたでしょうか。
次回、第2回では国際福祉機器展(H.C.R.2015)で自動車メーカー各社が展示した福祉車両の数々をご紹介しています。
*第42回国際福祉機器展(H.C.R.2015)は2015年10月7日~9日、東京ビッグサイトで開催されたイベントです。