介護職員初任者研修は介護職の入門的な資格ですが、出口の見えない介護に不安や自信のなさを抱えている介護家族にもお勧めです。この記事では、介護家族が介護職員初任者研修を取得するメリットや家族介護に活かせる内容について解説しています。ぜひ参考にしてください。
介護職員初任者研修とは
介護職員初任者研修とは、介護者として必要とされる基礎的な知識や技術、考え方のプロセスを身につけるための研修です。130時間の研修を通して、高齢者に関する介護・福祉制度や認知症についてなどの介護に必要な知識に加えて、身体介護や生活支援に必要な技術の習得を目指します。
高齢者施設では介護資格がなくても働ける介護補助や介護助手といった職種もありますが、介護資格があるとできる仕事の範囲が広がりますし、給与面でもプラスになります。また、訪問介護をするには必ず介護資格の取得が必要です。
介護職員初任者研修は、介護職員になるための入門資格ではありますが、現在は仕事を探していないという方でも取得は可能です。
取得できる対象者
介護職員初任者研修は、年齢や職歴、国籍、保有資格を問わず受講できます。 祖父母の介護に役立てたいという高校生から定年退職後に介護職への挑戦を考えている方、仕事を探している主婦などが同じクラスで学びます。
ホームヘルパー2級との違い
介護職員初任者研修がスタートしたのは2013年です。それまでは訪問介護員2級養成研修課程を修了すると取得できる「ホームヘルパー2級」という資格が、介護職の入門資格でした。
どちらも取得に必要な受講時間は130時間ですが、ホームヘルパー2級では講師から技術を学ぶ演習に加えて介護現場での30時間の実習(見学も含む)がありました。介護職員初任者研修では、実習が無くなって演習の時間が増えました。
研修の科目も変わっています。以前はより専門性の高い介護資格を取得する際に必要だった「医療との連携」や「認知症の理解」の科目が、介護職員初任者研修には追加されています。
ホームヘルパー2級との大きな違いのひとつが、介護職員初任者研修の全過程を修了した後に修了試験(筆記試験)を受けなくてはいけないことです。ただし、落とすための試験ではなく、取得が難しくなったわけではありません。
実務者研修との違い
実務者研修も、年齢や職歴、国籍に関わらず取得できる資格です。資格のない方でも受講は可能で、450時間の研修を受けると資格が取得できます。介護職員初任者研修の取得者は、130時間が免除されますが320時間の受講が必要です。受講時間が長い分、介護職員初任者研修に比べて受講費用もかかります。
実務者研修を取得すると「サービス提供責任者」という介護職の役職に就くことができます。就職に有利になるため、未経験から介護職への就職を目指して実務者研修を取得する方もいます。また、国家資格である介護福祉士を目指すには、必ず実務者研修が必要です。
将来的に介護福祉士や介護職でのキャリアップを目指す方は実務者研修を、時間や費用に余裕がない方や家族介護に活かしたい方は介護職員初任者研修を取得するといいでしょう。
介護家族が取得するメリット
介護職の入門資格である介護職員初任者研修が、在宅で介護をしている家族にもメリットとなるポイントをまとめてみましょう。
介護・福祉制度に詳しくなれる
介護に関して知りたいことは、インターネットで検索して調べることができます。しかし、なかなか介護保険制度やそれ以外の福祉について学ぶ機会はないものです。
介護職員初任者研修では、介護や福祉制度についての基本的な知識を学べます。介護保険制度ではどんなサービスが使えるのか、介護保険制度以外にどんな制度があるのかを知っておけば、将来必要になるサービスについて考えておくことができ、家族間で介護について話し合ったり、ケアマネジャーに相談したりするときに役立ちます。
介護技術の基本を学ぶことができる
排泄介助や移動介助、入浴介助を家族が行う場合、独自の方法になってしまうことがあります。自分の方法が正しいのかどうか不安なまま続けるのはもちろん辛いものです。また、力任せに身体を動かしてしまい、腰痛などを引き起こしてしまうことがあります。
介護職員初任者研修では、排泄や移動、入浴などの身体介助のやり方を講師から学べるので、これまでよりも自信を持って在宅介護ができるようになるでしょう。介護技術では、負担のかからない身体の動かし方も教わるので腰痛も予防できます。他にも掃除や買い物代行、調理などの生活支援をするポイントなども学べます。
介護に関する専門的な知識が少しでもあると、介護は楽になるものです。介護職員初任者研修を通して、日ごろの不安や身体的・精神的負担を軽減するヒントが得られることでしょう。
訪問介護の仕事ができる
介護職員初任者研修を取得すると、介護の仕事ができるようになります。介護の仕事のひとつである訪問介護は、「〇時から△時まで」といったシフト制ではなく、サービス単位で働ける仕事です。訪問介護のサービスには、デイサービスの送り出しや起床・就寝介助など30分以内で終わるものもあります。「介護をしているから長時間家を空けるのが難しい」という方でも働きやすい仕事です。
例えば、朝や夜の空いている時間だけ仕事をしたり、サービスの合間に家に帰って家事や介護を行ったりすることも可能です。排泄や食事の介助、見守りなどのために1日に数回家に戻りたい方、介護に理解のある職場を探している方に訪問介護はおすすめです。
介護職員初任者研修取得で学ぶこと
介護職員初任者研修のカリキュラム
下記カリキュラムにそって、講義と演習が一体となって実施されます。
科目/ 時間数
- 職務の理解 / 6時間
- 介護における尊厳の保持・自立支援/ 9時間
- 介護の基本 / 6時間
- 介護・福祉サービスの理解と医療との連携/ 9時間
- 介護におけるコミュニケーション技術 / 6時間
- 老化の理解 / 6時間
- 認知症の理解 / 6時間
- 障害の理解 / 3時間
- こころとからだのしくみと生活支援技術/ 75時間
- 振り返り / 4時間
合計 130時間
※上記とは別に、筆記試験による修了評価(1時間)を実施
介護職員初任者研修の取得方法 - 介護の専門家に無料で相談「安心介護」介護の基礎知識
各カリキュラムの内容
1 職務の理解
介護保険による自宅や施設で受けられるサービスの種類や意義、目的を理解するための学習です。介護の仕事内容や現場の実際を学べます。
在宅介護で役立つポイント
介護保険に関する様々な介護サービスの知識を得ることで、必要なサービスの選択が適切に行えるようになります。また、介護保険制度以外にどんな取り組みがあるのかを知ることができます。
2 介護における尊厳の保持・自立支援
介護職は高齢者などの尊厳のある暮らしを支える専門職であることを認識し、介護に関する基本的な視点や、自立支援の考え方を学びます。また、高齢者の権利を守るために介護者として行ってはいけない行動の例について学びます。
在宅介護で役立つポイント
権利擁護、虐待防止、自立支援について、家族が介護をする場合にも活かせる知識を得ることができます。
3 介護の基本
在宅介護と施設での介護の違い、介護職に求められる介護の専門性や職業倫理の必要性、介護職に起こりやすい健康障害やストレスへの対応方法について学びます。
在宅介護で役立つポイント
自身のストレスマネジメントや健康管理、介護をしているときに起こりやすい事故についてなど、介護をしている家族にも役立つ知識を得ることができます。
4 介護・福祉サービスの理解と医療との連携
介護保険制度や障害者自立支援制度が創設された背景や基本的な仕組み、財政、かかわる組織とその役割などに加えて、医療との連携やリハビリの役割などについて学びます。
在宅介護で役立つポイント
介護家族にとって身近な介護保険制度や障害者自立支援制度について理解を深めることができます。また、苦情解決の制度や成年後見制度、消費者保護法など、問題が起こった際に役立つ知識が得られます。
5 介護におけるコミュニケーション技術
利用者やその家族とのコミュニケーションについて、対人援助に必要な知識を学びます。また、介護におけるチームのコミュニケーションについて、意義や目的、実際の方法を身に着けます。
在宅介護で役立つポイント
家族同士になると、どうしてもコミュニケーション方法について意識しなくなってしまいます。要介護者への共感や受容、傾聴的態度、気づきなど、介護におけるコミュニケーション方法を知ることで、特に認知症のある要介護者とのコミュニケーションのヒントが得られます。
6 老化の理解
加齢や老化に伴う心身の変化や疾病について学びます。
在宅介護で役立つポイント
老化による心理や行動の影響は、個人差が大きいものです、老化や高齢者の健康について学ぶことで、生理的な側面から要介護者を考えることができ、理解するきっかけになるかもしれません。
7 認知症の理解
認知症の種類などの基礎的な知識に加えて、認知症のある人にどのように接するべきか、どのようなケアを提供するべきかについて理解します。
在宅介護で役立つポイント
家族が一番知っている「その人らしさ」を生かすケアについて学ぶ科目です。認知症の症状についても知識を深められ、複数の事例から適切な対応方法を知ることができます。
8 障害の理解
障害とはどういうものなのか、どんな制度で支えているのか、法律、障害についての医学的な知識など、障害者についての基本的な知識と介護のあり方、家族とのかかわりについて学習します。
在宅介護で役立つポイント
それぞれの障害の特性や介護上の留意点の知識は、高齢者の介護にも役立つ内容です。また、この項目では家族の支援についても学びます。自分や家族にかかっている介護負担について、考えるきっかけになるでしょう。
9 こころとからだのしくみと生活支援技術
カリキュラムで最も時間が費やされている大切な科目です。介護に関するこころとからだのしくみについて学び、具体的な生活支援や身体介護の専門知識や介護技術を身に着けます。
在宅介護で役立つポイント
家事援助や居住環境、移動・入浴・排泄など、実践的な介護方法について学びます。要介護者に負担をかけない方法だけではなく、自分にも負担がかからない身体の動かし方を身に着けることができます。
学び方は2通り
介護職員初任者研修の過程を修了するには、130時間をすべてスクールに通学する「通学制」と、自宅で学習してレポートを提出する「通信制」があります。通信制を選んでも、自宅でできる授業時間は40.5時間となっており、89.5時間は通学する必要があります。
介護職員初任者研修の難易度は?
介護職員初任者研修を取得するには、全ての課程を修了後に筆記試験を受ける必要があります。ただし、落とすための試験ではなく理解を確認するための試験なので、一度で合格できなくても何度でも挑戦できます。試験を受けたその日のうちに結果が分かり、再試験も受けられる学校がほとんどです。修了試験の合格率はほぼ100%だといわれています。
130時間の過程をすべて修了できるように、無理のないスケジュールでカリキュラムを修めることが最も大切です。
介護職員初任者研修を取得する方法
まずは資料請求から
スクール選びの第一歩が、資料請求です。まずはお住まいの近くにあるスクールの資料を「シカトル」などで請求し、各スクールの受講スケジュールなどの詳細を確かめてください。
スクール選びで最も重視しているのは、受講料だという人も多いことでしょう。スクールによって2万円台から10万円を超えるものまで幅広いのですが、一定の条件を満たせば受講料が免除になるスクールもたくさんあります。
また、都合が悪くて欠席してしまった場合に、振替がしやすいかを確認しておくといいでしょう。 無理のないスクール選びをして、介護職員初任者研修に挑んでください。
まとめ
介護職員初任者研修では、介護にまつわる基本的な知識や技術を学びます。24時間365日介護をしている家族にとって、介護サービスを理解し、効率が良く身体に負担がかからない介護技術を学ぶことは、非常に重要な意味を持ちます。
終わりが見えない介護を手探り状態で続けてしまうと、心にも余裕がなくなってしまいます。介護職員初任者研修の取得を通して現状を理解でき、介護の専門職に任せられることを把握できれば、時間的にも精神的にもゆとりができることでしょう。正しい介護技術で身体的な負担も和らげることができます。
また、介護職員初任者研修を受講する中で、同じ環境の仲間と出会ったり、実際の福祉用具を使用したり、講師に日ごろの疑問を質問できたりする機会も貴重な体験となるでしょう。
「介護の質を上げるため」「要介護者のため」というよりも、自分のために介護職員初任者研修の取得を目指してみてはいかがでしょうか。
取得に必要な期間や受講内容などについての詳細は、以下の記事を参考にしてみてください。
※この記事は2020年4月時点の情報で作成しています。
介護職員初任者研修の取得方法 - 介護の専門家に無料で相談「安心介護」介護の基礎知識